ナタリー PowerPush - 浮気者

ゆよゆっぺ対談&武瑠ソロインタビューで異色プロジェクトの全貌明かす

SuGの武瑠と浮気者の武瑠は完全に別人格

──今作での“浮気”相手ですが、どうやって決めていったんですか?

ゆよゆっぺさんみたいに推薦された人もいるけど、実は全体的にはそんなに深く考えてなくて。一緒にやってみたい人の中から声を掛けていったら、こういうメンツになりました。よく「どうやってこのメンツを考えついたんですか?」って聞かれるんですけど、本当に無意識のうちに選んだらこうなっただけで。だから自然とバランスが取れるようになっているのかもしれませんね。

──そうなんですね。今回のメンツの中では特に0.8秒と衝撃。とのコラボに驚かされました。

ハチゲキさんは去年、新宿LOFTにWHITE ASHさんとのツーマンライブを観に行って、それがすごく面白かったのでいつか一緒にやってみたいと思ってたんです。彼らはSuGの「sweeToxic」をカッコいいって言ってくれてたのもあって、話はけっこうスムーズに進みましたよ。

──SuG以外の人が作った曲を歌うのも“浮気”ですし、ほかのアーティストと一緒に曲を仕上げていくのも“浮気”だと思うんですが、そこがこのプロジェクトの醍醐味なんでしょうね。

ですね。あと、コラボ相手を喜ばせるっていうのもありましたね。責任を取らない喜ばせ方というか、そこはなんとなく意識しました。

──なんですか、その「責任を取らない喜ばせ方」って(笑)。

武瑠

例えばコラボした相手に「浮気者、めっちゃファンになりました」って言われても、その曲をライブではやらないかもしれないし、そこまで相手の期待に応える必要がないというか。

──ああ、さっき言ってましたよね。「失敗だったな」って思ったら、もう次はやらないかもしれないと。

そうなんです。でもこれがSuGになると、またちょっと違うんで。SuGは支えてくれてる人たちの上で成り立っているというか、一緒に切り開いてる感じだから、その期待に応えていかなくちゃいけないところもある。だからSuGの武瑠と浮気者の武瑠は完全に別人格なんです。

「忘却の空」には自分の原点に戻るという意味合いもある

──アルバムの中にはsads「忘却の空」のカバーも収録されています。以前のインタビュー(参照:SuG「sweeToxic」インタビュー)でも清春さんからの影響を語っていましたが、なぜここで「忘却の空」をカバーしようと思ったんですか?

俺はカバーも浮気の1つだなって思っていて。過去の曲ではあるけど、これもある意味コラボですからね。この曲は自分の中でバンドを始めたいと思うきっかけになっていて、自分の人生の中ですごく大きな意味を持つ1曲なんです。あと、自分がイメージする東京っていうものに対しても重なる部分があって。それはやっぱり「池袋ウエストゲートパーク」っていうドラマの影響も強いと思います(注:sads「忘却の空」はドラマ「池袋ウエストゲートパーク」のテーマソング)。自分の青春時代というか、育った環境にかなり近いドラマだったんですよ。俺、池袋の学校に通ってたんですけど、ちょうどその頃にあのドラマが放送されてたのもあって、「忘却の空」を歌うというのは自分の原点に戻るという意味合いもあるんです。

──そういう意味でも、「tokyoの一夜を描く」というアルバムのテーマにつながるし。

あと「池袋ウエストゲートパーク」はKREVAさんが携わった劇中音楽もすごく好きで、ヒップホップが好きになったきっかけでもあるんです。あのドラマってロックやヒップホップがごちゃまぜになっていて、それもすごく東京っぽい。俺がカバーした「忘却の空」はヒップホップテイストやダブステップの要素を取り入れて、自分なりの「池袋ウエストゲートパーク」のテーマソングを作ろうというイメージで作りました。すごくドラマチックなアレンジになってるのは、そういう理由もあるんです。

浮気者に散りばめた「SuGの次の方向性」

──先ほど武瑠くんは「SuGの武瑠と浮気者の武瑠は完全に別人格」と言ってましたが、ここまでの話を聞いて僕は、浮気者はSuGの中にある豊富なカラーからいくつかの色を抽出して、そこに浮気相手の色が加わることで成り立っているんじゃないかと思いました。

武瑠

なるほど。これは……フレーズとしては言っておいてもいいかな。次のテーマとはまだ言いたくないんですけど、SuGのここ2年の方向性を1年ぐらい前から考えていて。俺は黒って一番カラフルな色だと思っていて……いろんな色を重ねたら真っ黒に近付きますよね。1人だったら白でいられるけど、5人、10人、100人、1000人、1万人といろんな人の色が重なっていくと、どんどん黒に近付いていくという。そういう方向で今後の活動を考えてるんです。それもあって、今回の浮気者ではこの先のテーマをちょっと小出しにしてるんですよ。

──ああ、もう浮気者の時点でSuGの次のステップにつながってるんですね。

そうです。それと「I 狂 U」のPVにも大きな意味があって、この世界観を広げた映画を撮ってみたいんです。このPVは映画のスポンサーを探すための、ある意味プレゼン資料でもあります。

──すごいなあ。そこまで考えてるんですね。

そうなんですよ。やっぱりSuGで映画を撮りたいと思っているので。

──なるほど。それにしても本当にすごい作品が完成しましたね。

作業はかなりギリギリまでやってたんで大変でしたけど。ぶっちゃけ、浮気とかそんなに気楽なものじゃなかったですね(笑)。なんかね、浮気もハマり過ぎちゃダメだと思いました。ちょっと俺、SuGを忘れかけましたもん(笑)。

──この作品はSuGを聴いてなかった人とかにも触れてほしい1枚ですね。

浮気者を聴いて気に入ってもらってからSuGに触れたら、「SuGアリだね」と思ってくれる人も増えるんじゃないかという願いを込めてやってます。たぶん浮気者から僕の音楽に触れた人がSuGを聴いたときに、「あ、浮気者のこの色がSuGにもある」みたいにニヤッとしてもらえると思うし。

ミニアルバム「I 狂 U」2013年11月20日発売 / ポニーキャニオン
完全限定BOX盤 [CD+Blu-ray+グッズ] 6900円 / PCCA-03929
通常盤 [CD] 1800円 / PCCA-03930
CD収録曲
  1. I 狂 U
  2. 忘却の空
  3. undermine(ゆよゆっぺ提供曲)
  4. 愛の妙理(0.8秒と衝撃。提供曲)
  5. 96 (たむらぱん提供曲)
  6. rise and fall
完全限定BOX盤 Blu-ray収録内容
  • ミュージックビデオ「I 狂 U」(Original Ver.)
  • ミュージックビデオ「I 狂 U」(Another Ver.)
  • メイキング映像
浮気者(うわきもの)

SuGのフロントマン、武瑠が2013年8月に始動させたソロプロジェクト。武瑠がSuGを浮気し、「とあるtokyoの一夜」をテーマにさまざまなクリエイター、アーティストとコラボレーションを展開する。Tom-H@ck、ゆよゆっぺ、たむらぱん、0.8秒と衝撃。、Plus-Tech Squeeze Boxといった面々が参加した1stミニアルバム「I 狂 U」を11月20日にリリース。