ナタリー PowerPush - 宇宙人

曲を作る秘訣は「音楽が好きじゃないこと」

昨年発売のアルバム「お部屋でミステリーサークル」が各所で話題になった女性ボーカルのアバンポップバンド、宇宙人がキングレコード / スターチャイルドレコードからいよいよメジャーデビュー。その第1弾となるミニアルバム「慟哭」が5月23日にリリースされる。

今回ナタリーではこのバンドの中心人物である、しのさきあさこ(Vo)にインタビューを敢行。築地の寿司屋に彼女を迎え、まだまだ多くの謎に包まれたままの宇宙人の活動の秘密や、不可思議に満ちた彼女の思考に迫った。

取材・文 / 橋本尚平 インタビュー撮影 / 笹森健一

曲を作ってと言われたら仕方なく書きます

──宇宙人の最新アーティスト写真が「虫寿司」だからということもあり、今日は寿司屋で取材することになりました。

私、てんとう虫が嫌いなんです。見るのもイヤ。

──じゃあ、あのアー写は見るたびに嫌な気持ちになっちゃうんじゃないですか?

……ちょっと。

インタビュー風景

──(笑)。でも寿司は好きなんですよね?

お寿司は好きです。いくらが好きです。音楽よりお寿司のほうが好き。音楽は好きじゃないです。

──そうなんですか。でも音楽をがんばれば、こんなふうに寿司を食べさせてもらえる機会はもっと増えていくはずですし、この先いいことがあると思いますよ。

え!? 文房具も買い放題ですか? そうか……。じゃあ、レコード会社の人にがんばってもらいます。

──文房具を集めているんですか?

文房具大好きです。好きの順番は文房具の次がお寿司です。最近はハリナックス(針なしホッチキス)の最新版を買いました。使ってるうちに楽しくなってきて、作りかけの歌詞が書いてあった紙を留めていたら、気づかないうちに紙が穴だらけになって、読めなくなったので捨てました。もう何が書いてあったかわからないのでその曲はボツになりました。

──自分が書いた歌詞なのに、書いた直後にもう覚えてなかったんですか?

覚えてないです。

──それは残念ですね。宇宙人の曲はかなり特徴的な歌詞だと思いますが、どういうときに書くんですか?

必要になったら。曲を作ってと言われたら仕方なく書きます。

──いつも歌詞はどういうイメージで書いてるんですか?

何もないです。

──特に何もイメージしてないということですか?

そうです。イメージはないです。

──自分の中に「歌詞の書き方」みたいな決まった手法はなくても、新曲が必要になったらすぐにゼロから歌詞が浮かぶものなんですか?

はい。期限があれば必ず守ります(笑)。

──例えば急に「実は明日締め切りなんだよ」って言われたら作れますか?

今すぐ家に帰れば1曲仕上げられます。健康ならいつでも大丈夫です。

──音楽は好きではないけど、曲のアイデアは枯れることなく常に湧き続けてるってことですね。

そうなんですね、多分。

ほかの人と壁があるレーベルで良かったです

──個人的に宇宙人がメジャーデビューするというのは意外でした。「バンドで成功してやる! ビッグになってやる!」みたいな野心を一切感じなかったので。

はい。そういうのはないです。

インタビュー風景

スタッフ メーカーからの熱烈なオファーがあって契約させていただきました。本人の意志はないです(笑)。

──なるほど、あさこさんとしてはいつの間にかそうなっていたと。デビューが決まったことで、家族などから何か言われましたか?

家族とはそんな話はほとんどしません。でも「新しいレコード会社にはこんなスタッフがいるんだよ」って話はしました。

──メジャーデビューして良かったと思います?

多分良かったです。

──スターチャイルドがどういうレーベルなのかは知ってました?

全然知らなかったです。今も知らないです。

──元々アニソンからスタートしているから、ほかのJ-POPのレーベルとはちょっと毛色が違うレーベルですよね。

じゃあ、ほかのアーティストとは壁があるってことですね! やった!

──他者と壁があるのはうれしいことなんですか?

はい! うれしいです!

CDショップ大賞よりモンドセレクションがいいです

──昨年のアルバム「お部屋でミステリーサークル」は「第4回CDショップ大賞」で中国四国ブロック賞を受賞しましたね。

インタビュー風景

らしいですね。ふーんって感じです。「モンドセレクション」のほうが欲しかったです。

──残念ながらCDで「モンドセレクション」を受賞するのは難しいと思います(笑)。音楽で人から評価されることにはあまり興味はないんですか?

ないです。でも賞は記念になるのでいただけて良かったです。ありがとうございます。

──自分の音楽を多くの人に聴いてもらいたいという気持ちにはなりませんか?

聴いてもらえるのはうれしいです。私も自分が作った曲は好きです。

ミニアルバム「慟哭」2012年5月23日発売 / 2000円(税込) / スターチャイルド / KICS-1769

収録曲
  1. もっともっとイン・ザ・ルーム
  2. 家の中以外away
  3. ファンタスチックヨーグルト
  4. セクシーバクテリア
  5. コロネのおいしいぎょうざ屋さん
  6. 数字の人たち
  7. 貝とでんでん虫
  8. 時計
宇宙人(うちゅうじん)

しのさきあさこ(Vo)、こまつけんた(G)、にいやひでひろ(B)、わだまこと(Dr)の4人のメンバーによるポップバンド。2008年頃に結成され、地元でのライブ活動やデモ音源の配布、販売などを全く行わないまま、2010年に「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演した。2011年7月に初の音源となるシングル「アメーバダンス / あこがれのネクタイ」をパーフェクトミュージックから、同年8月に1stアルバム「お部屋でミステリーサークル」をGYUNNE CASETTEからそれぞれリリース。「お部屋でミステリーサークル」は「第4回CDショップ大賞」で中国四国ブロック賞を受賞した。2012年にはスターチャイルドからメジャーデビューを果たし、ミニアルバム「慟哭」を発表する。不思議な世界観と中毒性の高いポップセンスで、じわじわと人気を拡大している。