ときのそら「Sign」インタビュー|“普通の女の子”がVTuberシーンを代表するアイドルに……5年間の軌跡を振り返る

ときのそらが活動5周年を迎えた9月7日に、4枚目となるアルバム「Sign」をリリースした。

ときのそらのアニバーサリーイヤーを飾る「Sign」には、広瀬香美や田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、多田慎也といったヒットソングの名手から、柊キライやユリイ・カノンといった超有名ボカロPまで多彩なクリエイター陣が参加。“VTuberアイドル”ときのそらの魅力が存分に詰め込まれた渾身の1作となっている。

活動開始時に17歳だったときのそらは今年22歳に。世間でのVTuberの知名度もその間に急速に高まり、さまざまなVTuberたちが音楽シーンで活躍を見せている。そんな状況の中でときのそらは自身の足跡をどう感じているのか。最新作「Sign」の制作エピソードとともに、ターニングポイントとなった出来事などを語ってもらった。また特集の最後には、「Sign」のリード曲「ピッとして!マーマレード」を手がけた田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)からのコメントも掲載する。

取材・文 / 森山ド・ロ撮影 / 関口佳代

みんなにもっと素敵なものを届けたい

──活動5周年を迎えるタイミングで、4枚目のアルバムをリリースする心境はいかがですか?

素直にひと言で表現するなら「うれしい」なんですけど……まさか5年間も皆さんの前で歌えているとは思っていなかったので、うれしいと同時に周りへの感謝とか、このアルバムを通してみんなにこれからももっと素敵なものを届けていきたいなと決意することができました。

──今回のアルバムにはさまざまなアーティストの方が携わっていますが、どのような巡り合わせがあったんでしょうか?

「そらのとき」を提供いただいた広瀬香美さんはビクターエンタテインメントの大先輩ということもあって、ご縁あって共演させていただいたあとに楽曲を書いていただきました。多田慎也さんや瀬名航さんは、1stアルバムからご提供いただいていて、初期から素敵な楽曲で応援してくださっています。柊キライさんは、私が普段から柊キライさん好きをビクターさんに話していたことがきっかけかなと勝手に思っています(笑)。

ときのそら

──新しくタッグを組んだ人もいらっしゃいますが、その中で特に印象に残っている方はいますか?

ユリイ・カノン(月詠み)さん! 作っていただいた「空ノ空」はAメロとBメロ、サビの差がすごいんです。サビに向かってどうやって歌っていけばいいんだろうと思って、すごく難しかった印象があります。でもメロディがすごくきれいで、こんなに素敵なメロディの曲を歌えてうれしかったです。

──そらさんの楽曲はハイトーンなものが多いイメージがあるんですが、クリエイターの皆さんが声質を考えて作られているんでしょうか?

高音がすごく出るからというよりは、低音が苦手なんです。今回のアルバムでも、最初にいただいた時点ではサビ以外が低くて難しい曲もあって、結果、全体的に高くなってしまいました(笑)。

──特に高音が印象的な曲というとUNISON SQUARE GARDENの田淵さんが手がけた「ピッとして!マーマレード」ですが、この曲を実際歌ってみてどうでしたか? かなり起伏の激しい展開の曲ですよね。

初めてデモを聴いたとき「高ーい!」って思いました(笑)。アルバムの中でも特にキーが高い楽曲だと思います。UNISON SQUARE GARDENさんの曲は私も聴いていたので、田淵さんからどんな曲が来るのかなってドキドキしてたんですけど、私が思い描いていた以上に、すごく明るくて聴いている人が楽しくなるような曲でしたね。試されてるのかなと思うくらい歌うのが大変だったんですけど、田淵さんは「ときのそらなら歌える」と考えて作ってくださったと思うので、私もその期待にお応えしようと思って歌いました。歌詞も私らしいですし、アルバムの中で一番楽しく歌えた曲かもしれません。今までもアイドルチックな曲が多かったんですけど、その中でも今の私に一番近い曲なのかなと思います。

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──ほかに印象に残っている曲はありますか?

「ユメゾラ☆ファンファーレ」がアルバムの中で一番好きで、最初にメロディと歌詞を聴いたときに「これはすごい!」と思ったんです。歌いながらこれまでの自分のことを思い出して、エモくなっちゃって。ライブで歌ったときに、みんなどんな気持ちで聴いてくれるんだろうとウキウキしちゃいました。

──ライブ終盤に似合う楽曲ですよね。

そうですよね! ライブの序盤よりは、後半のほうで心を込めて歌いたくなるような曲だと思います。

──レコーディングで特に苦労された曲はありましたか?

ボカロPの柊キライさんに作っていただいた「メアリースイート」は一番苦戦しました。歌詞はすぐ自分の中に入ってきたんですけど。柊さん特有のサウンドに「私らしさ」と言う表現をどう歌ったら良いか、とっても立ち止まった記憶があります。でも、できあがったものには満足してます! あと「デジタリックリリック」は、キーが高くて、テンポも速くて難しかったですね。そんなに滑舌がいいほうじゃないので、噛まないように集中してレコーディングに挑みました。かなりパワーを使った曲だと思います。

──アップテンポな曲よりバラードのほうが得意ですか?

そうですね。バラードのほうが、自分の思った通りの表現ができるかもしれません。でも実際にいただくのは明るい曲が多くて、本格的なバラードはそんなにないと思います。

ときのそら

──確かにそらさんは、明るい曲や哀愁が漂う曲が多いイメージが強いですね。

聴いていてゆったりできる曲が少ないのは、ライブ映えを意識してるからだと思います。アップテンポでみんなでコールができるような曲が自然と多くなるんです。

──制作段階で「ライブ映えする曲を」といったリクエストをクリエイターの方にするんですか?

直接伝えたりはしないんですけど、普段から私は「ライブをしたい」と言っていて。だからライブを通しても愛される曲を作っていただけているのかなと思っています。それとアルバムはライブとセットの意識で出したいんです。ライブで歌って、ファンのみんなと育てていくのが私らしいと思うので。

──ちなみに、そらさん的に今回のアルバムは何点になりますか?

100点!!!と言いたいんですけど、今後ももっと成長していきたいという意味を込めて、70点くらいですかね!

──なかなか厳しいですね。

5年後、10年後も歌っていくことを考えたら、30点くらい残しておかないと(笑)。

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