新生T-SQUAREインタビュー|世代を超えた継承と進化──現役大学生メンバーとともに開く、新たな1ページ (2/2)

長谷川雄一(Key)、亀山修哉(G)
インタビュー

デビューライブの前日が試験の最終日だった

──T-SQUAREの新メンバーとして加入されたお二人は、どういうきっかけでバンドのことを知り、オーディションに参加されたのでしょう?

亀山修哉(G) 父親の影響でT-SQUAREの音楽を聴いていて、毎年のようにライブに足を運ぶなど、大好きなバンドだったので、新メンバーのオーディションがあるという話を聞いたとき「これは絶好のチャンスだ」と思い、応募しました。だから、加入できたことは夢が叶ったような感じです。

長谷川雄一(Key) 僕も中学生の頃に父親の影響で聴くようになり、自分でバンドのことを調べたり、ライブに足を運ぶようになって、好きになったという感じですね。地元の名古屋公演は必ず観に行っていたほどだったので、加入できたのは光栄です。

──歴史のあるバンドに加入することに対するプレッシャーみたいなものはありましたか?

長谷川 年齢差もあるのですが、自分が小さい頃からずっと観てきた憧れのメンバーの方々が目の前にいて、かつ一緒に演奏できるということがプレッシャーになった部分もありましたね。

亀山 僕は年齢差みたいなのは気にしてなくて。長谷川くんと同様に、自分が憧れてきた、ずっと好きで聴いているプロのミュージシャンと一緒に演奏できるということに対して、大きな緊張がありました。

──お二人は現役大学生でもあります。学生生活との両立で大変な部分もあるのでは?

亀山 確かに、今はやらなきゃならないことがたくさんありまして。デビューライブのときも、前日が試験の最終日で、勉強の合間に練習もしなくてはいけない状況は大変でしたが、ステージで演奏をしている自分を想像していると楽しい気分になるし、両立を苦に感じることなかったですね。ただ、時間が足りないっていうだけで。

──お二人は、大学ではコンピュータやシステム工学を専攻されていらっしゃるようですが、その学習は音楽活動に生かされていますか?

長谷川 直接的にというのはあんまりないと思います。ただ、目に見えるものはなくても、考え方や音の構築のさせ方など、将来的に何かバンドの役に立てるものがあるのかなと思います。

長谷川雄一(Key)

長谷川雄一(Key)

T-SQUAREとして経験することのほぼすべてが初めて

──そして、このたびお二人が正式メンバーに加入し初となるアルバム「TURN THE PAGE!」が完成しました。

長谷川 T-SQUAREの一員となって曲作りをする、スタジオに入ってレコーディングをするなど、経験することのほぼすべてが初めてだったので、本当に大丈夫かな?という不安がありました。自分が制作した楽曲も、うまくいくのか心配ではあったのですが、完成までたどり着いて今はホッとしている心境です。

亀山 自分が制作した楽曲については、デモの状態から生演奏することで進化していく過程から、メンバーの皆さんの技術のすごさを感じました。僕はもともとキーボードやピアノを演奏していたので、その演奏にはこだわりがあって、長谷川くんに抽象的なリクエストすることも多かったのですが、彼もT-SQUAREが大好きなので、その要望を即座に理解してくれました。とても心強かったですね。

──ソングライティングにあたりこだわったことは? 坂東慧さんは、アルバム全体を通して足りないピースをお二人が埋めてくれたとおっしゃっていましたが。

亀山 おそらく、それは最後に制作した2曲目の「Marmalade!」だと思います。今回、僕は3曲のソングライティングをさせていただき、うち2曲は最初に作っていたもので、皆さんからは褒めていただいたのですが、これだけだと物足りない感じがしたというか。キャッチーな楽曲も制作したいという思いが強くなって、お願いして制作させてもらった楽曲です。アルバムにいい色付けができたのかなって思います。

亀山修哉(G)

亀山修哉(G)

──「Marmalade!」というタイトルも爽快で、曲の世界に合うタイトルですね。

亀山 タイトルに関しては、今回は朝や夜などの時間軸で決めていまして。この曲は、朝に車の中で流したら最高な気分になりそうだと思ったので、本当はその時間帯をタイトルにしようと考えたのですが、収録曲にすでに夜の時間を冠した「Plum Night Highway」があるから違うなと。それで朝食のイメージがあるマーマレードジャムが思い浮かんで、タイトルにしました。

初めてのレコーディングで得たもの

──亀山さんは、アルバムのラストに収録されたタイトルトラック「Legend of Poker ~Turn the Page~」も制作されていますね。

亀山 これは最初にバンドに提出した楽曲で、自分の思うT-SQUARE像を全面に表現しました。アルバムタイトルと楽曲のイメージが一番合うということで、表題曲になりました。

──「ここから、バンドの新たなページが開く」という勢いが伝わってくる楽曲ですよね。また、長谷川さんも2曲のソングライティングを担当されています。「Front Runner」は疾走感のある、往年のT-SQUAREを連想させる楽曲ですね。

長谷川 これもアルバム制作の最後の段階で作った楽曲です。T-SQUAREといえば「TRUTH」に代表される疾走感のある楽曲を思い浮かべるリスナーの方が多いと思ったので、そういう楽曲を作りたくて。これまでロックっぽい楽曲はキーボーディストではなく、ギタリストの方が制作している印象が強かったので、ちょっと違う視点からそれを描いてみるのも面白いのかなと思い完成させました。

──一方の「Memories of Spring」は、切ない風景が伝わる美しいメロディの楽曲ですね。

長谷川 僕は和泉宏隆さん(2021年に逝去)をはじめとする歴代のキーボーディストの方々の描く旋律がとても好きで。大きな影響を受けていて、特にバラード曲に心を奪われていた。なので、今回ソングライティングをさせていただくにあたり、絶対にバラードを制作させていただきたいと思ったんです。

──お二人の楽曲からは、バンドに対する深い愛やリスペクトを感じました。初めてアルバムを制作してみて、吸収するものが多かったのでは?

亀山 初めてのレコーディングだったので、得るものが多かったですね。当初はいかにパーフェクトな演奏をアルバムに収録できるかに重きを置いていたので、うまく演奏できなかった部分は納得がいくまで直したいと思っていました。ですが、逆にその“ミスと感じる部分”がいい味を生み出すということを、先輩方の姿から学ぶことができたというか。音源で完璧なものを閉じ込めても、それは必ずしもずっと聴ける音楽にはならない。作品で演奏しているものを、ライブでどう進化させ、表現するのか。作品と同じ表情をステージでもしっかり伝えるといった、バンドの強い姿勢を吸収することができたと思います。

長谷川 メンバーがそろうだけで自然に生まれる一体感。またリズムも、ベーシックが1、2回セッションしただけで固まっていく過程を体感できたことは大きな収穫になりました。改めてT-SQUAREのすごさを感じましたね。

歴史あるバンドでありながら、新しいことにも挑戦し続ける姿を届けられたら

──まもなくスタートするツアーでも、ミラクルなセッションが繰り広げられるのでは?

長谷川 ファンとして会場に足を運んでいたときは、バンドから大きなパワーをいただいたり、心を動かされる場面に何度も遭遇しました。今度は自分が演奏する側として、お客さんの皆さんにエネルギーというか、楽しんで帰っていただけるパフォーマンスをしたいと思います。

亀山 すでに多くのリスナーの方々から新曲に対して「懐かしい」とか「これぞT-SQUAREサウンド」などと評価いただき「またライブに行きたい」という声もいただいています。そういう方々や、初めて触れた皆さんにも、来てよかった、これからも応援しようと思っていただけるステージにしないといけないと思います。自分の思うT-SQUAREらしさを表現したい。

──今後は、T-SQUAREのメンバーとしてどんなことをしたいと思っていますか?

長谷川 歴史があるバンドでありながらも、自分たちが入ったことで新しいことにも挑戦し続ける姿を届けられたら。僕はT-SQUAREの音楽が大好きですが、それ以外の音楽からの影響も受けていて。そういうものもバンドサウンドに取り入れながら、T-SQUAREを進化させることができたらいいですね。

──同世代のリスナーには、どう響いてほしいと思いますか?

亀山 今回のアルバムは、T-SQUAREらしさやライブ感を追求した部分が大きかったんですけど、世の中の最近の曲を聴いていると、独特のビートがある。坂東さんは、そういう要素を本作に柔軟に取り入れられていて、すごいなと思いました。自分たちの同世代は演奏力よりも楽曲のインパクトを大切にする傾向があるので、今後はそういう感覚もうまく取り込むことができたらと思います。

──楽しみです。ちなみに、メンバーの皆さんとは音楽以外でどんなお話をされるのですか?

長谷川 やっぱり音楽の話題がほとんどで、楽器のこととかが多いですかね。それ以外でも、皆さん優しくて、面白くて、気さくに話しかけてくださるんで、楽しくやらせていただいてます。

亀山 僕にとって初の海外公演になった上海で、メンバーの皆さんと一緒にごはんを食べたり、コンビニに行ったり、普段日本ではできないようなことができて、仲が深まった感じがしました。そういう非日常的な場所で日常的な行動をともにすることで、関係がより深まるような気がしていて。可能な限り、このメンバーでいろんな地域や国へ行き、さまざまな経験をしたいですね。

公演情報

T-SQUARE CONCERT TOUR 2025「TURN THE PAGE!」

  • 2025年6月14日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2025年6月28日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2025年7月5日(土)東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
  • 2025年8月18日(月)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2025年8月20日(水)大分県 T.O.P.S Bitts HALL
  • 2025年8月21日(木)熊本県 くまもと森都心プラザホール
  • 2025年8月25日(月)北海道 cube garden
  • 2025年8月26日(火)青森県 FOREST BLUE
  • 2025年8月27日(水)岩手県 CLUB CHANGE WAVE

プロフィール

T-SQUARE(ティースクエア)

伊東たけし(Sax, NuRAD, Flute)、坂東慧(Dr)、田中晋吾(B)、長谷川雄一(Key)、亀山修哉(G)からなるインストゥルメンタルバンド。THE SQUARE名義で1976年に安藤正容(G)を中心に結成され、同年アルバム「LUCKY SUMMER LADY」でデビュー。1989年にT-SQUAREに改名した。1987年発表のアルバム「TRUTH」の表題曲はフジテレビ「F1グランプリ」のテーマ曲として有名。日本のみならず海外でも精力的に活動しており、アメリカや韓国など国外でも人気を得ている。2021年に安藤がバンドからの引退を発表し、当時のメンバーだった伊東と坂東はT-SQUARE alpha名義で活動を続行。そして2023年から新メンバーオーディションを開始し、このオーディションで選ばれた亀山と長谷川、長年サポートを務めてきた田中を加えて2025年4月に新生T-SQUAREが始動した。同年6月にアルバム「TURN THE PAGE!」をリリース。