ナタリー PowerPush - T.M.Revolution×水樹奈々
カリスマ2人、夢の邂逅
声質のバランス
──サビの主旋律は水樹さんが歌っていますね。
西川 そうですね。僕は下のハモりに回って。
──西川さんがちょっと引いた感じに見えるんですが。
西川 まあやっぱりね。初めての共同作業ですから(笑)。
──ケーキ入刀みたいな?
水樹 あはは(笑)。そうかもしれないです(笑)。
西川 まあ、披露宴とか結婚式っていうのはやっぱり嫁のもので、嫁が目立ってなんぼですからね(笑)。
──なるほど(笑)。
西川 というか、やっぱり水樹さんと自分の声質を考えて、冷静に分析したときに、こういうバランスがいいだろうと思ったってことです。水樹さんの声って細く長くなめらかに“貫く”みたいな印象があって。僕はどっちかっていうと倍音も多くて、こうドサッとやってくるというか“面”で届く感じなので。その双方の声質のよさを、楽曲の中でうまく表現できたらなと思いました。
──水樹さんは西川さんと歌ってみていかがでした?
水樹 先に西川さんが歌入れをされていたので、私のレコーディングはその声を聴きながら歌う形だったんです。だからそこにすべてを委ねて、そのまま音の中にダイブしていくというか。西川さんがしっかりと下から支えてくださるので、私は気持ちよく上で踊っているようなイメージですね。
──いい関係ですね。
水樹 お互いの声が全面に出つつも、どちらかをサポートしたり、どちらかが前に出たり一歩引いたり……。それがあの激しい曲調の中でずっと繰り広げられてるんです。だからとてもドラマチックで、ただ激しいだけではない“うねり”やドラマ性が出ていると思います。やっぱり男女だとキーのバランスもすごく難しいんですけど、自分の歌いやすい音域をたくさん使っていただいていたので。
西川 よかった(笑)。確かに声質はかなり違うんですけど、いざ混ざってみるときちんと棲み分けができてる感じがあって。定位とかの問題じゃなくて、声の成分としてそれぞれの持ち味が分かれているという感じがすごくありました。
ファンの“熱”の高さ
──それにしてもこの「Preserved Roses」という楽曲はアレンジも含めてかなり過剰な仕上がりですよね。
西川 まさにそうですね。トゥーマッチな、遠慮のない感じ(笑)。
水樹 うふふ(笑)。
──サビ頭で始まって、そのままテンションが全然途切れないという。
水樹 そうなんです。アニメの第1話がオンエアされたあと「こういうの待ってた!」「アツくて好きっ!」というリアクションをたくさんいただけてうれしかったです。
西川 水樹さんとこもアツいの好きな方ばっかですもんね。
水樹 体育会系というか(笑)。みんな「どんどんキツいの持ってこい!」みたいな感じの(笑)。私を筆頭に「もっともっと!」っていうタイプの人が多いんです。
──お2人とも、ご本人以上にファンの熱がすごく高いタイプのアーティストだと思うんですが。
西川 水樹さんとこは完全に主従関係ができてますからね(笑)。神からの啓示を受ける巫女とその信者たちみたいな。
──それで言ったら西川さんも相当だと思いますけど(笑)。
西川 だからたぶん、その信者システムっていうか、新興宗教みたいだって言われて、水樹奈々とT.M.Revolutionが並べられたりすることもあるんですけど(笑)。そこにも1つ何かがあるような気がしますね。
──やっぱりお2人のカリスマ性というか、熱量みたいなものが均衡しているんだと思うんです。宗教に例えられるほど熱いファンが多いお2人ならではの。
西川 あはは(笑)。でも数多いろんな宗教があっても神様は1つだし、信じてる歌とかそういうものでつながって、こういうめぐり合わせができたっていうのが何より大きいことだと思うんですよね。
俯瞰と没頭のメリハリ
──お2人は共通点も多いかと思うんですが、ご自身ではどう感じていますか?
西川 あの、そのへんさかのぼると生い立ちの話になるんだけど、僕も水樹さんも年寄りに育てられたんですよね。
──小さな頃の環境が似ていると。
水樹 そうですね。私は小さい頃から演歌を歌っていたので、週末は同じ世代の子たちと遊ぶのではなくておじさま、おばさまや、おじいちゃんおばあちゃんたちと過ごしていたんです。そこで演歌や懐メロを歌って、おじいちゃんおばあちゃんが喜んでくれるのを見て、本当にうれしくて。大人の中で過ごす時間のほうが多かったんですよね。だから中学卒業して高校で上京するときの夜行バス乗り場も……。
西川 えっ、夜行バス? ほかに交通手段あるでしょう?
水樹 いや、お金がなかったので(笑)。愛媛から東京まで夜行バスだと片道1万500円だったんですよ。
西川 なるほど! リアルだなあ(笑)。
水樹 それでその夜行バス乗り場には同級生の友達が3人、カラオケ仲間のおじいちゃんおばあちゃんが15、6人来てくれて……(笑)。そのときに「私ってこういうバランスだったんだな」って(笑)。
西川 ああ、わかるわあ……(笑)。
──その、大人と一緒に過ごした子供時代がお2人の人格形成に与えた影響もあります?
西川 その子供の自分を、離れたところからちょっと一歩引いて見てる自分がいたんですよね。ある場面では子供っぽくはしゃいでもいいけど、ある場面ではきちんと正座して大人に混ざらなきゃいけない、という。そういうの続けてきてたから、今もやっぱり立ち居振る舞いっていうか礼儀作法みたいなものが……。
──水樹さん、激しくうなずいてますけど。
水樹 うふふ(笑)。古いタイプの人間なんですよね。基本、昭和でできてるから(笑)。
──今、西川さんがおっしゃった一歩引いた視点が、アーティスト活動において役立ってる部分もありそうですね。
水樹 そうですね。没頭するところは没頭しつつ、ちゃんと俯瞰で捉えてる自分がいないといきすぎてしまうこともあると思うし。やっぱりチームプレイなので、音楽も声優のお仕事も、“自分自分”ってなっちゃうと輪が乱れてよいものができないと思うんです。みんなの意見をちゃんと受け止めて「なるほど、こういう考え方もあるんだ」って気付けるように。自分を冷静に見られる部分がないとダメだと思うし、そこで成長が止まってしまうんじゃないかなって思うんです。
──なるほど。
水樹 でも俯瞰で捉えながらも、いくときはいかなきゃいけないんですけどね(笑)。冷静すぎてもダメで、メリハリが必要なんだと思います。
- コラボレーションシングル「Preserved Roses」 / 2013年5月15日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回生産限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / ESCL-4049~50
- 期間生産限定盤 [CD] / 500円 / ESCL-4051
- 通常盤 [CD] / 888円 / ESCL-4052
初回生産限定盤CD収録曲
- Preserved Roses
- Preserved Roses -アニメバージョン-
初回生産限定盤DVD収録内容
- Preserved Roses TRAILER MOVIE
- Preserved Roses OFF SHOT MOVIE
- Preserved Roses TV SPOT
- TVアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」OPENING MOVIE
- TVアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」TV SPOT
期間生産限定盤CD収録曲
- Preserved Roses
通常盤CD収録曲
- Preserved Roses
- Preserved Roses (T.M.Revolution Only)
- Preserved Roses (Nana Mizuki Only)
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催。2013年2月にはセルフカバーアルバム第2弾「UNDER:COVER 2」をリリースした。同年6月からは全32公演の全国ツアー「T.M.R. LIVE REVOLUTION’13-UNDER:COVER2-」をスタートさせるほか、9月21、22日には5年連続となる「イナズマロック フェス」の開催も決定。その他、司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。
水樹奈々(みずきなな)
愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2012年12月に通算9枚目のオリジナルアルバム「ROCKBOUND NEIGHBORS」を発表。同年末には4年連続となる「NHK紅白歌合戦」への出場を果たした。2013年5月1日にはライブBlu-ray / DVD「NANA MIZUKI LIVE GRACE -OPUS II-×UNION」をリリース。