トクヒサレナ|がんばれ!Victoryからソロシンガーへ、決意の「FOR YOU」

元がんばれ!Victoryのれな(G)が、「トクヒサレナ」名義でシンガーソングライターに転身。3月27日に1stミニアルバム「FOR YOU」をリリースした。

がんばれ!Victoryの頃からたびたび楽曲制作を行っていた彼女が全曲の作詞作曲を手がけた「FOR YOU」。本作にはトクヒサがエネルギッシュに歌い上げるロックチューン「Last Love」、アコースティックギターの軽やかなカッティングに乗せた「One」、ファンへの思いをつづったバラード「結び目」などバラエティ豊かな6曲が収められている。音楽ナタリーではトクヒサへのインタビューを行い、ソロシンガーに転向した理由や、「FOR YOU」に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 曽我美芽

音楽じゃないとダメだな

──がんばれ!Victoryの解散後、なぜソロのシンガーソングライターになろうと思ったんですか?

私にはもともと小さい頃から歌手になりたいという夢があったんです。なので、バンドをやりつつも地元のオーディションに出たりしていて。でもそれは小さい子が「ウルトラマンになりたい」「プリキュアになりたい」と言うみたいなものだったので、現実を見てバンドをやってたんです。で、バンドが完全燃焼で終われたので、次は歌手を目指してみようかなと。

──バンドが解散するときには、もうソロでの活動のビジョンはあった?

どっちかと言うと、そのあとのことは解散するまで考えないようにしていました。もちろん「解散したあとどうするの?」とかいろんな人に言われてたんですけど、最後のライブまで集中したかったし、先のことを考えてラストライブへの気持ちが薄れるのは嫌だなと思って。

──そうだったんですね。ではソロでやろうと決めたのはいつ頃だったんですか?

解散してから時間が少し経ってからでしたね。両親にも「どうするの?」と言われて「そろそろ決めないとな」と思って決めた感じではありました。

──どうしてシンガーソングライターだったんでしょうか? 音楽以外の道に進むという選択肢もあったと思うのですが。

誰かに「音楽じゃないとダメなの?」と言われたときに「音楽じゃないとダメだな」と思ったんです。そこまでは正直、歌がものすごく好きな分自信がなくなってしまうことも多くて「音楽じゃないとダメだ」と言い切ることができなかったんですけど、「音楽以外の道はないの?」と聞かれたときに「ないな」と思いました。

──昔からの憧れの気持ちがどこかに残っていたのかもしれないですね。

たぶん蓋をしてたんでしょうね。その蓋をもう開けていいかなって。たぶんバンドがうまくいってなかったら次のことにもチャレンジできなかったと思うので、バンドをしっかりやってたことも大きいと思います。

ソロ初の楽曲はファンへの思いを歌った「結び目」

──そしてシンガーソングライターとして最初に発表した曲が「結び目」です。この曲についてはリリース決定時に「小学生の時始め10年続けたバンドを辞め、この1年間で色々失くし、色々手にし、今歌いたい事が『結び目』という曲になりました」とコメントされていました(参照:元がんばれ!Victoryのれな、ソロシンガーとして活動スタート)。

同時進行で何曲か作ってはいたんですけど、その中で一番等身大で伝わりやすいのが「結び目」でした。あとこの曲はバンド生活で得た気持ちを書いたところもあったので、ソロの1発目はこの曲かなって。

トクヒサレナ

──「バンド生活で得た気持ち」というと?

もちろんバンド活動をする中でいろんなことを得たんですけど、一番はファンの方への気持ちですね。最初のほうの東名阪ツアーなんかは、東京のファンの方が遠征してくださったり、本当にファンの方の存在に支えてもらっていて。青春をテーマにした曲が多かったこともあって、ファンの方と一緒に青春を感じてたような感覚でしたね。最初はファンというものがわからなくて、自分でも好きか嫌いかよくわからないこんな私のことを応援したり、働いたお金を私たちのチケット代に使ってくれたりすることに対して「どうしてだろう?」と思ってたんですけど……途中から、ファンの方の存在が自分の生きてる価値だと思うようになりました。

──バンド時代のファンへの思いをソロの1曲目として発表するほどに、トクヒサさんは当時のファンを大切に思っているわけですね。

はい。

──でも、がんばれ!Victoryは解散して、トクヒサさんはソロシンガーとして活動を始めた。それは、ある意味ファンを手放すことにもつながると思うのですが、そのとき怖さや不安はなかったんですか?

ありました。解散するということは、ファンの皆さんと過ごした長い時間を自ら断ち切ることになる。その葛藤が、バンドを10年続けてきた1つの理由だったのかもしれないです。だけど、「申し訳ない」という気持ちじゃなくて「素敵な景色を見せてあげられる」という気持ちになれたので、赤坂BLITZ(現:マイナビBLITZ赤坂)のワンマンでバンドを終わらせることができたんだと思います。

──なるほど。「結び目」を聴いたファンの方はうれしかったでしょうね。反響などはいかがでしたか?

リリース前にラジオで流していただいたのでエゴサーチしてたんですけど、「声が違う」「本当に本人か? 理解に苦しむ(褒め言葉)」みたいなものが多くて(笑)。ファルセットと地声を混ぜた、バンドのときとは違う歌い方だったので、歌詞よりも歌声で皆さんを驚かせてしまったみたいです(笑)。その後12月にイベントをやってこの曲を弾き語りで披露したんですけど、そのときには「いい曲」と言ってもらえたのでよかったです。ファンの皆さんも今までの思い出を思い浮かべてくれて聴いてたらいいなと思っています。

私が作ったかどうかは関係ない

──がんばれ!Victoryのときも楽曲制作はされていましたが、ソロになったことで作る曲に変化などはありますか?

がんビクのときは「がんビクが歌ってこそ」だと思っていたんですけど、今は私が作ったかどうかは関係なく「この曲いいね」と思ってもらえたらそれが本望というか。

──自分自身ではなく、曲を認めてもらいたいと。

トクヒサレナ

そうですね。だから私のことを書いた曲じゃなくていいんです。いろんな人のいろんな物語を書きたい。それで誰かに少しでも引っかかって、日々のBGMにしてもらったり、何かの助けになればいいなという考え方に変わりました。

──バンドのときは、ボーカルのあやきさんが歌うことを考えて曲を作られていたと思うのですが、ソロになると歌うのはご自身です。楽曲制作のうえで、そこも何か変わりますか?

めちゃめちゃ具体的なんですけど、がんビクのボーカルはわりとハスキーな声だったので、「あなた」という言葉を使わないようにしてました。あとはバンド時代には書けなかった恋愛の曲も書けるようになりました。

──恋愛の曲が書けなかったというのはなぜ?

それもボーカルの声をイメージして。そうすると恋愛の曲よりも、青春っぽい曲とか、パンチのある曲とか、そういう曲のほうがグッとくるなあと思って。

──作る曲が変化したということですが、それに伴い、聴く音楽や参考にする音楽なども変わりました?

バンド時代にはよく洋楽を聴いてたんですよ。それは今思えば勉強という意味で。でももともと小さい頃に実家の車の中で聴いてたのはZARDさんとかLOVE PSYCHEDELICOさんとか、女性ボーカルのJ-POPが多くて。ソロになって、またその頃に戻りました。サウンドももちろんなんですけど、私は作詞をするのが好きなので、自然と日本語の曲を聴くようになりました。歌詞で特に好きなのはEvery Little Thingさん。特に持田(香織)さんが書く歌詞が好きです。