ナタリー PowerPush - 特撮
「ヌイグルマーZ」原作者が主演女優と歌う異色映画音楽の作り方
「Flash Gordon」でいけば大丈夫
大槻 あと映画やアニメと特撮のコラボの話をするとね、僕だけなのかもしれないんだけど、まずQueenの「Flash Gordon」をイメージするんですよ。80年代当時大人気だったQueenがSFヒロイックファンタジー映画の「フラッシュ・ゴードン」のサウンドトラックをやるってなったとき、みんな「えっ、どんなのやるの!?」ってなったんですよ。で、出てきたのがあのアルバムだったからホンットに驚いた。
──いわゆる「名盤」の1つですよね。
大槻 うん。サントラとしても当然素晴らしいし、Queenのアルバムとしてもちゃんと楽しめるんですよ。だから僕はコラボは「Flash Gordon」でいけば大丈夫だと思ってる。あと「小さな恋のメロディ」っていう映画ではBee Geesの曲が全編に使われてるんだけど、そのサントラってコンセプトアルバムとして完璧なんですよ。そういうサントラって作れるんです。
三柴 オペラみたいな考え方もできるんじゃないかな? オペラの曲って、当然本編の中、物語の中の1曲として成立するものなんだけど、アンコールを受けたパバロッティなんかが、物語とか関係なしに1曲だけ歌ってみても、ちゃんと聴けるじゃない? そういうものに近い気もしますね。
大槻 そうだね。「ヌイグルマーZ」っていう映画自体、オペラ的というか、ロック映画的なものを目指したところがあると思うんですよ。「ロッキー・ホラー・ショー」とか「ファントム・オブ・パラダイス」とか「トミー」みたいなノリというか。映画を観てて「音楽の当てはめ方がうまいな」って思ったもん。
NARASAKI そこは福田さんの仕事ですね。
三柴 だからある意味、今回の2枚のシングルの曲っていうのは、映画の制作陣も含めてみんなで作ったってことなのかもしれませんね。
NARASAKI 実はエンド(エンディングテーマ)についてはいろいろ考えたんですけどね。エンドってストーリーが終わったあとに流れる曲だから、シーンのこととかを考えずにわりと自由に作れるので。だから最初は「ベタなロックンロールにしようかな?」とかってことも考えたんですけど……。
大槻 ああ、そういう映画ってあるねえ。
NARASAKI なぜか「Surfin' USA」みたいな曲が流れてきたりする(笑)。そうやって明るい曲調で映画を茶化すやり方もありかな、とも思ったんですけど……。
三柴 やらなくてよかったねえ。たぶん全部台無しになってたと思う。
NARASAKI ええ。やっぱダメだ、ってなっちゃって(笑)。
──実際の映画「ヌイグルマーZ」のエンドロールのBGMは「シネマタイズ」のあとに「遊星~」がつながる、すごくキレイなものになりましたよね。
NARASAKI なんか「観た!」って感じがしますよね。満足感がある。
ワイヤーで吊られたヌイグルマーは出てきません!
大槻 でもさあ、シングルの「ヌイグルマーZ」を買う人の中には中川翔子さんのファンも多くいると思うんですよ。なのに3曲目が、ほとんど大槻ケンヂしか歌っていない、中川さんは曲名を叫ぶだけの「マリリン・マラソン」が入ってるのがホントに恐縮(笑)。
NARASAKI 中川さんのボーカルを2曲聴いていただいて、あとは特撮の宣伝をさせてくださいってことでいいんじゃないですか? 「実は僕たち普段はこういうバンドをやってます」って(笑)。
ARIMATSU 「お願いします!」って感じで(笑)。
三柴 それに今回の「マリリン・マラソン」は、中川さんのあの「マリリン・マラソン!」っていう叫びこそが重要なんだよ。ファンの人はあそこにグッとくるんじゃないの?
大槻 そうだね。あと「シネマタイズ」のほうの「一点もの」もさあ、しょこたんがロリータ服に目覚めたシーンで使われる曲なんだから、しょこたんが歌うべきだよなあ……。
NARASAKI かわいい曲ですしね。
──むしろどっちのシングルも1粒で2度おいしいって感じだと思いますけど(笑)。中川さん目当てで「ヌイグルマーZ」を買ったら、The特撮スタイルの楽曲「マリリン・マラソン」まで聴けるわけですし。で「シネマタイズ」を買った特撮ファンは、いつもの特撮とは肌合いの違う「一点もの」を楽しめるわけですから。
大槻 うん、単なる映画のサブテキストとしてじゃなくて、中川翔子×特撮のシングルと、特撮のシングルという2つのオリジナル作品として純粋に聴いて驚きを感じてくれるといいですよね。たださあ、間違って特撮のアルバムのほうの「ヌイグルマー」を買っちゃう人とか出てきたりしないかね?
三柴 で、聴いてみたら「あれ!? いつまでたっても中川さんが出てこない!」って(笑)。
NARASAKI 昔「featuring」って言葉を知らなくて「ハルメンズ featuring 戸川純」って書いてあるアルバムを買ったんだけど……。
三柴 戸川さんが歌ってるものだと思って?
NARASAKI むしろ戸川さんのソロアルバムだと思って。確かに戸川さんも数曲歌ってはいるけど、最初サエキ(けんぞう)さんの声が流れてきたから「あれっ!?」ってなったことがあって。
大槻 あと「マドンナのスーザンを探して」って映画があってさ。あれ、実際はスーザンがマドンナを探す映画なんだよね。
三柴 そういう映画に比べたら、我々のシングル「ヌイグルマーZ」では中川さんがちゃんと歌ってるよね(笑)。
──インストを除けば3分の2は中川さんがメインボーカルですもんね(笑)。で、ちょっと気の早い話になるんですけど、2月には東名阪での特撮のツアーもあります。
大槻 ツアーはツアーっていう感じになると思います。ホントの特撮のツアーをやろうと思っていて。
──「シネマタイズ(映画化)」の収録曲も含めたセットリストにはなるんだろうけれど、映画とはちょっと離れた特撮の楽曲をガッチリ聴かせるツアーになる、と。
ARIMATSU そうですね。まさにガッチリって感じで。
大槻 なのでワイヤーで吊られたヌイグルマーが出てきたりはしません!
- 特撮 ニューシングル「シネマタイズ(映画化)」/ 2014年1月22日 / キングレコード / KICM-1488
- 1200円 / KICM-1488
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収録曲
- シネマタイズ(映画化)
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 世界中のロックバンドが今夜も…
[作詞:大槻ケンヂ・メーテル / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 一点もの
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - ハンマーはトントン
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:三柴理 / 編曲:特撮] - シネマタイズ(映画化)(off vocal ver.)
- 世界中のロックバンドが今夜も…(off vocal ver.)
- 一点もの(off vocal ver.)
- ハンマーはトントン(off vocal ver.)
- シネマタイズ(映画化)
- 中川翔子×特撮 ニューシングル「ヌイグルマーZ」/ 2014年1月22日発売 / キングレコード / KICM-1487
- 1200円 / KICM-1487
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収録曲
- ヌイグルマーZ
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 遊星歯車機構
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:高橋竜] - 「マリリン・マラソン」
[作詞:大槻ケンヂ 作曲:NARASAK / 編曲:特撮] - ヌイグルマーZ(off vocal ver.)
- 遊星歯車機構(off vocal ver.)
- 「マリリン・マラソン」(off vocal ver.)
- ヌイグルマーZ
特撮(とくさつ)
2000年、筋肉少女帯を脱退した大槻ケンヂ(Vo)がNARASAKI(G / COALTAR OF THE DEEPERS)、三柴理(Piano, Key)、ARIMATSU(Dr)、内田雄一郎(B / 筋肉少女帯)とともに結成したロックバンド。同年2月に1stアルバム「爆誕」をリリースしツアーを行うが、ツアー終了後に内田が脱退。以後はサポートベーシストを迎えて活動を継続する。2006年に大槻の筋肉少女帯再加入を機に活動を休止。2011年4月にライブツアー開催を突然発表し、同年6月にはアルバム「5年後の世界」を、2012年12月に7年ぶりのオリジナルフルアルバム「パナギアの恩恵」を発表した。した2014年1月には大槻の小説「縫製人間ヌイグルマー」を原作とした映画「ヌイグルマーZ」が公開され、そのオープニングテーマ、エンディングテーマ、劇中歌を担当。映画の主演女優・中川翔子とともに制作したオープニング曲と劇中歌が収録された、中川翔子×特撮名義のシングル「ヌイグルマーZ」と、エンディングテーマと劇中歌が収められた特撮名義のシングル「シネマタイズ(映画化)」をリリースした。