ナタリー PowerPush - 植村花菜
デビュー10周年を前に考える「大人の女性の生き方」
来年でデビュー10周年を迎える植村花菜。2014年は、そんなアニバーサリーイヤーへの弾みをつけるかのように年明けから精力的な活動を開始。大切な人への思いをつづった珠玉のラブバラード「輝く時間(とき)の中で」をリリースし、2月から全国弾き語りツアーをスタートさせる。
今回のインタビューでは、新曲の話やツアーの意気込みに加え、「結婚して初めて感じた」という幸せや恋愛観についても言及。30代を迎え、より成熟した大人の女性へと変化しつつある彼女の最新モードを感じてほしい。
取材・文 / 川倉由起子
念願の「B面ナイト」を開催
──新曲のお話の前に、まずは近況から。ブログを拝見しましたが、この年末年始は盛りだくさんなスケジュールだったようですね。
はい。年末年始はライブ三昧でした。12月から1月頭にかけて、ブルーノートやビルボードといった会場でジャズテイストのライブを。年明け、誕生日の1月4日には「B面ナイト」という、かなりマニアックなライブをやらせてもらいました。どちらも新たな挑戦があって、ジャズライブは普段のツアーとまったく違うアレンジが新鮮だったし、「B面ナイト」はいつもやってるメイン曲はいっさいやらず、まさにB面曲ばかりを集めた内容。8年ぶりくらいに歌う曲もあって、歌詞やコード間違えたらどうしよう?って、過去の記憶を呼び起こすのが大変でした。
──でも、そんな「B面ナイト」は植村さんの念願だったそうで。
そうなんです! 来年でデビュー10周年なんですが、シングルが今作で12枚目ということで、けっこうなB面が集まりまして。私、普段からB面もいっさい手抜きせず作ってるので、どれもリード曲と同じくらい大事なんです。でもライブでは歌えないことも多いじゃないですか。せっかくこの世に生まれてきたのにかわいそうやなってずっと思ってて、そういう曲たちが日の目を見るライブがあってもいいんじゃないかなって。2、3年前からその思いを温めてて、今回の誕生日でついに念願叶ったって感じですね。
──じゃあ、ライブができること自体が誕生日プレゼント?
本当にそうです。スタッフに「お願い! やらせて!」って、ずっと言ってましたから。だってそんなライブ、お客さんどんだけ来るの?って話ですよ(笑)。小さいハコでも埋まらないんじゃないかって、事務所もだいぶ渋ってたんです(笑)。でもフタを開けてみたら、おかげさまでソールドアウトで。
──どんな反響がありました?
面白かったですよ。昔からのコアなファンの人が「普段のライブよりよかった。花菜ちゃん、これはどういうこと? 普段どうなってるの?」って。そんなん知らんがな!って感じやったんですけど(笑)、それくらいみんなが楽しんでくれたのかなって思うとうれしかったです。だから、何年後かにまたできたらええなって。しょっちゅうやるとあまり価値がないから、オリンピックくらいのスパンで(笑)。
今、誰が付ける?みたいなタイトル
──ではさっそくニューシングル「輝く時間の中で」のお話に。今作はテレビ東京系ドラマ「水曜ミステリー9」のエンディング曲ですが、そのタイアップが決まる前からストックとしてあった曲なんですか?
メロディに関してはそうですね。で、最初に曲だけ聴いてもらったときに「ドラマにピッタリだからぜひ使わせてほしい」と言っていただけて。それから歌詞を付けて完成した……という流れです。先方的には、前向きになれるバラードを求めてらっしゃったみたいです。
──歌詞はどんなことを意識して書いていきましたか?
ドラマのスタッフさんとの打ち合わせで、視聴者は私と同世代のOLさんとか、意外に若い女性が多いという話を聞いたんです。で、「そういう女性たちが明日もがんばろうと思えるような歌詞が乗るとうれしい」って言われて、私自身もまさにそういう歌詞がピッタリだなって。あと意識したことといえば、ミステリードラマの主題歌というと私の中で「火曜サスペンス」みたいなちょっと古めのイメージがあって。だから「輝く時間の中で」というタイトルもそうなんですけど、90年代を匂わすような、ちょっと昔に流行ったような音楽を意識して作ってみました。
──言われてみればこのタイトル、90年代のJ-POP全盛の頃の匂いがプンプンしますよね。
昔はよくあったけど、今、誰が付ける?みたいな(笑)。時間を「とき」と読む感じとか、あえて今そういうちょっとダサイことをしてみたかったんです(笑)。アレンジもJ-POPのバラードの王道というか、日本人好みの歌謡曲を匂わすような感じを意識しました。
──植村さんが触れた90年代J-POPというと、「ラブ・ストーリーは突然に」とか?
そうそう! なんか、そのへんの感じを出したかったんです。今の時代、そういうのをやってる人がいないからこそ、逆に面白いんじゃないかなって。
収録曲
- 輝く時間(とき)の中で
- 気にThrough, 気にしNight
- Wonder Of Wonders
植村花菜(うえむらかな)
兵庫県川西市出身。1983年1月4日生まれのシンガーソングライター。8歳のとき、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」を観て歌手になることを決意し、その日から毎日歌の練習を始める。19歳で曲作りを始め、地元を中心とした関西各地のストリートやライブハウスで活動を行う。その後「ストリートミュージシャンオーディション」で1200組の中からグランプリに選ばれ、2005年にシングル「大切な人」でメジャーデビュー。2010年3月にリリースしたミニアルバム「わたしのかけらたち」に収録の「トイレの神様」は口コミで話題になりドラマ化、小説・絵本化も実現し、同年末の「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。その後コンスタントに作品を発表し続け、2013年3月にミニアルバム「Steps」を発売。翌2014年1月には2年ぶりのシングル「輝く時間の中で」をリリースする。