Unblockがニューアルバム「京阪萱島駅」を5月30日にリリースした。
田口卓磨(Vo, B)が生まれ育った街の最寄の駅を冠した本作。田口は昨年5月に3年弱付き合った彼女との大阪府大阪市での同棲生活に終止符を打ち、京阪萱島駅に戻ってきてアルバムを完成させた。彼はこの1年間を振り返り、「不甲斐なさを痛感しつつ、周りの人の優しさに触れて前向きになれた」と語る。
音楽ナタリーでは今作のリリースに際し、田口がプライベートでよく悩みを打ち明けるというyonigeのごっきん(B, Cho)との対談を実施した。正反対の性格を持つ2人の、絶妙なやり取りを楽しんでほしい。
取材・文 / 小林千絵 撮影 / moco.(kilioffice)
寝屋川ビンテージで出会った2人
──お二人が仲良くなったきっかけはなんだったんですか?
ごっきん(yonige) 私がまだyonigeを結成する前に組んでたコピーバンドでビンテージ(大阪・LIVEHOUSE VINTAGE)に出てて、そのときにUnblockのライブを観たんですよ。で、「やば、カッコいい!」って思って、そこからずっとファンで。高校卒業すると同時に当時組んでたコピバンを解散して、yonigeを結成するまでに少し間があったんで、その間Unblockの追っかけやろうと思ってたんですよ。ほんまにカッコよくて、めっちゃ好きやったから。
田口卓磨(Unblock) ははは(笑)。照れますね。
ごっきん だからyonigeになって対バンしてるの、不思議な気持ちでした。でも対バンするようになっても初めはもっと先輩後輩っぽい関係性で……今みたいに仲良くなったのは何がきっかけか覚えてないですね。
田口 俺は最初から仲良かったと思ってるけどな(笑)。
ごっきん ちょっと!(笑) でも寝屋川でライブやってれば寝屋川の人とばっかり親交があるのは当たり前ですけど、寝屋川以外にもライブをしに行くようになったことでさらに仲間意識が生まれた気がする。
田口 ああ、そうかも。
ごっきん で、その仲間意識がどんどん濃くなってきて……って感じですかね。
田口 確かに寝屋川でしかやってなかったときは、ごっきんより同期のやつらとかとのほうがしゃべってたわ。
──それにしても一見、田口さんは物静かで、ごっきんさんは明るくて社交的。側から見ると正反対なお二人ですが、仲良くなったのはどうしてだと思います?
ごっきん うち、けっこう……すごーく丁寧に言うと“思慮深い”、端的に言うとメンヘラ気味の人と仲良くなることが多くて。だからかなと。
田口 “思慮深い”っていいな。思慮深い人としては、ごっきんはしゃべりやすいです。例えば俺が20%の元気でしゃべってても、ごっきんから100%で返ってくるから、「俺、すごいどうでもいいこと言ってるな」って気持ちが楽になる。悩みごとがあるときとかは特に。
ごっきん あー、なるほど。
──悩み相談とかもされるんですね。
田口 悩み相談、めちゃくちゃしますね。
ごっきん 急に朝、電話かかってきたりします。
田口 朝じゃない、昼間や。
ごっきん ええやんか、そんなん! ちょっと盛りや!(笑)
田口 朝から悩みの電話かけるなんて、よっぽどヤバいやつと思われるやろ。
ごっきん 確かにな。じゃあ昼にかかってきますよ(笑)。けっこうわけわからんタイミングで電話来て、急に思慮深い話聞かされるんですよ。
田口 鍋とか作りながら聞いてくれます、電話の向こうで。
ごっきん 「今、メシ作ってるんですよね」とか言って(笑)。
──逆にごっきんさんが相談することはあるんですか?
ごっきん うちがめちゃくちゃ悩んでるときの悩みの深さが500mlのペットボトルやとしたら、たぶん田口くんの悩みは5リットルなんですよ。だから田口くんの話を聞いてるうちに「ああ、うちまだまだ大丈夫や」って思えるんですよね。話してるうちに浄化されていくって言うか。
田口 相互作用や!
ごっきん 本当に田口くんは今まで出会った人の中で一番思慮深い人ですね。
──田口さんの思慮深さはSNSを拝見していても感じますが、Unblockで歌ってる内容に直結していて、それが曲の説得力にもつながっているなんだろうなと思います。
田口 曲では基本的に自分が言ってもらいたいこととか、自分がこうありたいと思うことを言葉にしてるんで、自分の生きづらさみたいなものはそこである程度消化できてるんやと思う。まあ生きづらいのは嫌やなってずっと思ってますけどね。
──つまり聴いてくれてる人に何かを伝えたい、と言うよりは自分に歌っている?
田口 ですかね。でも例えばそれを聴いて、共感してくれる人や何か響く人がいるんだったら、届けたいと思います。ライブの物販に立ってても、俺みたいに生きづらさを抱えてるような人が来て「今日のライブよかったです」って話しながら泣き出したりすることがあって。俺はその人の事情を知らないから軽々しく「わかるよ」とかも言えないから、その場では「がんばれよ」って言うだけで。でもその人にとってステージ上の俺の言葉だったり、俺らの曲が響いてるんだったら、それを持って帰ってくれたらうれしいなと思います。
寝屋川ってどんなところ?
──お二人は寝屋川のライブハウスで出会ったということなので、寝屋川がどういうところなのか教えてもらえますか?
ごっきん ジジイとババアとヤンキーしかおらんです。本当に何もないですね。インタビューとかでよく「寝屋川ってどんなところですか?」って聞かれるんですけど「本当に何もないんでわざわざ取り上げなくていいです」って言い続けてます(笑)。
田口 うん、別に行かんでいいです。
ごっきん 先輩のバンドたちが「大阪寝屋川出身」って言ってるからうちらも言ってるけど、「寝屋川大好きか?」と聞かれたら別に(笑)。愛着って感じですね。町田出身の人ってめっちゃ町田好きじゃないですか。でも、「町田に住んだら町田からもう出られない」っていう人はいっぱい見てきましたけど、寝屋川でそんなこと言ってる人見たことない。しょうがなく戻ってくる人しかおらん。
田口 まさに俺やな(笑)。
ごっきん はは(笑)。でもけっこう戻ってくる人は多いよな。ビンテージがあることくらいですかね、推せるところ。
──ビンテージを中心とした寝屋川にはバンドシーンみたいなものはあるんですか?
ごっきん 今はほとんど解散しちゃいましたけど、一時期盛り上がってたと思います。田口くんのさらに2歳上くらいのバンドが主催している「ね」っていうイベントがあって。
田口 Day tripper世代ですね。
ごっきん そう、デイトリとBaby smoker、POLKADOT、Self-Portrait、lifestyleっていう5バンドが主催する入場無料のイベントで。それがうちが見てた寝屋川の最初のバンドシーンでしたね。
田口 そのあと俺らの世代がけっこう出てきてたんだけど、それもおらんくなっていって。でもほんと一時期は盛り上がってたと思う。
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前作に「西中島南方」、今作に「京阪萱島駅」と地名を付けた理由
- Unblock「京阪萱島駅」
- 2018年5月30日発売 / THE NINTH APOLLO
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[CD] 1944円
TNAD-0104
- 収録曲
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- 萱島駅
- エピローグ
- 明日に向かう
- 産声
- morrow
- ブレークアウト
- サイレン
- 光
- 午前二時
公演情報
- Unblock「京阪萱島駅」リリース
“誰かの隣で生きている”ツアー -
- 2018年6月16日(土)
- 大阪府 LIVEHOUSE VINTAGE(※ワンマンライブ)
- 2018年6月17日(日)
- 東京都 下北沢SHELTER
- 2018年6月19日(火)
- 愛知県 APOLLO BASE
- 2018年6月21日(木)
- 大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE
- yonige presents「売上総取 vol.5」
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- 2018年6月1日(金)
- 福井県 福井CHOP
- Unblock(アンブロック)
- 田口卓磨(Vo, B)、中健人(Dr)、中村大(G, Vo)からなるロックバンド。2010年10月に結成された、大阪府寝屋川市を中心に活動を始める。2014年よりTHE NINTH APOLLOに所属。精力的にライブ活動を重ねる一方で、2014年10月に1stミニアルバム「いつかのいいわけ」、2015年8月に1stシングル「生活のこと」、2016年10月に1stフルアルバム「明日の産声」、2017年12月に2ndシングル「西中島南方」と定期的に作品も発表している。2018年5月に2ndミニアルバム「京阪萱島駅」をリリース。
- yonige(ヨニゲ)
- 牛丸ありさ(Vo, G)とごっきん(B, Cho)からなる大阪府寝屋川市出身の2人組バンド。small indies tableの第1弾アーティストとして、2015年8月に初の全国流通盤「Coming Spring」をリリース。2016年7月に2ndミニアルバム「かたつむりになりたい」を発表し、2017年2月から3月にかけて行われたスペースシャワーTV主催のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2017 ~10th ANNIVERSARY~」に参加した。同年9月に1stフルアルバム「girls like girls」をワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりリリースし、メジャーデビューを果たした。