ナタリー PowerPush - The Cheserasera
この音楽が届くまで この命が終わるまで
昨年10月にリリースしたシングル「Drape」がスマッシュヒットを記録するなど、ロックシーンにおいて急激に注目を集めている3ピースバンド、The Cheserasera(ザ・ケセラセラ)がミニアルバム「WHAT A WONDERFUL WORLD」でついにメジャーデビューを果たす。鋭いギターサウンドを軸にした生々しいバンドアンサンブル、そして葛藤と希望の間で揺れる気持ちをリアルに映し出す歌。彼らの魅力とポテンシャルの高さは本作によって、さらに幅広い層のリスナーに浸透することになりそうだ。
今回ナタリーではフロントマンの宍戸翼(Vo, G)にインタビュー。バンドの成り立ちと「WHAT A WONDERFUL WORLD」について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 小坂茂雄
僕の歌詞は“行ったり来たり”
──メジャーデビュー盤「WHAT A WONDERFUL WORLD」、バンドの本質がしっかり伝わる作品だと思います。
ありがとうございます。今までの作品の中でも、自意識と客観性を一番持てたんじゃないかと思ってるんですよね。
──「自分たちはどういうバンドなのか?」を意識しながら制作したということですか?
そうですね。「どういう姿を見てもらうのがいいのか?」ということはすごく考えました。演奏に関しても、やろうと思えばいろんな形態を取れると思うんですよ。そのなかで「どういう自分たちでやっていくのか?」を改めて考えたというか。
──具体的にどういう部分を強調しようと?
まずは歌詞ですね。僕の歌詞は“行ったり来たり”というか、曖昧さが残ってると思うんです。昔から「曲の中で決して答えは出さない」という書き方だったし、その感じは残しつつ、より磨かれた形で表現したいなと。あとはサウンドを研ぎ澄ませることですね。ロック感をあふれさせることで、前向きさを醸し出したいので。
──曖昧な部分を残した歌詞とエッジの効いたロックサウンド。そのバランスがThe Cheseraseraの核になっているんでしょうね。
最初の頃は自分の中のイヤな気持ちとかイライラをぶつけていただけだったんですけどね。“言いたいことを叫ぶ”ということから始まって、そのうちにちょっと救いも欲しくなってきて……。最近も少し変わってきてるんですよ。全国流通盤(2014年1月にリリースされたミニアルバム「The Cheserasera」)をリリースしてからは、曲を聴いてくれた人が「自分の話のようだ」って言ってくれることがあって、「自分だけじゃなくて、誰かが気持ちよくなってくれることもあるんだな」ということがわかってきて。ポジティブなものを共有できたらいいなということも意識するようになりました。
NUMBER GIRLをコピーしたら得体の知れない楽しさが
──さらに深くThe Cheseraseraを知るために、宍戸さんの音楽ルーツについても聞きたいのですが。音楽に興味を持った最初のきっかけというと?
中学のとき、音楽の授業でアコースティックギターを弾く機会があって。授業はつまらなかったんですけど、ゆずの「夏色」のイントロを弾いてみたときに「まったく同じような音が出せるんだな」と思ったんですよね。楽譜を見て弾いたから当たり前なんですけど、それが自分にとっては革命的な出来事だったんです。歌は高校で軽音楽部に入ってからですね。たまたまボーカルがいなくて、「じゃあ、僕が歌う」ってバンドが始まって。
──その頃はどんな音楽を聴いてたんですか?
中学まではテレビから流れてくるJ-POPしか知らなかったんですけど、高校に入ってからBUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENなんかを聴き始めました。あと、先輩の影響でNUMBER GIRLをコピーしたのも大きかったですね。「IGGY POP FAN CLUB」という曲なんですけど、演奏しているときに得体の知れない楽しさがあって。「簡単なコードなのにバンドで合わせるとこんなに楽しいんだ!」ってめっちゃゾワゾワしましたね。「透明少女」を聴いたときも衝撃でした。イヤホンが壊れたかもと思うくらい、ドラムの音がデカくて(笑)。その後はART-SCHOOL、MO'SOME TONEBENDER、ゆらゆら帝国、Syrup16gなんかも聴いて。Dinosaur Jr、Sonic Youthも好きでしたね。
──オリジナル曲を書き始めたのは?
高校1年のときからオリジナル曲のバンドをやってたんですよ。今のバンドを組むまでに3つくらいやってたんですけどね。だいたい1年とか1年半くらいで終わっちゃってたから。
──以前やってたバンドって、どんな音楽性だったんですか?
今とは全然違いますね。メンバーと一緒に作るのがバンドの面白さだと思ってるから、バンドごとに違うんですよ。ポストロックが好きなドラマーがいたときはそういう感じだったし、ほかのメンバーが曲と歌詞を書いてたこともあったし。1人で作ることのよさもあるけど、メンバーと一緒にやると、いい意味で違う感じになるじゃないですか。それが楽しいんですよね。
──バンドというスタイル自体が好きなんでしょうね、きっと。今のメンバーとの出会いは?
大学の音楽サークルです。先輩にドラムの美代(一貴)くんがいて「スタジオに入ってみようか」ってことになって。そのときのベースの人はすぐ辞めちゃったんですけど、美代くんが「幼なじみでベースをやってるヤツがいる」って西田(裕作)くんを連れてきてくれて。
──そこからThe Cheserasera としての活動がスタートした、と。
最初は「昼行燈」っていうバンド名だったんです(笑)。前任のベースが考えた名前で、僕も気に入ってたんですけど、西田くんが入ったタイミングで「もう少し前向きな感じがあったほうがいいな」って思って。で、「なんとかなるさ」という意味の言葉を持ってきたっていう。
──ケセラセラという言葉は、いろいろなニュアンスを含んでますよね。「なんとかなるさ」って前向きな意味にも捉えられるけど……。
「なるようになれ」みたいな意味もありますからね。どちらかというと「どうにもならないな」というときに使うような気もするし、底抜けに明るいわけではないっていう。まさにそういう感じが好きなんです、僕は。100%ポジティブなものは肌に合わないし、どこか信用できないところもあって。
収録曲
- 月と太陽の日々
- でくの坊
- ラストシーン
- 彗星
- goodbye days
- 思い出して
- SHORT HOPE
The Cheserasera(ケセラセラ)
宍戸翼(Vo, G)、西田裕作(B)、美代一貴(Dr)からなる、センチメンタルでエモーショナルなギターサウンドが特徴のロックバンド。2009年に東京で前身バンドを結成し、翌2010年に初自主企画「曇天ケセラセラ」を開催したタイミングでThe Cheseraseraに改名。2011年には「COUNTDOWN JAPAN 11/12」の出演者オーディション「RO69JACK 11/12」の入賞アーティスト16組に選出された。2013年10月にタワーレコード限定でリリースした1stシングル「Drape」はタワーレコードインディーズチャートで1位を獲得。2014年1月に初の全国流通盤となる「The Cheserasera」を発売した。その後、日本クラウンからのメジャーデビューを発表。メジャー第1弾作品としてミニアルバム「WHAT A WONDERFUL WORLD」をリリースした。