UNISON SQUARE GARDEN「カオスが極まる」インタビュー|ユニゾンの挑戦は止まらない、アニメ「ブルーロック」主題歌で表現した新たなサウンドアプローチ

UNISON SQUARE GARDENが今年2作目のシングル「カオスが極まる」を10月19日にリリースした。

テレビアニメ「ブルーロック」のオープニング主題歌として書き下ろされたこの曲は、まさにタイトル通りにカオスが渦巻く激しいロックチューン。生音と打ち込み、ヘビーなギターサウンドと複雑なトラックメイクが絡み合い、これまでのバンドのイメージを力強く踏み越えてゆく、極めて野心的な1曲に仕上がっている。

音楽ナタリーではライブツアーに明け暮れる日々の中で、斎藤宏介(Vo, G)と田淵智也(B)にインタビュー。9月まで行われたホールツアー「kaleido proud fiesta」や10月25日にスタートしたライブハウスツアー「fiesta in chaos」について、新曲について、そして今の時代のロックバンドのあるべき姿について、思いの丈を語ってもらった。

取材・文 / 宮本英夫ライブ写真撮影 / Viola Kam(V'z Twinkle)

理想を叶えた「kaleido proud fiesta」ツアー

──ちょっと前になりますけど「kaleido proud fiesta」ツアー、最高でした。MCなしで21曲、演奏に全集中して走り抜ける2時間15分。素晴らしかったです。

斎藤宏介(Vo, G) ちょっと記憶が曖昧ですけど、20本台はひさびさじゃないかな。1本のツアーでこれだけ回るのはコロナ禍になって初ですかね? セットリストが骨まで染みてる状態で、余計なことを考えず心配することもなく、自分たちの演奏とその場にいる人たちのことに集中しながらできたのはひさしぶりな気がして、すごく楽しかったです。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G)

田淵智也(B) 斎藤くんが言った「心配ない」というのはロックバンドとしては理想の状態で、我々はライブをやって帰るだけなので余裕もあるし。そこに補足して言うと、今回はセットリスト的に使命感があんまりなかったんですよ。「これやんなきゃ」というものがなく、我々はキャリアも長いのでセットリストの自由度も高い。おまけに今回はひと言もしゃべっていない。それもロックバンドとしてやりたかったことなんですよね。「ロックバンドはこうあったらいいよね」という、自分たちに対しても時代に対してもずっとやってきたことをより洗練させた感じというか、それが自分的には心地がいいです。理想の状態のライブツアーだったと思います。

──でも、またすぐ新しいツアーが始まりますけどね。前回のホールツアーとは対照的に、ライブハウスを回る「fiesta in chaos」ツアー。これはなんと呼べばいいですか、アンコールツアー?

田淵 もともと「2022年は何をやりたい?」とスタッフに聞かれたときに「ずっとツアーをやりたい」とは言っていて。そのあとにシングルが出ることが決まって「じゃあツアーは途中で切ったほうがいいだろう」と。新曲が入る前提で、新しいツアーというよりは、おまけのツアーみたいな感じですね。それとコロナ禍以降はホールでやることが増えたから、ライブハウスでもやりたかったんです。こういうおまけみたいなツアーはライブハウスでできるチャンス!と思って、入れてもらった感じです。

よくわかんなくてカッコいい曲を目指した

──そして、その2つのツアーの合間にシングル「カオスが極まる」がリリースされますね。このシングルはいつ作っていたんですか?

田淵 最初の打ち合わせは去年の5月頃だった気がします。

──それはかなり早いですね。

田淵 「年末までにデモがあればいい」みたいな感じでディレクターから言われたので、時間をかけられたおかげでじっくり作れました。年末にはたぶんメンバーに聴かせて……年明けは何やってたっけ?

斎藤 年明けはツアーをやってたね。

田淵 たぶんツアー中にプリプロまでしなくちゃいけなくて、ツアーが終わったらレコーディングして、という感じだったかな。レコーディングは今年の2月だった気がします。

田淵智也(B)

田淵智也(B)

──この曲は金城宗幸さんとノ村優介さんによる人気マンガのアニメ化作品「ブルーロック」のオープニング主題歌です。お二人は原作については知っていましたか?

田淵 タイトルは知っていて、1回読んだことがあったと思います。流行ってから改めて思い出し直した感じです。

斎藤 僕は金城さんの前の作品の「神さまの言うとおり」を読んでいて、「ブルーロック」は存在は知ってたんですけど読んでなかったんです。お話をいただいたときに、作者の名前を見て「あっ」と思ったパターンですね。

田淵 僕も「神さまの言うとおり」は読んでた。

──ストーリーはサッカーマンガとサバイバルゲームとの合体と言いますか。

田淵 サッカーの皮をかぶったデスゲーム系の、生きるか死ぬかのトーナメント制みたいな感じですよね。

──これまでのユニゾンのタイアップ作品とはちょっと傾向が違う気がしますが、どんな曲にしようと思いましたか?

田淵 まず、ディレクターが持って来る話は、絶対ユニゾンに合うだろうというものを選んでくれてるという信頼感があって。その信頼があるから、明るい曲がいいのか、カッコいい曲がいいのかは、話をもらったときにイメージが浮かびやすいんです。で、去年の5月にアニメチームと打ち合わせの時間を設けてもらったら、全員わりと年代が近くて。原作、監督、マンガの編集の方たちに若いならではの一体感みたいなものが漂っていて、進む方向がひとつだったんですね。そこで言われたのは、それこそサッカーの皮をかぶった人間ドラマということだったり、「狂ったものを作りたい」「ぐちゃぐちゃしたものを作りたい」ということで。そうは言ってもサッカーアニメだから、オープニングのアニメはそういう感じになるというイメージもあって、そのへんの掛け合わせで、「カッコいい曲」のほうを望まれてるんだろうなと。さらに「ぐちゃぐちゃでもいいのだ」「おどろおどろしくてもいいのだ」ということが打ち合わせの場で浮かび上がってきたので、そのあたりを元にしばらく考えていた感じですかね。

──この曲はヤバいですね。構成も音像もミックスもまさにカオスで、使う音も配置も普通じゃない。でもサビの突き抜けたポップ感はユニゾンらしいという、すごいインパクトの曲だと思います。

田淵 とにかく「よくわかんないものを作ってくれ」と言われてる気がしたので、そういう感じのネタはないかしらと思いながら絞り出したエッセンスが、今おっしゃっていただいたような、よくわかんない音がいっぱい入ってるみたいな感じだったんですよね。

ギターも歌もあったようでなかったアプローチ

──斎藤さんの、この曲の第一印象は?

斎藤 ワンコーラスのデモを聴かせてもらって、「ほう、すげえ曲作ってきたな」と。ややあって先方からOKをもらって、田淵が作ってきたフルコーラスを聴かせてもらったら、さらにすげえなと(笑)。そこに(鈴木)貴雄(Dr)がドラムを打ち込んだり、自分がギターを弾いたり、田淵がベースを弾き直したりしてだんだんユニゾンの曲になってきたという感じですかね。でもなんか、「kaleido proud fiesta」(2022年4月発売のシングル。参照:UNISON SQUARE GARDEN「kaleido proud fiesta」インタビュー)のときにも思ったんですけど、新しいことをやるタームに入ってきてるのかな?と思っていて、今までやらなかったことと、ユニゾンらしさとのバトり合いみたいな、そういうものが個人的には面白かったですね。ギターのアプローチもだいぶ違うし、歌も、あったようでなかったアプローチだし。

鈴木貴雄(Dr)

鈴木貴雄(Dr)

──確かに、ギターは何本重ねてるんだっていうぐらい入ってますよね。キーボード系の音じゃなくて、ギターで音の壁を作るみたいな。

斎藤 そこは田淵のこだわりが強かったですね。ギターのバッキングで埋める音作りは、だいぶこだわってたよね。

田淵 最近特にそうかもしれない。この曲は結果としていろんな音が入ってますけど、ロックバンドという構成の中でなんとかするしかないというときに……今は時代的にバンドというものがすごく弱いから、そこに対して音作りをがんばらなきゃいけないと思いながら、でもがんばりすぎるのは、もともとそういうことがやりたかったわけじゃないしという、間で揺れてるんですけど。その中でギターのバッキングとかを、どれだけデカく出すかみたいなことは、最近ユニゾンでやりたいテーマの1つですね。ミックスにもこだわって突き抜けてる感じを出さないと、ほかのアーティストの曲と並べたときに勝てないよなと思っているので。

──ああー。なるほど。

田淵 かといって、今っぽい音にしなきゃとは思ってないから。今までの俺たちにとって普通のやり方の中で、現状に一矢報いるとしたら?と考えると、必然的にギターの負担が増えてきちゃうんですけど、こだわってみると楽しいところで。コンプをかけるかかけないかで全然違うし、そこは今まで自分がこだわってこなかったところなんですけど、そこもやっていかないと、バンドとしても自分たちのキャリア的にもちょっとカッコ悪いかなと思ったりして。

──わかる気はします。

田淵 この曲はとにかく、入れられるものは入れようという感じですね。サビ前にバンドの音がなくなったら、アニメチームの希望する「ぐちゃぐちゃした感じ」が出るんじゃないか?ということで、サビ前でバンドの音を止めてみたりとか。「kaleido proud fiesta」もそうですけど、タイアップのときって、新しいことを何か1つやらないといけないと思うんですよね。テレビで流れるとか、サブスクのプレイリストに入りますとか、そういうときに何かやっていたほうが、同業者からの受けもいいのではないかと。

──いろいろ考えてますね(笑)。

田淵 今回、基本はロック曲なので、「kaleido proud fiesta」みたいに「一番耳に付くのがストリングスでもいいです」ということではなく、そこはギターなんですよ。だけど、バンドじゃないところの音をより訳のわからない感じにするために、アディショナルアレンジャーとして「Silent Libre Mirage」や「Invisible Sensation」にも参加してくれたebaくんにトラックの部分を作ってもらった感じですね。自分の中に、シングルだからがんばらなきゃという気持ちがやっぱりあるんでしょうね。本当は楽したいんですけど、どうしたらいいですかね。

斎藤 あはは。

田淵 まあ、がんばるときはがんばらなきゃという感じです。