"LIVE with YOU"~TOKYO SKA JAM 9+~ 東京スカパラダイスオーケストラ茂木欣一、加藤隆志×ACIDMAN大木伸夫|熱きライブセッションで示す“僕らが音を出す理由”

ここに接点があったか!

──ちなみに、ACIDMANがトリビュート盤で「追憶のライラック」を選んだのはどういった理由からだったんですか?

加藤 ああ、それ聞きたい。

大木 「追憶のライラック」、すごい好きなんですよ。歌っている永積(タカシ)さんの声も大好きだし。歌詞に出てくるのはダメ男で、僕が普段書いたり歌ったりするものとはまったく違うんですけど、あの大人っぽいメロディと雰囲気と……いつものスカパラに増して、ジャジーでメロウなものが宿っているところがよくて。もう1曲、「サファイアの星」もやりたかったんです。だけどこちらはすでに押さえられていたから「俺たちは『ライラック』をやる」と手を挙げさせてもらいました。

加藤 ACIDMANとスカパラって、音楽的にどういう接点で絡んでいけばいいんだろう?という思いが、これまでずっと自分の中にあったんです。「ここに接点があったか!」というのは、トリビュートアルバムに参加してもらったからこそ気付けた部分ですね。ちなみに、大木くんが挙げた2曲って、どちらも沖(祐市)さんの曲なんですよ。大木くんは沖さんとすっごい話が合うと思う。沖さんの持ってるコード感とか世界観に共鳴する部分があるんだと思います。

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ / G)

大木 ああ、そうなんですね! 宇宙好きの沖さん。

加藤 スカパラは9人それぞれが曲を書くし、多面的な魅力があると思うしね。

大木 そう、そこもスカパラのすごさですよね。それこそ世界的に見てもなかなかないというか。そもそもスカというジャンルを、ほとんどの日本人はスカパラでしか知らないと思うんですよ。それくらい圧倒的で不動の存在として30年間トップを走り続けていて。こんな奇跡のバンド、冷静に考えるとちょっと引きますよね。

──そんなスカパラの真ん中で歌う感覚というのは、改めてどのようなものだったんでしょう。

大木 もう、本当にありがたかったですね。「やってやろう、がんばるぜ」という思いよりも、ただただ感謝。「贅沢だよ、これは特別なことなんだよ、神様ありがとう」みたいな感じで。

茂木加藤 いやいや(笑)。

大木 だから僕、「追憶のライラック」に関しては歌詞を完璧に覚えて臨みました。普段は覚えるの苦手なんですけど、今回はカンペを見ずに歌いたくて。

茂木 1回も見なかったよね。すっごい覚えてる。

加藤 それもあってか、僕ら自身もすごくしっくりきたというか。すごく自然に1人メンバーが増えたな、という感じの演奏ができました。心地よかったし、任せられる。

茂木 必然性を感じたよね。

大木 ありがたい……ここも載せておいてください(笑)。あとはあれですね、最後にフェイクを。あれを先輩たちの圧力によってやりました。

茂木加藤 あはははは!(笑)

大木 みんな優しい顔して「大木やらないの? やらないの?」と。普段やらないし「そんなんできるわけないじゃん」って、もう脇汗ビッショビショになりながら(笑)。でも、そうやって普段やらないことを経験させてもらえて、違う自分を発見できたのも楽しかったですね。

心で歌うことが何よりも大事だと気付いた

加藤 ちなみに、大木くんがボーカリストとして影響を受けた人って誰なの?

大木 影響を受けた人っていうのはいないですね。でも「憧れ」という部分で言うと、細美(武士)くんかな。仲間だけど、世界で一番好きな声だし、いつも感動してしまいますね。僕はギタリストになりたかったから、自分がボーカリストだっていう発想も自信もなくて。ホントここ数年ですよ、小林武史さんがボーカリストとして声をかけてくれるようになって、そこで初めて自信を持てたくらいの感じ。

加藤 そうなんだ。歌唱の方法も自分で模索しながら作っていったってことだもんね? それはすごいですよ。ここ最近よく思うことなんだけど、去年は“歌の年”だったなあと。ライブやフェスが中止になって、バンドのグルーヴを世の中に提示できる機会がなくなって何が残ったかというと、SNSなどで発信される歌の力だったじゃないですか。YouTubeチャンネルの「THE FIRST TAKE」とかもそう。世の中の人は歌を求めているんだなとすごく思いました。それに、技術の問題じゃなく、歌い手が曲に宿す説得力みたいなものが、今はクローズアップされる時代なのかなとも感じました。歌声には、歌う人そのものが出ますね。

大木 本当に出ますね。僕もインディーズ時代にはいろんな歌い方を模索していたんですけど、いざそれを聴くと全部嘘に聞こえてしまっていたんです。でもそこから数年経って、心で歌うことが何よりも大事だと気付いた。「ここをうまく出そう」みたいな考えって絶対にバレるし、この言葉、この気持ちを自分が本当に歌いたいという思いがないと、絶対に響かないと思う。それは未だに思い続けていることですね。加藤さんがおっしゃるように、去年は自分が歌に向き合い続けてきたことが本当によかったと思えた年でした。ダイブさせること、合唱させることだけじゃなく、歌を伝えることを僕はすごく大事に思っていたから。言葉と感情と目に見えない世界のことは、これからも永遠に信じ続けると思います。

加藤 面白い話だなあ。でもすごい納得する。ACIDMANの音楽が何万人をも魅了するエンタテインメントになっているカギは、実はそこにあるのかもしれないね。

茂木 素晴らしいね。これは、読んだ人はめちゃめちゃ心動かされると思うなあ。

左から大木伸夫(ACIDMAN / Vo, G)、加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ / G)、茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ / Dr)。

音楽と関係ない話が音楽的核心をつくことも多い

──ここからは、番組のもう1本の柱であるトークパートについて聞かせてください。

茂木 大木くん、ものすごくオープンでいてくれたよね。心を全開にしてしゃべってくれてる感じがホントうれしかった。

大木 放送観て反省しましたよ。やりすぎた。

茂木 反省とかするんだ?(笑)

大木 しますよ! というか、トークについての反省はデビュー以来20年、ずーっとしてます。「またしゃべってしまった。もっと寡黙でクールなほうが……」って。

茂木加藤 あはははは!(笑)

──トークパートでは茂木さんがMCの役割を担当されていますが、心がけていることなどはありますか?

茂木 好きな仲間たちとお酒を飲んでいるときのようなムードを作れたらいいな、という感じかな。聞きたいなと思ったことをフランクに聞いて、普段見られないような顔を何気なく引き出せたらいいなと思っています。僕はもともとラジオをやっていたので、ゲストを迎えたときにはそういう経験が生かせたらいいなと。

大木 これも当たり前のことかもしれないけど、欣ちゃんの仕切りがうまいなあと思いました。で、加藤さんもフォロー役がすごく上手で、加藤さんが話題を振り分けて全員に話が回る。さすがだなあと思って見ていました。

加藤 スカパラはいろんなキャラクターの人がいるんでね。

──大木さんが語る話題によって、受け止めるメンバーが変わるのが面白いなと思いました。アニメの話だったら大森(はじめ)さん、とか。

加藤 そうそう。みんな掘り下げて、話したくて仕方ないからね。でもホント、みんな喜んでたよ。“ゲストに聞いてみたい10のこと”の項目はスペシャさんが作ってくれるんですけど、あれも面白いですよね。「お風呂で最初にどこを洗う?」みたいな、まったく音楽と関係ない話が出てきたり(笑)。

茂木 音楽と関係ない話が、その人の音楽的核心をつくことも多いんですよね。音楽的じゃない質問をしたときのほうが、相手が「思いがけず言ってしまった!」となることがけっこうあります。だから、何気ない話をしながら「なんかいつもより深い部分を語ってくれたよね、今回」となるのがいいなと思っていて。場の空気も柔らかくなるしね。

茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ / Dr)

──そのほか、「TOKYO SKA JAM 9+」にはスカパラメンバーによるミニコーナーなどもあって。

茂木 あはは、いろいろやりましたねえ。

加藤 川上(つよし)さんと谷中(敦)さんの5番勝負とかね。クイズとかゲームとかやるとだいたい谷中さんがムキになるので、それ見てるだけでも面白いんですよ(笑)。僕は「弾いてみた」をずっとやってみたかったので、LOUDNESSの「CRAZY DOCTOR」をコピーしました。速弾きやったことないのに。

大木 いいじゃないですか、聴きたい。僕もLOUDNESSめっちゃ好きで、学生時代にコピーしてましたよ。

加藤 ミニコーナーのために1カ月くらい練習しましたから(笑)。

茂木 あとはアレだね、GAMOさんクイズ。「GAMOさんが描いた絵はどれでしょう?」とかね。

加藤 GAMOさんって、これだけ長年付き合っていても謎なんですよ。なので、GAMOさんを解き明かすクイズをやりました。メンバー同士で(笑)。

茂木 もうめちゃくちゃだよ(笑)。

大木 あははは、観てみよう。