TrySail|最新アルバム&3度目のライブツアーにあふれ出る、挑戦し続ける意思

「ハイスピ」「adrenaline!!!」に頼り続けていいのか?

──今回のツアーではメドレーも大きなポイントの1つですよね。なおかつ、そこに「High Free Spirits」や「adrenaline!!!」といった定番中の定番曲を組み込んでもいる。

夏川 私たちとしては、だいぶ大きな決断でした。

麻倉もも

麻倉 さっきお話ししたセトリ会議のときにやっぱり「あれも歌いたいし、これも歌いたい」という感じになって。でも、TrySailも曲が増えているので、定番曲を全部歌うとなると全然時間が足りないんですよ。

雨宮 しかも今回は「ニューアルバムの収録曲は全曲入れる」というのが前提として私たちの中にあったので。

──アルバムは全12曲入りですから、まず12枠が自動的に埋まることになりますね。

夏川 そこに3人のソロ曲と、ハモり曲の「コバルト」があって、あと日替わり曲も入れたいし……。

雨宮 そういうふうに考えると、どんどん枠がなくなっていったんです。「じゃあ、終盤の盛り上がり曲として何を入れる?」という話になったとき、果たして「ハイスピ」(「High Free Spirits」)や「adrenaline!!!」でいいのか……要は、単独ライブだけじゃなくてフェス系のイベントでもさんざんやってきているこの2曲に、このままずっと頼り続けていいのかと。

麻倉 「ハイスピ」も「adrenaline!!!」も盛り上がるだろうし、私たちも歌っていて楽しいんだけど「そろそろそこから抜け出さないとね」って。抜け出すことでまた新しい一面も見せられるし。

雨宮 それから「新曲もどんどん増えているのに、このままじゃほかの曲が育たないんじゃないか」という思いもあり、いろいろ総合すると「メドレーが一番いいね」ということになりました。

夏川 そのメドレーにする曲も3人で意見を出し合って決めて、結果かなり濃厚なメドレーになっているので、期待してもらいたいです。

“Try”の精神を忘れたくない

──ここからはニューアルバムについて伺います。本作の収録曲は既発のシングル曲も含めて新しい試みに満ちていますが、その中にあって1曲目でリード曲の「TryAgain」はド直球なTrySail的楽曲ですよね。

雨宮 希望的で、明るくて元気で、“Youthful”(若々しい)な感じ(TrySailのデビュー曲は「Youthful Dreamer」)。でも実は、最初は別の曲がリード曲だったんですよ。

麻倉 そう。だからリード曲を「TryAgain」に変えてもらうようにお願いしたんだよね。

雨宮 このアルバムでは今まで私たちが見せたことのない表情を見せているぶん、3人の中で「リード曲は思いっきりTrySailらしい曲がいいよね」という共通認識があったんです。それをスタッフさんにお伝えしました。

夏川 やっぱり私たち3人の関係性もTrySailを結成する前から……だから出会って6、7年経ってもあんまり変わってないし、これからもそれを大事にしていきたくて。ここで改めて「TrySailってこういうユニットですよ」というのを打ち出したかったんです。

──ある意味、原点回帰されているということになりますが、その中身は更新されていますよね。仮に「TryAgain」が2ndアルバムに収録されていたら、歌声にしろ歌詞にしろ、ここまでの説得力は出なかったのではないかと。

麻倉 うれしいです。TrySailは「なんでも“Try”していこう」というコンセプトで始まったユニットで、最初は当然やること全部が“Try”だったんです。でも、やっぱり活動を続けていくうちに「似たようなことを前にもやったな」というケースも出てきて。

──つまり、厳密には“Try”ではなくなっていくと。

麻倉 そうなったときでも“Try”の精神を忘れたくないし、「何回でも“Try”してやるぞ!」という気持ちを持ち続けたい。「TryAgain」はそうやって私たちを初心に立ち返らせてくれる曲でもあるんです。だから、歌詞の内容は「夢」に向かって歩き出す「君」を応援するというものなんですけど、レコーディングでは「君」だけでなく自分にも言い聞かせるように歌いました。

雨宮 私は、普段は曲の世界観に合わせて声色や歌い方をかなり作り込むんですけど、「TryAgain」に関してはまっすぐに、素の自分を出すような感じで歌いました。それで説得力が増しているとしたら、うれしいなと思います。

──1番Aメロの「大きくなきゃ夢じゃないでしょう?」は、雨宮さんご自身の言葉のようですもんね。

雨宮 2人にもそう言われました。「ここは歌い分けしたら絶対に天のパートだよね」って。

麻倉 もう、歌詞を見た瞬間に思ったよね。

夏川 あとBメロの「ブレることないその夢は」も。私、歌い分けの練習でも絶対にそこは間違えないもん。「ここの歌詞は天さん専用だから、私は歌ってはいけない」って覚えてるから(笑)。

雨宮 正直、自分らしい歌詞だから私もちゃんと歌い分けを覚えられている(笑)。

──夏川さんはどんな気持ちで歌われたんですか?

夏川 私もスタンダードな私の声を大事にしながら歌ったんですけど、この曲で一番伝えたいことってDメロの「迷っても 途切れても 何度でも歩き出せる」だと思っていて。タイトルの「TryAgain」が表しているように、何事も、何度も挑戦してよくないことなんてないはずなので、そういう心構えをこれからも大切にしていきたいという気持ちで歌いました。

──では、この「TryAgain」をライブで披露したときの感触は?

麻倉 幕張公演ではトロッコでみんなの近くまで行ってこの曲を歌ったんですけど、「TryAgain」には手で三角形を作る振り付けがあるんですよ。やっぱり三角形は私たちの象徴でもあるし、その三角形をみんなも一緒に作ってくれたから、ものすごく一体感があって。「TryAgain」はみんなで1つになれる曲なんだと思いました。

TrySail「LAWSON presents TrySail Live Tour 2019 "The TrySail Odyssey"」千葉・幕張イベントホール公演の様子。

夏川 この曲は先行してミュージックビデオを公開していたから認知度は高かったんですよ。それもあってか、初日から曲が流れた瞬間に「うおー!」って、まるで怒号のような歓声が上がっていたので「ああ、待っていてくれてたんだ!」ってうれしくなりました。

雨宮 そのMVで私たちはおそろいのツナギを着ているんですけど、ライブでもそれをリメイクしたようなツナギの衣装を着て歌ったんです。だからMV撮影のときの楽しさがよみがえってきて。ただ、撮影のときは3人だったけど、幕張では会場中のお客さんたちと一緒に「TryAgain」の空気を作っていくことができたので、楽しさが何百倍にも膨れ上がりました。

TrySailで「絶望」なんて歌ったことない

──収録曲順に沿うと、次に登場する新曲は4曲目の「Believe」。この曲は前情報なしで初披露したにもかかわらず、派手に盛り上がりましたね。

麻倉 盛り上がる曲ではあるんだろうなと思ってたんですけど、想像を超えていました。特に2日目はもう、すごかったです。客席が(サイリウムの)オレンジ色に光り輝いていました。

雨宮 びっくりするぐらい焚かれてたよね。

──「Believe」は言わば「ハイスピ」路線のラウドでストレートなロックナンバーですね。

雨宮 まさに、この「Believe」を「ハイスピ」くらいまで育て上げようっていうのが今回のツアーの目標の1つとしてあります。もう、その可能性が初日と2日目で……。

夏川 はっきり見えたよね。

──「Believe」は雨宮さんが好きそうな曲でもありますよね。

雨宮 まあ、そうですよね(笑)。マイナー調のドヤ顔カッコつけロックみたいな。

夏川 「Believe」は歌い上げるというか、歌い切れるような曲だから私たちも全力を出し切れる。しかも振りがいちいちカッコいいんですよ、中二病的な意味で(笑)。だから自分に酔えば酔うほど楽しい曲になっていくんです。

雨宮 言葉も強いからね。「絶望も知らずに強くなどなれない」という。

夏川 TrySailで「絶望」なんて歌ったことないもん(笑)。

麻倉 歌詞とカッコいい振りもリンクしてるよね。

斜に構えてスカして歌った

──続く「Take a step forward」も新曲ですが、個人的に、僕はアルバム収録曲の中でこの曲に最も目新しさを感じました。

雨宮 私もです。

麻倉夏川 うんうん。

──こういうソウル、R&Bテイストの曲をクールに歌うTrySailというのはちょっと想像できなかったので。

夏川 この曲は完全に私たちが今まで歌ってこなかったものだし、そもそも3人ともこういう曲調自体にあんまりなじみがなかったと思うので、レコーディングはかなり手探りなところがありましたね。私としてはまずリズムに集中して、このリズムと歌詞のハマり具合を逐一確認していくような感じで歌いました。

麻倉 私はリズムに乗るのが苦手なので、たぶんナンちゃん以上にリズムを意識していたと思います。そのうえで、ちょっとラフな感じも出したいなって。

雨宮 この曲のオケは、レコーディングの段階ではアルバムに収録されている状態よりも明るめの音が少なくて、より男っぽい印象だったんです。そこから、1人で佇む男の人がポケットに手を突っ込んで、斜に構えて足でリズムを刻んでいるイメージが浮かんで。なので私もレコーディングではポケットに手を突っ込みながら、とにかくスカす感じで歌いましたね。

麻倉夏川 あはは(笑)。

雨宮 当初は歌い分けが今より細かかったんですけど、そういうスカした印象があったので「そんなに割らないでください」と私たちで意見させていただいて。それで1人当たりの歌い分けがだいぶ長めになりました。

夏川 この曲はTrySailにとってホントに新しい曲なんですけど、刺さる人にはめっちゃ刺さるんじゃないかなって。なので、この先のツアーでのみんなの反応もすごく楽しみですね。

麻倉 私たちは「Take a step forward」のことをひらがなで「てかすて」って呼んでかわいがってるので、そう呼んであげてください。