がんばらないと成し遂げられないものがクロスオーバー
──クロスオーバーすることは音楽をよりよくしていくために必要なことなんでしょうか?
岸本 もともとfoxを始めたのは、コンテンポラリージャズとそれ以外の音楽をミックスさせてクロスオーバーさせるというコンセプトがあったからなんです。今までいろいろな人たちとフィーチャリングとかコラボをしてきたんですけど、逆にクロスオーバーがなかったら行き詰まっていたんじゃないかなと思いますね。
mabanua 音楽の現場で「僕らはクロスオーバーしました」って素敵じゃないですか。ただ実際に作ってみたらうまくいかなかったとか、クロスオーバーできなかったということも実は裏ではけっこうあって。ミュージシャンとして自分1人でジャッジをして曲をリリースしていく楽しさはあるし、気楽でもあるんですけど、どうしても煮詰まっていく瞬間がある。それを解決できるのがクロスオーバーという手法だと思うんです。リスクも伴うけれど、きちんとクロスオーバーできた瞬間は何倍にもなって可能性が広がるんです。アーティストからすると安易な手法ではなく、がんばらないと成し遂げられないものがクロスオーバーという感じです。
──そういう意味でいうと、mabanuaさん自身が誰よりもドキドキしているかもしれないですね。
mabanua もしかしたらHanahちゃんと太一くんが突然ケンカを始めるかもしれないし(笑)。まあ、それは冗談ですけど、このイベントならではのドキドキワクワクはありますね。
──こうして並べてみると、1日目と2日目でだいぶ色が違いますね。
mabanua お客さんの服装から違いそうですよね(笑)。僕の日は黒とか白のモノトーンな服装が多い気がするけど、1日目のほうはカラフルな感じがする。
岸本 初日の「X-Planation」はジャズのブラックミュージック感を日本らしくなじませた感じがすごくする。2日目はもうちょっとジャズの玄人というか、R&Bとかのブラックミュージックな印象ですね。
「待ってました!」って感じの面子
──8月30日~9月1日の3日間は「第18回 東京JAZZ」が開催されます。この出演者ラインナップをご覧になっていかがですか?
mabanua 僕はSnarky Puppyのボビー・スパークス(Key)が大好きで。彼は初期のRH factorのレコーディングとライブに参加していたんですけど、僕はいつも後ろのミュージシャンに注目してしまうんです。チャールス・ロイドのバックバンドでドラムを演奏しているエリック・ハーランドや、マーク・ジュリアナがドラムで参加するアヴィシャイ・コーエンのライブも要チェックです。アヴィシャイ・コーエンが好きなのも、チック・コリアがアヴィシャイ・コーエンと、ジェフ・バラードがドラムのトリオで……。
岸本 ああ! Chick Corea New Trio。
mabanua そうそう! 10年ぐらい前に大好きになって。アヴィシャイ・コーエンとチック・コリアが2人そろって来日するというのもグッときますよね。
岸本 もともとアヴィシャイ・コーエンはチック・コリアのオリジンで注目されたからね。
mabanua チック・コリアがいなければ、アヴィシャイ・コーエンは「東京JAZZ」に出ていないかもしれないですね。
岸本 今回のラインナップ、それぞれの組み合わせが関連性を持っているなと思います。公演ごとにカラーがちゃんと出ているのが素晴らしいです。
mabanua ミシェル・ンデゲオチェロは毎回「この人どこにいたんだろう?」というアーティストを連れて来るんですよ。ドラマー界隈で話題になったディーントニ・パークスというドラマーがいるんですが、それもミシェルがいきなり連れて来たんです。チックもそうですけど、ミシェルも無名のとんでもない人たちをフックアップするアンテナがすごい。The Chick Corea Akoustic Bandとかはもう「待ってました!」って感じの面子なので、両方観られたら対比になって面白いと思います。カマシ・ワシントンのバンドに父親のリッキー・ワシントンがいるのもすごいですよね。ソロのライブではなくてロナルド・ブルーナー・ジュニアも来るんですよね。ツインドラムなんですけど、ロナルド・ブルーナーってThundercatの兄貴なんですよ。カマシ・ワシントンのライブで、ロナルド・ブルーナーがいないときが続くくらい、今引っ張りだこで。
岸本 (井上)司(fox capture plan / Dr)もすごくいいって言ってました。リーダーアルバムを聴かせてもらったんですけど、すごくよかった。
mabanua 戦車みたいなドラムですよね。もう勝てないって感じ(笑)。体格も手数もすべてがどのドラマーよりも圧倒的。デニス・チェンバースを筋トレさせまくったみたいな感じですよね。
岸本 デニチェン以上の戦闘力(笑)。
mabanua あと、ケヤキ並木のthe PLAZAで、業界内ではすでに大人気ですが、モミーFUNK!が出るのは衝撃でした。こういうバンドを無料で観られるのもいいですね。
日本から海外に名前を響きわたらせたい
──「東京JAZZ」に出ているミュージシャンたちが盛り上がることは、日本のアーティストに対する何かしらのフィードバックを起こすと思いますか?
岸本 海外で活躍する著名なジャズミュージシャンが東京に一堂に会すのは1年でこの1回だけなので、間近で観られるチャンスですよね。世界を知ると音楽に対する取り組み方が変わってくるので、知ることは大事だと思います。どういう音楽を目指しているのかにもよりますけど、例えば自分の場合だとブラッド・メルドーとか、コーリー・ヘンリーとかと自分が同じことをできると思わないけど、彼らの演奏や音楽を知って音楽をやるのと、知らないままやっているのでは意識が全然違うと思う。
mabanua プレイヤーに限らず、日本人ってどうしても海外のシーンに影響を受けやすくて。そういう意味では今回のメンツって、めちゃくちゃ影響力があると思うんですよ。今をときめく人もいれば、レジェンドもいる。それに加えて黒田さんとかBIGYUKIさんとか逆輸入的に憧れる海外のシーンから来た日本人という目線で、憧れのきっかけになるかなと思いますね。BIGYUKIさんがA Tribe Called QuestとJ・コールのアルバムに参加しているというのが個人的には一大ニュースなんですよ。J・コールってUSのシーンの中で言ったら、すごいチャートの上にいるような人で、そこに参加できる日本人がいたってすごいこと。ジャズでいうと海外のレジェンドとの共演はそんなに目新しくないですけど、USチャートの上位のアーティストに鍵盤を頼まれるなんてあまりなかった気がするので。「Tokyo Jazz X 2」も、そういういろいろなことが生まれる場所になればいいなと思います。
岸本 海外のすごいミュージシャンの話をしていますけど、そういう意味では自分も日本から海外に名前を響きわたらせたいですね。それぐらいの気持ちでやりたいなと思っています。
Tokyo Jazz X 2
- 2019年8月31日(土)東京都 WWW / WWW X OPEN 15:00 / START 16:00<出演者> fox capture plan / SANABAGUN. / jizue / 土岐麻子 / グッドラックヘイワ / SALIOU(オープニングアクト)
- 2019年9月1日(日)東京都 WWW / WWW X OPEN 15:00 / START 16:00<出演者> Ovall / 向井太一 / PYRAMID×Hanah Spring / STUTS / starRo
第18回 東京JAZZ
- the Hall
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- 2019年8月31日(土)東京都 NHKホール [昼の部]OPEN 11:30 / START 12:30<出演者> MISIA×黒田卓也(コーリー・キング、クレイグ・ヒル、大林武司、ラシャーン・カーター、トモ・カンノ) / ミシェル・ンデゲオチェロ(クリス・ブルース、エイブ・ラウンズ、ジェビン・ブルーニ) [夜の部]OPEN 17:00 / START 18:00<出演者> The Chick Corea Akoustic Band with ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル / Avishai Cohen Trio featuring マーク・ジュリアナ and エルチン・シリノフ
- 2019年9月1日(日)東京都 NHKホール [昼の部]OPEN 11:30 / START 12:30<出演者> チャールス・ロイド "Kindred Spirits" featuring ジュリアン・ラージ、ジェラルド・クレイトン、ルーベン・ロジャース and エリック・ハーランド / カマシ・ワシントン(リッキー・ワシントン、ライアン・ポーター、BIGYUKI、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、トニー・オースティン、マイルス・モズレー、パトリス・クイン) [夜の部]OPEN 17:00 / START 18:00<出演者> The Chick Corea Elektric Band with フランク・ギャンバレ、エリック・マリエンサル、ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル / Snarky Puppy(マイケル・リーグ、マルセロ・ウォロースキ、ボブ・ランゼッティ、ビル・ローレンス、ボビー・スパークス、ジャスティン・スタントン、ジェイムソン・ロス、クリス・ブロック、マイク"Maz"マーハー)
- the Plaza
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- 2019年8月30日(金)東京都 代々木公園ケヤキ並木 <出演者> Hanah Spring / Z EXPRESS BIG BAND
- 2019年8月31日(土)東京都 代々木公園ケヤキ並木 <出演者> Kie Katagi / bohemianvoodoo / マーティー・ホロウベック with SMTK / Laurent Coulondre / Jeff Herr Corporation
- 2019年9月1日(日)東京都 代々木公園ケヤキ並木 <出演者> 青山学院大学Royal Sounds Jazz Orchestra / Eiko + Eriko / Afro Begue / Maris Briezkalns Quintet / Gentle Forest 5 & Gentle Forest Sisters / Wojtek Mazolewski Quintet / Andrew Lim Trio / モミーFUNK!
- fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
- 岸本亮(Piano / JABBERLOOP / POLYPLUS)、カワイヒデヒロ(B)、井上司(Dr)からなるバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成した。“現代版ジャズロック”をコンセプトとしたサウンドで話題を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」はフロアデイリーチャート1位を記録する。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリース。2015年は「fox capture planとして3枚のアルバムをリリースする」と宣言し、4月にミニアルバム+ライブDVD作品「UNDERGROUND」、7月にカバーアルバム「COVERMIND」、11月にオリジナルアルバム「BUTTERFLY」を発表した。2017年にTBS系ドラマ「カルテット」、2018年4月にフジテレビ系月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」、同年7月にフジテレビ系「健康で文化的な最低限度の生活」の劇伴を担当。2019年5月には初の配信シングル「夜間航路」をリリースした。
- fox capture plan
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- fox capture planの記事まとめ
- fox capture plan「夜間航路」
- 2019年5月22日配信開始 / Playwright
- mabanua(マバヌア)
- バンドOvallのドラマーをはじめ、プロデューサー、シンガーとしても活躍するアーティスト。Ovallの活動と並行して2008年にソロ活動をスタートし、11月に初のソロアルバム「done already」をリリースした。2012年に発表した2ndソロアルバム「only the facts」はiTunes Storeのダウンロードランキングで1位を獲得するなどロングヒットを記録。またChara、Gotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、矢野顕子、くるり、RHYMESTER、米津玄師、藤原さくら、Negiccoなどのプロデューサー、ドラマー、リミキサーを担うほか、CM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も多数担当する。2018年にはテレビアニメ「メガロボクス」の劇伴を手がけ、6月にオリジナルサウンドトラックも発売。同年8月には前作から約6年ぶりとなるアルバム「Blurred」を発表した。
- mabanua「Call on Me feat. Chara」
- 2019年6月14日配信開始 / origami PRODUCTIONS
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