音楽ナタリー Power Push - トゥライ

20のQ&Aから見えてくる「ブラックボックス」の中身

トゥライとしての活動編

今回のアルバムは自分自身のすべてをさらけ出すことをコンセプトにした作品なんです。僕の内面を歌詞や音楽で表現しておきながら姿が見えないとコンセプトとして成り立たないと思ったので、アルバムを作りたいと思ったときに包み隠さず全部出すことは決めていました。今でも人前に出ることは苦手なんですけど、やりたいことと自分が向いているかどうかが違うこともあるので。もしかしたら向いてないのかもしれないと自覚はしつつも、トゥライとしてアルバムを発表することにしました。

トゥライ

音楽自体を辞めたいと思ったことはあまりないんですけど、人前に出て音楽をやることや、曲を外に向けて発表することをやめたいと思ったことはあります。そのとき、僕は音楽だけをずーっとやりたいのに、続けていくためには音楽以外のさまざまな大変なことをこなさなくてはいけなくて。音楽の周辺にあることを全部自分でやろうとしたら結局パンクして、自分自身が納得できる音楽がまったく作れなくなってしまったんです。「音楽と音楽以外の仕事を全部自分でやるのは無理なんだ」って気付いたとき、もう全部やめて、リセットしてしまいたいと思ったことはありましたね。

作り続けないことかな。行き詰まりを感じているときは感情をリセットするために、例えば散歩をしたり、ゲームをしたり、マンガを読んだりして気分転換することにしています。音楽のことを一瞬忘れるのが、解決のコツです。

音楽をやっていない、ふとした瞬間ですね。なぜか水回りに関することをしている時に多くて、風呂、洗いもの中、洗濯中にメロディが降りてくることが多いです。歌詞に関しては基本的に「作ろう!」と思わないと作らないですが、頭の中で考えていることで面白い表現があればそれはスマホにメモしておいて、あとから素材的に使います。

「ブラックボックス」編

1曲に絞るのがすごく難しいんですが、あえて挙げるなら「もうひとりの僕へ」です。アルバムの最後を飾る曲なんですが、この曲が完成したのが2年半くらい前のことで。「この曲が世に出たらいいなあ」っていう思いをずーっと抱き続けて過ごしてきました。

トゥライ

ほかのアーティストさんに楽曲を提供するとき、僕はその人のキャラクターを見つつ「彼、彼女だったらこういうふうに考えてるかも」と想像しながら詞を書くんです。今まで数多くの提供曲を書いてきましたが、これらの3曲は自分の気持ちに置き換えても一切違和感がない曲だったのでアルバムの収録曲にしました。

自分自身を音楽にすることは怖くないんですけど、それを世に出すことは怖いです。自分をすべてさらけ出すことで、いろんな反応があると思いますから。それは楽しみでもあるんですけど、同時に怖さも同じくらい感じています。

提供曲のときは「こういうジャンルのものを歌ってくれたら面白そうだな」「この音域が得意かな」などを考えながら作るんですけど、自分で歌う曲を書くときはそういう意識しないことが一番違う部分ですね。歌詞についても提供曲ならボーカリストのキャラクターを想像して書きますし、自分の曲の場合は僕が感じていることをダーッと吐き出す感じなので。どちらも違った大変さがありますが、もしかしたら提供曲のほうが楽しみながら作っているかもしれません。それと曲、詞、歌の中で一番難しかったのは歌ですね。曲や詞はある程度安定して生み出せるんですけど、歌は体調が関わってくるのと「今日、調子いいかも」と思ったのに声が出なかったり、自分の予測がつかないというのが難しいんです。

メジャーデビューアルバム「ブラックボックス」 / 2015年11月11日発売 / Being
初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / JBCZ-9021
通常盤 [CD] 2800円 / JBCZ-9022
CD収録曲
  1. ブラックボックス
  2. 求めた忘却
  3. 全心麻酔
  4. ハルノハテ
  5. アイ
  6. パンドラ
  7. 数センチの隙間
  8. チョコレート・ホリック
  9. スプーンと波紋
  10. もうひとりの僕へ
  11. magnet-repeat over again-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ブラックボックス」MUSIC VIDEO
  • メイキング
トゥライ
トゥライ

男性シンガー、サウンドプロデューサー。2008年よりminatoとしてVOCALOIDを使用した楽曲をニコニコ動画に投稿。このほかトゥライとして“歌ってみた”動画を投稿していた。2010年にボーカリストとしての活動を停止し、サウンドプロデュースや楽曲提供の仕事に活動の軸足を移す。2015年11月にアルバム「ブラック・ボックス」をリリースしメジャーデビュー。2016年からは自身がサウンドプロデュースを手掛けるVALSHEとのユニット・ViCTiMに、minatoとして参加することを発表している。