本当に存在してるのかな
──ヒロトさんとマーシーさんはブルーハーツ結成から数えて35年間、ほぼ毎年のようにアルバムを出してライブを続けています。同世代の谷中さんから見ていかがですか?
谷中 いや、本当にすごいですよね(笑)。ある意味ストイックだとは思うけど、かといって自分たちの人生を楽しんでないわけじゃない。ただシンプルに、好きなことに集中してるんだなっていうのは感じます。他人が何を望んでいても関係ない。自分たちがもっと素晴らしい形になることだけを考えてる。
チッチ 誰かのためにというより、演ってる自分自身が楽しんでるイメージがありますよね。それが一番大事だし、一番伝わるのかなって思います。
──音楽はやりたいからやってるだけ、ただの趣味だからみたいなことは本人も常々言ってますよね。
志磨 やっぱりヒロトとマーシーがずっと友達同士で、友達とバンドをやってるっていうのは大きいと思いますね。
谷中 ヒロトさんと話したときに「(マーシーとは)腐れ縁だからさあ」って照れながら言ってたけど(笑)。
──チッチさんはマーシーさんにはどういう印象を持っていますか?
チッチ なんていうんだろう、マーシーさんのほうが偶像的なイメージがありますね。本当に存在してるのかな?みたいな(笑)。
志磨 わかります。吟遊詩人じゃないですけど、なんかどこにもいないような雰囲気で。ブルーハーツやハイロウズでマーシーが歌う曲も大好きでした。「ブルースをけとばせ」とか「ガタガタゴー」とか。
──マーシーさんはライブでもレコーディングでも、エフェクターはオーバードライブ1個しか使わないそうですね。
志磨 カッコよすぎる。そんなことある?って感じですよね(笑)。
チッチ あはは(笑)。
──音作りで試行錯誤してるギタリストが聞いたら「何それ?」って言いますよね。
谷中 ちょっと話が逸れちゃうんですけど、スカパラがシーナ&ロケッツの鮎川誠さんと一緒にリハーサルしたことがあって。鮎川さんがアンプのつまみをいじりつつ「こうじゃなくて」って言いながらギターの音作りをしてたんです。で、時間かけてやっと「決まった」って言うんで、スカパラのギターの加藤(隆志)が「どんなセッティングにしたんだろう」って見に行ったら、全部のボリュームがフルだったっていう。
志磨 いい話すぎる!(笑)
──マーシーさんもギタリストとしては近いタイプかもしれませんね。
谷中 そうですよね。ホントにシンプルでカッコいいと思います。
試行錯誤する必要もない
──クロマニヨンズはフェスの現場でも常勝ですよね。いつも同じようにまっすぐ演奏してるだけなんですが、それがものすごくカッコいい。あれはいったいなんなんでしょう。
志磨 いいなあ、ずっこいなあ(笑)。
谷中 何か音楽的なトリックがあるわけじゃないもんね。
志磨 インタビューとかで「難しいことはしない」って話はよくされてますよね。難しいと間違えるからライブが楽しくない、って(笑)。でも、さっきの言葉の無駄を削ぎ落とすって話もそうですけど、本当なら“欲”みたいなものが出るじゃないですか。
谷中 うまく聴かせるフレーズ作ろうとか。
志磨 ね、なんかそういうのすらない。クロマニヨンズ以降は特にもう試行錯誤する必要もないというか。そこはちょっと恐ろしさを感じますね。ホントにハードコアだと思います。
──志磨さんから見てクロマニヨンズはどういうバンドですか?
志磨 たぶんさっきのチッチさんのお話もそうなんですけど、ロックンロールっていうのは何がしかのルーツがあって、それを継承していくってものだと思うんです。僕らがブルーハーツを好きになったように、ヒロトやマーシーもThe ClashだとかThe Whoだとか、いろんな音楽を好きになって憧れたんだと思う。でもクロマニヨンズはそんな憧れよりもっともっと根源的なところまで行こうとしているんじゃないですかね。バンド名が本当にそのまんまなんですけど。
──原始に還るというか。
志磨 うん、それで言うとブルーハーツも本当に“ブルーハーツ”ですよ。今よりずっとブルー=憂鬱を歌っていた。ハイロウズは、憂鬱すら蹴散らすロボットみたいに、ハイとロウのギアのついたモーターですべてを駆逐していった。まあロボットって言っても悪い意味じゃなく「がんばれ!!ロボコン」くらいの感じですけど(笑)。で、クロマニヨンズではもっと根源的なところを追求してる。2人が考えるロックンロールのルーツっていうのがたぶんそこらへんにあるんでしょうね。ロック研究家の2人が「ここにロックンロールがあるぞ!」っていう研究結果を常に報告してるみたいな印象があります。
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