ナタリー PowerPush - 宇宙人

曲を作る秘訣は「音楽が好きじゃないこと」

ふせえりっぽいと言われるとうれしいです

──「慟哭」はメジャーデビュー作ということで、作風やサウンドプロダクションに多少なりとも変化は出るのかなと思っていたんですが、そういう意味ではほとんど変わりませんでしたね。

何も意識してなかったです。したほうがいいんですか? じゃあ次回はします(笑)。

──とはいえ今作はかなり宇宙人らしさみたいな個性が強まったように思いました。バンドとして成長しているように感じます。

インタビュー風景

ふせえりっぽいって思いました?

──ふせえり?? って女優の? 何がですか?

ムードが。

──ああ、ちょっとシュールで不思議な世界観みたいな。なるほど、確かにわかる気がします。

やったあ! ふせえりっぽいと言われるとうれしいです(笑)。

──全体的にぼんやりとしてつかみどころがない感じは、そういうところを意識してるんですね。

意識してないです。

──意識してはいないんですね(笑)。でも、自分の曲を聴いた人の頭に、具体的なイメージが浮かばないほうがうれしいということですよね。

そうです! 曲の意味は聴いた人がそれぞれ自由に考えてほしいです。

──その一方で、歌詞の中には具体的な単語がたくさん使われてますよね。だからすごくインパクトがあります。

例えば「コロネのおいしいぎょうざ屋さん」は「この店はコロネもおいしいけど、本当はぎょうざもおいしいんじゃないか」という曲です。いろんなとらえ方をしてほしいんです。本人次第、聴く人次第で。だからすごい深読みしすぎて混乱して大変なことになる人も多分いると思います。

──数学や化学の用語が多く使われてる印象がありますが、そういう理系的なものが好きなんですか?

化学記号が好きです。化学記号の本をよく読みます。化学という学問が好きなんじゃなくて記号。Pはリンで、Siがケイ素とか、そういう文字を眺めているのが好きです。

鍾乳洞の暮らしとか

──アルバムタイトルはどうして「慟哭」になったんですか? 宇宙人はあまり激しく感情を表に出さないバンドというイメージなので「慟哭」という言葉とはあまり結びつかないなと思ったんですが。

インタビュー風景

タイトル候補を50個くらい出してくれと言われて考えた中から、スタッフに選んでもらいました。

──最終的に選んだのは自分じゃないんですね。ほかにはどんな候補があったんですか?

「鍾乳洞の暮らし」とか。

──おお、宇宙人っぽい。今回ボツでも、そのタイトルで新たに曲を作ればいいじゃないですか。

わかりました、次回これ使います。他のバンドとかに使われたら困るのでこれは書かないでください。

恥ずかしいのでコンタクトを外して歌います

──今回は「数字の人たち」「時計」と、インストが2曲入ってるんですよね。

はい。今回は楽譜を書きました。

──それは意外です! セッションなんだと思ってました。

違います(笑)。セッションって大っ嫌いなんです。ライブの感想とかでもよくそう言われるんですけど、即興じゃなくちゃんと決めてやってるんです。ノイズを出す部分も全部細かくタイミングを決めてます。

──最後を飾る「時計」は20分くらいある大作で、しかも複雑な構造のプログレみたいな曲なので、楽譜を作るのは大変そうですね。

本当は1時間以上ある曲だったんですけど、1時間演奏するのはつらいので20分を目指して短くまとめました。

──メジャー1作目ということで敷居の低い曲が並ぶのかと予想していたら、インストの2曲はすごくアバンギャルドですよね。「数字の人たち」はストーナーロックみたいですし。

「数字の人たち」はギターも私が弾きました。

──やっぱりレコーディングではいろんな実験をしているんですね。以前の「ヘビィ~メタルバイオレンス」はギターとベースを利き腕と逆に構えて、ドラムもセットを逆に組んでレコーディングしたと言ってましたよね。

今回のミニアルバムはボーカルを一度も録り直しませんでした。演奏と同時に歌って、それをそのまま使いました(笑)。

インタビュー風景

──それは何か目的があったんですか?

目的はないです。

──1回目に歌ったものが満足だったので、結果的に一発録りになったってことですか。

そうです。

──レコーディングは好きですか?

大好きです。今年中にあと2回はレコーディングしたいです。あとサイパンで撮影をやりたいです。

──顔出ししてないのになんの撮影をするんですか(笑)。

スタッフの水着グラビアを撮りたいです。

──宇宙人はこれからもメディアでは顔出ししない方向でいくんですか?

恥ずかしいです!

──でもライブでは顔出しすることになりますよね。

ライブは照明を暗くすればお客さんからよく見えないのでなんとかなります。けど、その代わりに客席のほうが明るくなって、お客さんの顔がよく見えるので、余計に恥ずかしいです。だからこれからはライブをするときにはコンタクトを外して、周りがはっきり見えない状態でやろうかなと思ってます(笑)。

ミニアルバム「慟哭」2012年5月23日発売 / 2000円(税込) / スターチャイルド / KICS-1769

収録曲
  1. もっともっとイン・ザ・ルーム
  2. 家の中以外away
  3. ファンタスチックヨーグルト
  4. セクシーバクテリア
  5. コロネのおいしいぎょうざ屋さん
  6. 数字の人たち
  7. 貝とでんでん虫
  8. 時計
宇宙人(うちゅうじん)

しのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと(Dr)の4人のメンバーによるポップバンド。2008年頃に結成され、地元でのライブ活動やデモ音源の配布、販売などを全く行わないまま、2010年に「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演した。2011年7月に初の音源となるシングル「アメーバダンス / あこがれのネクタイ」をパーフェクトミュージックから、同年8月に1stアルバム「お部屋でミステリーサークル」をGYUNNE CASETTEからそれぞれリリース。「お部屋でミステリーサークル」は「第4回CDショップ大賞」で中国四国ブロック賞を受賞した。2012年にはスターチャイルドからメジャーデビューを果たし、ミニアルバム「慟哭」を発表する。不思議な世界観と中毒性の高いポップセンスで、じわじわと人気を拡大している。