戸松遥|楽しんで挑戦した、アーティストデビュー10周年記念シングル

馴染みのない歌を一生懸命歌っている姿

──カップリングの「グラデーション」はシャッフルビートのR&Bナンバーで、戸松さんとしてはかなり珍しいタイプの曲ですよね?

ですね。実はこの曲はもともと「COLORFUL GIFT」に入る予定だったんですけど、アルバム全体のバランスを考えた結果、泣く泣く候補から外した曲なんです。でも、ディレクターさんが「どうしても戸松に歌わせたい」と言ってくださって、私もこのままお蔵入りになるのはもったいないと思って温めていたんですよ。

──意外と早く出番が回ってきましたね。

そう(笑)。私もまだ先になると思っていたので「えっ、もう?」みたいな。ただ、私はこのシャッフルのリズムがものすごく苦手なんですよ。昔一度だけ「Rainbow」(2010年2月発売の1stアルバム「Rainbow Road」収録)というシャッフル曲を歌ったことがあるんですけど、そのときに私の歌の何がどうリズムとズレてるのか、ディレクションの意味が全然わからなくて。ある意味トラウマだったんです。

──と言うことは、こちらのレコーディングは……。

「TRY & JOY」とは対照的に、ホントに苦労しましたね。「グラデーション」のレコーディングの日は後ろに予定も入っていなかったので「今日は時間かかりますから、覚悟してくださいね」とスタッフさんたちに最初に言いましたし。で、ディレクターさんは私がこういう曲は苦手だとわかっているから「とりあえずまっさらな状態で歌ってみようか。練習なしのズブズブ感を楽しみにしてる」って(笑)。

──ドSですね(笑)。

案の定、全然うまく歌えなくて心が折れるという(笑)。でも、その直後に「こういう曲は慣れが重要だから」と言われて、まず苦手意識を捨てて、8年前のトラウマも忘れて、それこそポジティブに楽曲と向き合ってみたんです。実際、何回も練習する過程で、こういう曲は自分の体が一旦リズムに乗れればそのまま最後まで歌い切れるし、乗れた瞬間はすごく気持ちいいこともわかってきて。そしたら歌うのがどんどん楽しくなっていったんですよ。で、体がリズムに馴染んでくると、今度はニュアンスの付け方やどうすればより自分らしく歌えるかを考えるようになって。

──下ごしらえはできたから。

あとはどんな調味料を使って味付けをするか。最終的に「グラデーション」はブロックごとに録っていくとニュアンスや空気感がちぐはぐになっちゃうから、頭からお尻までツルッと録ることになって。私のレコーディングでは珍しいんですけど、途中で声が裏返ろうがかすれようが気にせず、流れを重視して歌いました。

──非常にリラックスした歌声ですよね。

口ずさむように、独り言の延長のような感じで歌ったほうが映える曲なんだなって、途中で気付いたんです。逆に「歌います!」って力んで歌うと台無しになっちゃうんですよ。そういう発見もたくさんありましたね。

──ところで、ディレクターさんはなぜこの曲を戸松さんに歌わせたかったのでしょう?

それ、私もレコーディングが終わったあとに聞いたんです。そしたら「戸松って、こういう曲を歌うイメージが全然ないじゃん」って(笑)。

──すみません、ディレクターさんに同意します(笑)。

皆さんきっとそうですよね(笑)。でも、ディレクターさんは「それがいいんだよ」と。「馴染みのない、決して得意じゃないジャンルの歌を、戸松遥として一生懸命歌っている姿に魅力を感じるから」と言ってくださって。ちょっと恥ずかしかったんですけど、なるほどなと。もしかしたらシャッフルに不慣れで不器用な私だからこそ、うまく歌える人には出せない絶妙なグルーヴみたいなものがあるかもしれない。それを「どや、私にしかできない表現やぞ」とプラスに捉えることが大事なのかもなって。だからカップリング曲も表題曲に負けず劣らず大きな“TRY”であり、“JOY”も満載だった。そういう1枚になりましたね。

──パッケージとしても非常にバランスのいい2曲ですよね。

はい。曲調もそうですけど、歌詞も好対照と言うか。どちらも未来に向かっていくようなポジティブな歌なんですけど、そのスピード感がまったく違っていて、ウサギとカメみたいなんですよね。つまり「TRY & JOY」はウサギで、ピューンって走って行ってそのまま見えなくなっちゃう。一方「グラデーション」はカメのようにマイペースで、肩の力を抜いて一歩一歩ゆっくり進んでいく感じ。だからある意味、「グラデーション」がアルバムの候補曲から漏れてよかったなと思いました。要するに、この曲は「TRY & JOY」のカップリングになるために生まれてきた曲だったんですよ(笑)。そういう縁を感じましたね。

戸松遥

溜め込んだスフィアへの思いがぶわって吹き出すんだろうな

──冒頭で少し触れられた通り戸松さんは現在ツアー中で、地元愛知県のZepp Nagoyaでの2DAYSを終えたところですが(本インタビューは8月上旬に行われた)、その手応えは?

手応えは、手前味噌なんですけど、すごくありますね。今回のツアーは、前々からご一緒したいと思っていた演出家さんに演出をお願いすることができたんです。今までと演出が変わったことで、もはや定番になっていた曲たちが「あらやだ、そんな表情もできたの?」って思うくらいリニューアルされています。ビジュアル面でも、現代のテクノロジーを駆使した「それ、どうやってるの?」みたいな演出や、音楽と映像のコラボレーションがあったり見どころ満載です。ただ、愛知、大阪、東京のZepp公演と、ファイナルの東京・中野サンプラザホールの2DAYSとでは、ちょっと演出が変わるんです。

──ライブハウスとホールで、会場のつくりが違いますからね。

そうなんですよ。残念ながらホールではZeppの仕様をそのまま適用できないので。でも、何がどう変わるかは内緒なんですけど、中野は中野で見ていただきたいポイントがたくさんあるんですよ。なので、Zepp公演をご覧になった方もそうでない方も本気で楽しみにしてくださって大丈夫ですと、自信を持って言い切れます。

──今回はニューアルバム「COLORFUL GIFT」を引っさげてのツアーでもありますが、アルバム収録曲にして初のタオル曲である「Boom Boom Typhoon!」は披露されました?

披露しました! 名古屋はちょうど台風が直撃していたのでどうしようか迷ったんですけど……。

──そういえば……。

結果的に、お客さんも大盛り上がりで、歌ってよかったです。おっしゃる通り「Boom Boom Typhoon!」は初のタオル曲なので、ステージから見える景色がまるで違っていて、私のライブじゃないみたい。みんなで汗をかきながらタオルを振り回す、自分が思っていた以上に夏にぴったりの曲になりましたね。生まれ変わった既存曲と共に、アルバムの新曲たちもライブで力を発揮しているので期待していてください。

──最後に、スフィアが2019年2月に千葉・舞浜アンフィシアターにて10周年スタートライブを開催することが先日発表されましたね。

そうなんです。来年はスフィアが10周年です。去年の11月にスフィアが音楽活動の充電期間に入ってからまだ1年も経っていないのに、正直「随分長いことスフィアとして歌ってないなあ」という感覚もあって。それは今年が自分のソロ活動に専念する1年になっているからでもあると思うんですけど、来年2月には、その溜め込んだスフィアへの思いがぶわって吹き出すんだろうなって。

──楽しみにしています。

そんな自分の思いよりも何よりも、再始動のお知らせをしたときのお客さんの反応がすごくうれしくて。Webラジオの生放送で発表したので、みんながスフィアを待っていてくれてるんだというのがダイレクトに伝わってきたんです。なので、スフィアでも思い切り楽しんでいる姿をお見せします。

戸松遥「TRY & JOY」
2018年9月5日発売 / ミュージックレイン
戸松遥「TRY & JOY」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1850円 / SMCL-557~8

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戸松遥「TRY & JOY」通常盤

通常盤 [CD]
1340円 / SMCL-559

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CD収録曲
  1. TRY & JOY
  2. グラデーション
  3. TRY & JOY(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • TRY & JOY Music Clip
  • TRY & JOY TV SPOT 15sec+30sec
ツアー情報
「LAWSON presents 戸松遥 5th Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」
(※終了分は割愛)
  • 2018年9月8日(土) 東京都 中野サンプラザホール
  • 2018年9月9日(日) 東京都 中野サンプラザホール
戸松遥(トマツハルカ)
1990年2月4日、愛知県生まれの声優アーティスト。2005年10月に行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格をきっかけに声優としての活動をスタート。2008年9月にはシングル「naissance」でソロアーティストとしての活動を始め、2009年2月には同じミュージックレインに所属する寿美菜子、高垣彩陽、豊崎愛生とともに声優ユニット・スフィアを結成した。以降はソロとスフィアを並行して精力的に活動し、CDリリースとライブを重ねる。2016年6月には初のベストアルバム「戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-」「戸松遥 BEST SELECTION -starlight-」を2枚同時にリリース。同年8月よりベストアルバムを携えてのライブツアー「LAWSON presents 戸松遥 BEST LIVE TOUR 2016~SunQ&ホシセカイ~」を行った。2018年5月に約3年2カ月ぶりのオリジナルアルバム「COLORFUL GIFT」をリリースする。本作を携えて、7月より東京・中野サンプラザホール2DAYSをファイナルとしたライブツアー「LAWSON presents 戸松遥 5th Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」を開催。9月5日にシングル「TRY & JOY」をリリースする。