音楽ナタリー Power Push - T-SQUARE
41枚目の新作完成、大ベテランが語るインストの魅力
歳の差があっても平等なのが音楽
──現メンバー内で最年少の坂東さんは、T-SQUAREの世界観や魅力についてはどんな印象を持っていますか?
坂東慧(Dr) 僕にとってT-SQUAREは憧れの存在でした。T-SQUAREは音楽的にキャッチーだし、楽器の魅力が詰まっているというか。僕はドラマーですが、過去のT-SQUAREの楽曲を聴いていると“ドラムなのに、こんなフレーズを出せるんだ”っていう発見があって。それでいて口ずさめるようなメロディも多く、楽器演奏者としては演奏しみたいと思うとっかかりになりやすかったというか、こういうバンドをやってみたいって思っていましたね。
──河野さんはいかがですか?
河野啓三(Key) 僕も坂東くんとまったく同じ意見ですね。
──坂東さんは、伊東さんや安藤さんとはかなり歳も離れていますが、そんなメンバー同士が一緒になって活動することに何か思うことや刺激を受けることはありますか?
伊東 僕と坂東は年齢的に30歳近く離れていますし、出会えたのは奇跡だと思っています。僕たちのようなバンドはメンバーから影響を受けたり、触発されて個々が変化する部分も大きいです。例えば、坂東と昔のT-SQUAREの曲を演奏すると、それまでとは何かが違うんです。たぶんその世代を生きた人間にしか出せない何かだと思ってはいますが、そういったものをスタジオやライブで平等に共有できるのは、インストに限らず音楽ならではだと思います。
──T-SQUAREは度重なるメンバーチェンジを経ていますが、伊東さん、安藤さん、坂東さん、河野さんという4人は、これまでT-SQUAREの歴史においても最長のラインナップです。長続きしている理由はなんだと思いますか?
安藤 昔からそんなにバランスが悪かったわけではないんですが、今の布陣は特にバランス感が優れていますね。あと、僕たちの場合はメンバーも含めて常に変化してきたからこそ、ここまでやってこれたんだと思っています。昔から僕だけじゃなくいろんなメンバーが曲を書いてきているし、それぞれの作曲者の生み出す曲もT-SQUAREの中で変化してきたので、それでリスナーの皆さんも飽きずにいられるのかもしれないですね。
──確かにインストバンドというのは、各メンバーがバンドに与える影響力がより強いですよね。
伊東 その中でも特にドラマーは、時代を象徴するものだと思っています。リズムを聴けばいつの時代の音楽かわかるほど、グルーヴ感は時代ごとに変化するものなので。だから今は坂東のリズムに触発されることが多いです。例えば坂東が叩くリズムにあわせてアドリブを取ることでいろんな発見があるんですよね。今のメンバーで言えば、河野に関しても、曲のセンスやプレイヤーとしてのテイストも、ほかのピアニストにはない音の響かせ方を持っています。そういう意味でもさっき安藤が言っていたように、今はうまくメンバーがそろっていると思いますね。
完成度の高いデモテープを作る理由
──「PARADISE」では、坂東さんが全9曲中の5曲を書いているそうですね。
坂東 僕がT-SQUAREに参加してからこのアルバムで10枚目になるのですが、いつにも増して曲作りやアレンジに力を入れたんです。だから5曲も採用されたのはうれしかったですね。ドラムに関してもいろんなグルーヴに挑戦することができました。ドラムとベースはアナログで録音したので太い音になっていますし、今までの作品の中でももっとも満足のいく仕上がりになったと思っています。
──作品を制作するにあたって、デモテープで選曲会議を行っているんですよね?
伊東 ええ。僕らのバンドのデモテープはそのまま作品として出せるくらい完成度が高いんですよ。
坂東 デモの段階で世界観を隅々まで詰め込みたいんですよね。
伊東 デモテープの内容を詰めていくことで“こういうふうにしたい”という意図がほかのメンバーに明確に伝わるんですよね。もしデモテープじゃなくて譜面だけなら、違う解釈の余地が入ってしまうし、最初から方向性がしっかり見えていたほうがデモをさらにいいものに膨らませやすくなるんです。
──できあがったデモのよし悪しはどういった部分で判断しますか?
伊東 メンバー間で民主的な意見を取ったのちは、プロデューサーに一任するという形をとっています。やはりミュージシャン同士ではまとめきれない部分もありますし、アルバムの制作はチームプレイでもあるので、これはよいシステムだと思っています。「PARADISE」は制作する前から“夏とリゾート”というテーマがあったので、各メンバーが“夏を感じる曲”を提案してきていたんです。夏の始まりや終わりを想像した曲であったり、少年時代の夏休みをイメージした曲だったりと、いろんな夏の情景が浮かぶ作品になったと思います。
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- ニューアルバム「PARADISE」2015年7月8日発売 [CD+DVD] 3700円 / T-SQUARE Music Entertainment / OLCH-10001 / Amazon.co.jp
- 「PARADISE」
CD収録曲
- Mystic Island
- Vivid
- Paradise
- Through The Thunderhead
- 彼女と麦わら帽子
- Eternal Glory
- Knock Me Out
- Night Cruise
- 夏の終わり
DVD収録内容
「一夜限りのFANTASTIC SQUARE@豊洲PIT」より
- First Impression
- Surfin' On The Sky
※Special Digest
- ライブBlu-ray / DVD「一夜限りのFANTASTIC SQUARE LIVE」2015年8月26日発売 / T-SQUARE Music Entertainment
- 「一夜限りのFANTASTIC SQUARE LIVE」
- [Blu-ray Disc] 9000円 / OLXL-70001 / Amazon.co.jp
- [DVD2枚組] 8000円 / OLBL-70001~2 / Amazon.co.jp
2015年5月26日に開催された「一夜限りのFANTASTIC SQUARE@豊洲PIT」の模様を完全収録。
T-SQUARE(ティースクエア)
1976年に安藤正容(G)を中心に結成されたインストゥルメンタルバンド。現在のメンバーは安藤、伊東たけし(Sax, EWI, Flute)、河野啓三(Key)、坂東慧(Dr)の4人。THE SQUARE名義で1978年に1stアルバム「LUCKY SUMMER LADY」でデビューし、翌1979年にT-SQUAREに改名した。1987年発表のアルバム「TRUTH」の表題曲はフジテレビ「F1グランプリ」のテーマ曲として有名。日本のみならず海外でも精力的に活動しており、アメリカや韓国など国外でも人気を得ている。2008年5月には旧メンバーも参加したスペシャルバンド・T-SQUARE SUPER BAND名義でデビュー30周年記念アルバム「Wonderful Days」をリリース。同年9月、東京・日比谷野外大音楽堂で「T-SQUARE 30th Anniversary Concert 2008 “野音であそぶ”T-SQUARE SUPER BAND THE SQUARE×T-SQUARE~since1978」を開催し、歴代メンバーが一堂に会してライブを行った。2013年4月にデビュー35周年記念アルバム「Smile」、翌2014年6月には通算40枚目のオリジナルアルバム「NEXT」を発表。2015年5月、東京・豊洲PITにてT-SQUAREとTHE SQUAREが登場する一夜限りの企画ライブ「T-SQUARE×THE SQUARE」を実施し、7月に41枚目の新作アルバム「PARADISE」をリリースした。同月に新作を携えてのライブハウスツアー、8月にはホールツアーを開催する。