音楽ナタリー Power Push - The Floor
札幌発4人組が放つ 初期衝動と青春感あふれる新作
東京のバンドに負けたくない
──北海道の音楽シーンと東京の音楽シーンで違うところはありますか?
ナガタ 東京の場合、この箱はメロコアに強い、ここはギターロックとか、ライブハウスごとにカラーがあるじゃないですか。札幌ってKLUB COUNTER ACTIONがメロコアとかハードコアに強いくらいで、それ以外は特にカラーがないんです。例えば僕らが出たあとにラウドなバンドがやって、さらにそのあとに弾き語りの女の子が出てきたり。それが当たり前なんで、打ち上げとかでまったく違う音楽をやってる人と話す機会が多い。そこで刺激を受けることもたくさんありますね。北海道にいると違うジャンルのバンドとも日常的につながれるから、独特のシーンが育っている気がします。
コウタロウ 地元のバンド同士のつながりは広いですね。ドラマー同士も仲良くて、ドラマーだけで100人ぐらいのLINEグループ作ってドラム研究会みたいのをやってます。
ササキ あと東京とか道外のバンドに対する「やってやろうぜ感」があったりして。東京のバンドに負けたくないっていうのが根底にあって、ときにはこの人たちなんで売れてるんだろうなと思う人たちもいるし……でも売れてることには理由があるし、対バンしたらめちゃくちゃ演奏がうまかったり、カッコよかったりする。そういったバンドに、正面からぶつかって勝てるようなバンドでいたいと思います。
──となると武器が必要になってきますよね?
ササキ そうですね……僕らの場合は演奏力だけではないと思うんですよね。サウンドに、ダンスミュージック好きなところとか、USやUKインディの音楽の要素が入っていることが強みになっていけばと思ってます。
ナガタ 僕は曲を書いているので、さっきもお話ししたメロディの強さでほかのバンドと差を付けることを考えてますね。
──ちなみに理想のメロディメーカーって?
ナガタ ELLEGARDENの細美(武士)さんです。
──the HIATUSやMONOEYESの細美さんではなく?
ナガタ はい。さっき言った即時性のある刺さるメロディが細美さんが作るELLEGARDENの曲にあると思うんです。「Marry Me」や「The Autumn Song」からは特に影響を受けました。
フロントマン・ササキハヤトの変化
──ササキさんが書く歌詞についても伺いたいんですが、「Wannabe」と「パノラマ」は上に向かっていくぞっていう思いが伝わってくる内容で、一方で「君とマフラー」と「内緒話」はすごくパーソナルな内容なのと、どこか別れを感じさせる曲ですよね。
ササキ ええ。まず「Wannabe」と「パノラマ」はおっしゃった通り、上に行きたいって思う気持ちが込められてますね。「君とマフラー」と「内緒話」は一応別れの歌ではあるんですけど、別れを振り返りつつ前に進んでいくイメージなんです。だからこの4曲については全部前向きなんです。
──なるほど。全体を通して、前向きな作品になっていると。ササキさんが歌詞を書く上での源ってなんですか?
ササキ この4曲に関しては、僕がこれまで触れ合ってきた人たちとのエピソードがもとになってますね。例えば「Wannabe」は、やりたいことがあるのに「俺には無理だ」ってあきらめて、くすぶってる友達に向けて歌ってて。実際に世の中には友達関係とか恋愛関係とかいろんなことでくすぶってる人がいっぱいいるわけで、実際に僕も先なんて全然見えない中でバンドをやってる状態だし。そういうくすぶった気持ちが少しでも晴れてくれればという思いで書きました。
──ある意味で自分に言い聞かせてるような歌詞ですよね。不安があったとしても、どこまで行けるかわかんなくても、進んでいけばいいという。
ササキ そうですね。そういう思いが伝わってくれればと思ってます。「君とマフラー」はナガタから上がってきた曲が完全にクリスマスソングだったんで、冬をイメージしたんですけど、僕の中で冬は雪が降って切ないものなんですね。切ないと言えば恋愛の別れかなと。曲の中の主人公は彼女と別れたんですが、その人のおかげで自分が成長できたことや、育ててくれた部分を抱いてこれからも歩いて行くよというメッセージが込められてます。「内緒話」はアレンジまでできた音を聴いたときに青春感みたいなものを感じて、その頃仲良かった友達がしばらく会えなくなるっていうことがあったので、それを歌詞にしました。コウタロウには「幼なじみの女の子との別れがテーマなのかと思った」って言われたんですけど、誰か大切な人のことを歌ってることが伝わったのでよかったかなと。
コウタロウ 歌録りのときにめっちゃいい曲だなと思って。この曲を聴いたとき、すぐ情景が浮かんできたんですよね。それと「内緒話」の歌詞は、今までのハヤトの歌詞に比べて丸くなったというか優しくなった感じがあるし。感情が伝わってくる。
ナガタ もともとハヤトはシャイな人間なのでバンドになじむまで大変だったと思うんですけど、前のミニアルバムを出してツアーで全国を車で回る中でみんなで反省会したり、しゃべったりして徐々に僕らに対して許せる部分が増えたのか感情表現の幅が広がりましたね。それがステージでも出せるようになって、フロントマンとしてカッコよくなってきた気がします。
コウタロウ 単純に人として器が大きくなったのかな。
ササキ 確かに今まではシャイだしあがり症だったし、あんまり人前で感情をあらわにしなかったんですよね。ある種仮面を被るというか……自分が何か思うことがあっても黙ってたり、「別に俺はいいや」とかって思うことが多かったりしたんですけど、最近は自分も楽しくなりたいし、いい意味でわがままになってきたのかなと思います。それこそ歌詞に関しても、昔はひねくれてて、ラブよりはヘイトの感情のほうを出してた。何が言いたいのかわからない部分が強かったんですけど、今は前と比べてストレートな思いが書けるようになってきました。
自分たちがいいと思えるものを作り続けていく
──2016年は以前から出演したいと言っていた「RISING SUN ROCK FESTIVAL」にも出演して、「ライトアップ」「Re Kids」という2枚の全国流通盤を発表してとバンドとしてステップアップした年になりましたね。今後、The Floorとしてどんな方向を目指したいですか?
ナガタ バンドとしては音楽シーンに媚びず、リスナーを信じて、自分らがいいと思えるものを作っていきたいです。それを続けていく中で、さらにステップアップしていけたらいいですね。「RISING SUN ROCK FESTIVAL」にまた出たり、札幌ドームでライブをしてみたいとか目標はあるんですけど、それは過程として通過する場所というか。自分たちがいいと思えるものをずっと作り続けていくことが、The Floorとしてやっていきたいことです。
──やりたいことを突き詰める方法として、例えばtoeのように自分たちでレーベルを作って、レコーディングできる環境も作っていく自給自足の形もありますが、そういう活動の仕方に対する憧れはありますか?
ナガタ すごいなとは思うんですが、僕らはそういう形は考えていないですね。
ササキ たくさん違う価値観に触れることで、いろんな風景が観られたほうが僕らの場合はいいんじゃないかなと。
ミヤシタ あと初期衝動を忘れずに続けていきたいですね。4人共なんらかの劣等感みたいなものを抱えているし基本はシャイなんですが、音楽をやっていく中で周りに「すげえ」って思われたい、人に認めてもらいたいという思いがあります。
コウタロウ 自分が楽しいと思えることを続けていけたらいいですよね。でも不安もあるんですよ……脱退とか。
ササキ・ミヤシタ・ナガタ えっ!?
ナガタ クビってこと?
コウタロウ いや、ただ誰かが1人欠ける事態になったらイヤだなあって。
ナガタ そういうことかー(笑)。
コウタロウ ずっとこの4人でやっていきたいんですよ。メンバーが一番の友達だと思ってて。仲が悪くなったら音楽を楽しめなくなっちゃうから、仲良くやっていくことも目標ですね。
収録曲
- Wannabe
- パノラマ
- 君とマフラー
- 内緒話
ライブ情報
The Floor Presents「Re Kids」リリースツアー
- 2016年12月21日(水)北海道 COLONY
<出演者>
The Floor / PELICAN FANCLUB - 2017年1月20日(金)東京都 下北沢ERA
<出演者>
The Floor / and more - 2017年1月27日(金)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
<出演者>
The Floor / and more - 2017年1月29日(日)北海道 COLONY
<出演者>
The Floor / ココロオークション
The Floor(フロア)
2012年10月に結成された北海道札幌市在住ギターロックバンド。メンバーはササキハヤト(Vo, G)、ナガタリョウジ(G, Cho)、ミヤシタヨウジ(B, Cho)、コウタロウ(Dr, Cho)の4人。札幌を中心にライブ活動を展開し、2016年5月に初の全国流通作品となるミニアルバム「ライトアップ」を発表する。同年8月に開催されたロックフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO」に、一般公募枠「RISING☆STAR」の1組に選出され初出演を果たす。12月に4曲入りCD「Re Kids」をリリース。