Unblock「京阪萱島駅」特集|田口卓磨(Unblock)×ごっきん(yonige) 寝屋川出身の正反対な2人をつなぐもの

ごっきんが好きなのは鬱屈した2曲?

──ごっきんさんは「京阪萱島駅」の中で好きな曲はありますか?

ごっきん(yonige)

ごっきん 6曲目の「ブレークアウト」と7曲目「サイレン」が好きです。

田口 鬱屈した2曲やなあ。

ごっきん 私、たぶん田口くんの卑屈なところが好きなんでしょうね。卑屈って言うか、常に精神的に容量満タンな感じ。そういうところが好きで、この2曲は特に田口くんのそういうところが出てるなと。

田口 なるほど。

ごっきん 「ブレークアウト」は「私」って歌詞が入ってるのが新鮮で。

田口 歌詞で「私」って使ったのは初めて。

ごっきん 意識して入れたんですか?

田口 うん。曲数がいっぱいあるアルバムだったらいろんな目線の曲があったほうが面白いかなと思って。自分のことを置き換えてるだけではあるんだけど。

──この曲は「鬱屈した曲」とおっしゃっていました。確かに「正体不明の不安感」という言葉から始まる、田口さんらしい歌詞ではあるんですけど、この曲に「ブレークアウト」というタイトルを付けることで明るい未来を欲している感じがしますよね。

田口 タイトルはちょっと照れましたよ。カッコつけてるみたいで。でも「ブレークアウト」って直訳すると「強行突破」とかそういう意味で。意識して明るいタイトルを付けたいと思ったんですよ。今作はこの曲に限らずなんですけど、明るいことを歌いたいなと思った。

──それはどうしてですか?

田口 前を向きたいからです。前に進みたいから。なんか、この1年で前向きになれた気がします。

ごっきん おお!

ビジョンを持てるようになった

──ごっきんさんが好きだと言う「サイレン」についても聞かせてください。

田口 同期に、ボーカルが超思慮深い、あるバンドがいて。そのバンドメンバーから、そのボーカルが機材車で高速を走ってるときに突然助手席のドアを開けて飛び降りようとしたという話を聞いたんです。で「大変だね」と言ったら、メンバーが「いやー、あいつは病んでるくらいのほうがいい曲書くし、いいライブするんだよね」って返してきたんです。俺、それにめちゃくちゃ腹が立って。そんな思いつめてる状態、普通によくないじゃないですか。バンドって、このメンバーとずっと一緒にやりたい、ずっと一緒にステージに立ちたいと思ってやってるものなのに「ボロボロくらいがいいから放ってんねん」って優しくなくない?って。

ごっきん 確かにな。

田口 それが「“病んでるくらいがちょうどいい”」「履き違えて傷が増える」っていう歌詞になってる。なんかそういうのに負けたくないと思った。そういうバンドより絶対にいいライブしたいと思った、その気持ちを書きました。

──なるほど。あとご自身のInstagramでは「光」について「とても前向きで好き」と書かれていましたね(参照:卓磨 田口 (@tt1118) | Instagram)。

田口 はい。歌詞と曲とメロディを出てきた順番に並べたらできた曲ですね。なんかするっと出てきた。あと俺らの曲でシンガロングができるのって「声」(2014年10月発売の1stアルバム「いつかのいいわけ」収録)しかなくて。あの曲5分くらいあってライブには入れづらいので、もう1曲くらいみんなで歌える曲が欲しいなと思ってシンガロングパートを入れたんですけど、そしたらこの曲も4分半(笑)。

──結局長い曲になっちゃったんですね(笑)。この曲は「今 変わる時 今 変える時」という最後の歌詞がすごく印象的ですね。

ごっきん 田口くんの強い意志を感じる。

田口 これも意識的に前向きなことを歌おうと思った結果で。この1年で本当に前向きになったんですよね。なんかこれまでは漠然と生きてきたんですけど、何をするにもビジョンを持ちたいなと思うようになったんですよね。それまでは成り行きで「結婚したいな」とか「いつかバンドが売れて……」とかは思ってたけど「そのためにじゃあ、何をすんねん」ってことに気付いたと言うか。

ごっきん へえ。

楽しく健やかに続けられるバンドに

──では今、描いてるバンドの今後のビジョンはどんなものでしょうか?

田口 もともとはずっと「音楽で食えること」が目標だったんです。でもそれを思えば思うほど、限られた人にしか届かんライブになってた気がして。それよりも楽しく続けられるバンドをやりたいなと思うようになりました。その結果として、食えるようになるんですよね。その順番を間違えちゃいけないなと。自分のやりたいことをやりたいようにやるのが前提やって気付きましたね。でも個人的にはお母ちゃんに心配をかけないように、音楽で食えるようになりたいという気持ちもあります。

ごっきん 私は田口くんが健やかでいられることを望んでます(笑)。健やかな状態の田口くんが作る曲を聴いてみたいです。なんか「結婚したら曲が書けなくなっちゃうんじゃないか」と心配になってしまうような人もいますけど、田口くんって、結婚したり、環境が変わってもいい曲を書ける確信があって。子供が生まれた田口くんが、子供に向けて書いた曲とか絶対いいもん!

田口 うわあ、書きたいわ。

──楽しみですね。では最後に改めて「京阪萱島駅」がどんな作品になっているのか、お二人からアピールしてもらって対談を終わりにしようと思います。

田口 今までのものと比べてもかなり意識的に前を向いてるアルバムだと思います。暗い曲が嫌いな人も聴けるし、俺みたいに生きづらさを抱えている暗いやつでも聴けるので、1回手に取ってください。なんか響くと思います。

ごっきん この数年、田口くんに何かがあったんだろうなと感じられる1枚です。ちょっと前を向きたい人や前を向く勇気が欲しい人にすごく響くんじゃないかなと思います。

左から田口卓磨(Unblock)、ごっきん(yonige)。
Unblock「京阪萱島駅」
2018年5月30日発売 / THE NINTH APOLLO
Unblock「京阪萱島駅」

[CD] 1944円
TNAD-0104

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収録曲
  1. 萱島駅
  2. エピローグ
  3. 明日に向かう
  4. 産声
  5. morrow
  6. ブレークアウト
  7. サイレン
  8. 午前二時

公演情報

Unblock「京阪萱島駅」リリース
“誰かの隣で生きている”ツアー
  • 2018年6月16日(土)
    大阪府 LIVEHOUSE VINTAGE(※ワンマンライブ)
  • 2018年6月17日(日)
    東京都 下北沢SHELTER
  • 2018年6月19日(火)
    愛知県 APOLLO BASE
  • 2018年6月21日(木)
    大阪府 LIVE HOUSE OSAKA BRONZE
yonige presents「売上総取 vol.5」
  • 2018年6月1日(金)
    福井県 福井CHOP
Unblock(アンブロック)
Unblock
田口卓磨(Vo, B)、中健人(Dr)、中村大(G, Vo)からなるロックバンド。2010年10月に結成された、大阪府寝屋川市を中心に活動を始める。2014年よりTHE NINTH APOLLOに所属。精力的にライブ活動を重ねる一方で、2014年10月に1stミニアルバム「いつかのいいわけ」、2015年8月に1stシングル「生活のこと」、2016年10月に1stフルアルバム「明日の産声」、2017年12月に2ndシングル「西中島南方」と定期的に作品も発表している。2018年5月に2ndミニアルバム「京阪萱島駅」をリリース。
yonige(ヨニゲ)
yonige
牛丸ありさ(Vo, G)とごっきん(B, Cho)からなる大阪府寝屋川市出身の2人組バンド。small indies tableの第1弾アーティストとして、2015年8月に初の全国流通盤「Coming Spring」をリリース。2016年7月に2ndミニアルバム「かたつむりになりたい」を発表し、2017年2月から3月にかけて行われたスペースシャワーTV主催のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2017 ~10th ANNIVERSARY~」に参加した。同年9月に1stフルアルバム「girls like girls」をワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEよりリリースし、メジャーデビューを果たした。