植城微香|5年間の路上ライブを経て、1stミニアルバム「SO」に込めた思い (2/2)

ニュアンスを大事に歌った「SO」

──昨年は音源の配信もスタートさせ、今回初のフィジカル作品であるミニアルバム「SO」がリリースされました。先行配信曲「24 Hours」「HI TO RI ZI ME」「merry-go-round」を含む、全6曲が収められています。

めっちゃうれしいですね。以前にもCDは作ったことがあったんですけど、それはすべてアコギとボーカルだけのシンプルなスタイルだったんですよ。でも今回はすべての曲がしっかりアレンジされたものになっているので、とにかくもう「みんな聴いてね!」っていう感じです。きっと待っててくれた方も多いと思うので。

──弾き語りスタイルしか知らない人は1曲目の「YOUR GIRLFRIEND」から大きなインパクトを受けるかもしれないですね。植城さんの音楽性が鮮明に見えている曲でもあると思います。

入りから低音が強めのサウンドになっていますからね。1発目で「お!」と思ってもらえるはずです。全部の曲が大好きなんですけど、この曲は特にお気に入りです。歌詞の内容的には、好きになった人に彼女がいたという、友達の恋バナをきっかけに思い浮かんだストーリーになっていますね。

──収録曲はすべてJUNKOOさんがアレンジを手がけられています。JUNKOOさんには事前に細かくイメージを伝えるんですか?

はい。基本は自分の中にイメージが明確にあるので、それをお伝えさせていただいたうえで作ってもらう感じです。ただ、この「YOUR GIRLFRIEND」だけは私のイメージとはかけ離れたものが上がってきたんですよ。最初は「ん?」と思ったんですけど、何度も聴くうちに「こっちのほうがいい!」と思ったので、そのままの形で行かせてもらいました。そういうパターンは初めてでしたけど、自分の想像を上回る素晴らしい仕上がりにしていただけたと思います。

──「HERO」は、苦しいときにそっと手を差し伸べてくれる大切な存在を歌った曲ですね。

昔、バイトでいろいろやらかしまくって「もうあかんわ」みたいなことを友達に相談したことがあって。そのときに「気にせんでもいいよ。そよ(植城)は、そこにおってくれるだけでいいから」って言ってくれたんです。落ち込んでいた私にはその言葉がすごく響いたし、私にとってもその友達は存在してくれているだけでいいと思える人だったので、その思いを曲にしてみようと思ったんですよね。皆さんの中にも、そこに存在してくれているだけで救いになってくれる人がきっといるはずなので、この曲を聴くことでそういう大切な人のことを思い描いてくれたらうれしいです。

──サウンドはすごく爽快ですよね。そのうえで伸びやかに響く植城さんの声が本当に気持ちよさそうで。

この曲は崖の上に立って歌っているイメージが浮かんでいたんですよ。目の前には海があって、見上げれば青空が広がっている。そこでさわやかな風を感じながら歌っているような。壮大な世界観を持つ洋楽っぽさも出したいなと思っていたので、その通りの仕上がりにしていただけたのがうれしかったですね。鳥の鳴き声のような音が入っているのがお気に入り。それによって、より風を感じられると思うので。

植城微香

──「drive」はグルーヴィなトラックの上で楽しいドライブのストーリーが展開していくラブソングです。

これはもともと、バイクの後ろに乗せてもらった経験から書いたもので。だから最初は「ヘルメット」とか「後ろから抱きしめて」みたいなフレーズが入っていたんです。それを改めて車でのドライブに書き変えてみました。昔、ギターがまだあまり上手じゃなかった頃、大学の先輩に教えてもらったあるコードがあって。私はその音から水色やエメラルドグリーンのような色を思い浮かべて、この色が似合うような曲を作るときに絶対使おうと決めていたんです。そのコードを使って書いたのがこの曲ですね。

──ちょっとラップっぽいフロウを持ったパートもありますよね。

エミネムとかのヒップホップをずっと聴いていた時期もあったので、自分の曲にラップを入れることもけっこうあります。「24 hours」にもラップっぽいところがありますし。ラップパートはノリや勢いを大事にしつつ、気持ちよくリズムに乗りながらレコーディングしましたね。

──音源に刻まれているボーカルの表情は、普段弾き語りで歌っているときとはまた違ったものになっている印象がありますね。

そうなんです。トラックの重低音を感じながら、ギターを弾かずに歌うのもすごく楽しいなと思いました。路上では目の前で聴いてくれている人がいるから興奮もするし、グワッと熱く、ちょっと泥臭く歌ってしまいがちなんですよ。もちろんそのよさはあるとは思うんですけど、音源ではもうちょっと丁寧に、ニュアンスを大事に歌うことを意識しましたね。語尾で息遣いを感じてもらえるようにしよう、とかいろいろ考えながら。

植城微香
植城微香

路上を早く引退する

──今作のリリース後、5月31日には大阪で、6月4日には東京でワンマンライブが開催されますね。

ワンマンはめっちゃひさしぶりなんですよ。前回は3年半くらい前で、そのときは活動を始めて間もない頃だったし、勢いのままやり切った感じで。でも、そこからちょっと時間が経ったことで、自分の中の植城微香像が確立できてきたところもあるし、しかも今回はミニアルバムを出したうえでのライブですからね。「ここからがスタート!」という気持ちで最高のライブにしたいなと思っています。楽しみ!

──未来に向けてはどんなビジョンを持っていますか?

テレビの音楽番組にも出たいですし、ワンマンライブの規模をどんどん大きくしていって、ゆくゆくは日本武道館とかドームでもライブがやりたいです。以前、京セラドームで国歌独唱をさせてもらったことがあるので、今度は自分のライブで凱旋したいんですよ。

──テレビ出演で言うと、けっこう早いタイミングで「ミュージックステーション」や「歌唱王」などに出演されていましたよね。

そうですね。その経験によって自信がついたところもあったし、たくさんの方から反響をもらうことができました。それがすごく今の力になっていると思うので、以前よりも成長した自分として、改めてテレビに出たいですね。

──路上ライブは今後もずっと続けていくんですか?

ライブの規模が大きくなって、ステップアップできたら路上はやめようと思ってます。路上はもちろん大好きで、それがなくなったら絶対に寂しくなるとは思うんです。でも、そこへの未練がなくなるくらい売れることが大事かなって。そのくらい売れて、路上を早く引退することが今の私の、一番の目標ですね。

植城微香

ライブ情報

植城微香 ワンマンライブ「YOUR」

  • 2023年5月31日(水)大阪府 Music Club JANUS
  • 2023年6月4日(日)東京都 下北沢MOSAiC

プロフィール

植城微香(ウエキソヨカ)

大阪出身のシンガーソングライター。2018年に音楽活動をスタートさせ、路上ライブを中心に年間150本のライブを行っている。2019年にテレビ朝日系「音楽チャンプ」「ミュージックステーション」に出演。2021年には日本テレビ系「歌唱王」にて番組史上初のギター弾き語りを披露し、番組MCの南原清隆が目を潤ませる姿が話題に。2022年、1stシングル「24 hours」を配信リリース。5月10日に初の全国流通作品となるミニアルバム「SO」を発表した。