The BONEZが5月9日に2年ぶりとなるアルバム「WOKE」を発表した。
風通しがよく温かなエネルギーに満ちたサウンドからは、バンドが一枚岩で活動している様子が伺える。現在は本作を携えてレコ発ツアー中の彼ら。音楽ナタリーではツアー直前にJESSE(Vo, G)とT$UYO$HI(B)にインタビューを行い、「WOKE」の制作エピソードを軸にThe BONEZのスタンスについて語ってもらった。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 インタビュー撮影 / 関口佳代
キーは「90'sと今のハイブリッド感」
──The BONEZは今回のリリースに合わせてサイン会をやってましたが、日本のロックバンドとしては珍しいですよね。
JESSE(Vo, G) うん。サイン会って作品を手にしたときのファンの熱い思いをその場で聞けるんですよ。彼ら彼女らの意見はすごくリアルだから、単純に聞きたいっていうのはあります。
──そういう機会はもっとたくさんあってもいいと思うんですけどね。
T$UYO$HI(B) 海外のバンドはけっこうやってますよね。でも、日本のバンドはやらない。アイドル的に思われたくないんじゃないですか、きっと。
──アメリカだとビッグネームのラッパーでも街のレコード屋でサイン会やったりしてますよね。そういう機会があると身近な感じがします。
JESSE ああ、やりますよね。うちらの親の世代は、ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)とか伝説的なアーティストのライブを観るチャンスがあった。で、1990年代はそういう人たちのライブを小さい頃に観て憧れたアーティストたちがデビューした時代で、例えば、元レッチリ(Red Hot Chili Peppers)のジョン・フルシアンテはめちゃくちゃジミヘンが好きで、改めてジミヘンを聴くとそこにレッチリを感じたりするんです。
──ええ。
JESSE 俺たちは90年代にそういう音楽を聴いてきて、あの頃はまだネットもなかったから、海外から輸入されてきた音楽雑誌を読んだりすることで、「お、スマパン(The Smashing Pumpkins)のボーカルはこんなにキモいのか」とか「ベースは女なんだ」なんて情報を得て、すごく想像をかき立てられたし、身近にその存在を感じていた。そのときの気持ちは今が2018年だろうがなんだろうが、俺たちの中でまだフレッシュに残ってるんですよね。だから今、自分たちがこうやって音楽で行動できる機会を得て、影響を与えられる側になれているからこそ、サイン会とかを通してファンに俺たちの存在を近くに感じてほしいんですよね。
──ああ、なるほど。理解できます。
JESSE 音に関しても、例えば1990年代のようにアナログレコーディングをしたとしても、今のキッズには音がこもってるように聞こえてしまって、今はどの端末で聴いても変わらないようなミックスにするほうが“いい音”とされている。それはわかってるけど、俺はどうしてもアナログの泥臭いほうに行ってしまいがちで。でも、イッシー(T$UYO$HI)は今の時代の音に対するアンテナが高いから、泥臭くても今の音と変わらないような、ハイブリッドな音作りができるんですよ。うちらにとっては、その90'sと今のハイブリッド感がキーで、そこに関しては唯一無二な音楽を作れていると思う。
キャピコアとカリカリブレイク
──今の話にもあったように、90年代というのはThe BONEZを語るうえで欠かせないキーワードですが、確かに今の時代の音にもしっかり対応しています。しかも、ただ流行に乗っかるということではなく、自分たちの中で消化したうえで鳴らしてますよね。
T$UYO$HI やっぱり、そのバランスが大事だと思っていて。よくJESSEとも話すんですけど、音階なんて限られているし、本当にオリジナルな音楽をやるのはなかなか難しい時代だと思うんですよ。だけど、今まで自分たちが吸収してきた情報の出し方によっては、そのバンドのオリジナルなサウンドになり得ると思っていて。JESSEの嫁さんが最初に言い出したんですけど、俺ら、“キャピコア”って呼ばれてるんですよ(笑)。
──キャピコア?(笑)
T$UYO$HI 一見すると怖そうで、JESSEなんて首までタトゥーが入ってるのに、そういう40歳前後のヤツらがキャピキャピしてバンドをやってる。そんな人間が自分たちが好きな90年代のサウンドを意識しつつも2018年に音楽を作ってる感じ。キャピキャピしてるだけとか、コアな音楽をストイックにやってるだけっていうのはあんまり好きじゃなくて、両方がバランスよく混ざってる。あと最先端の音を出すことはいろんなアーティストがやってるし、かと言って昔の音はもちろん当時あったもので、それをそのまま再現してもただの焼き直しだから、大事なのはそのさじ加減なのかな。
JESSE あと、The BONEZにはルールが1つあって、“カリカリブレイク”っていう……名前がすごくダサいんですけど(笑)。
──はい(笑)。
T$UYO$HI でも、キャッチーでしょ?(笑)
JESSE カリカリブレイクはメンバー1人につき年に1回使える権利で、発動させるとツアー直前だろうがレコーディング直前だろうが、仕事をオフにすることができるんですよ。で、残りのメンバーが仕事相手のところまで行って、「今日は本当に申し訳ございません」って謝りに行く。
──面白いですね。
JESSE 音楽やってる人たちって本当にノミみたいな心臓してて、勘ぐり屋さんだらけだし、うまく物事が進まないことがある。だけど、普通の仕事と一緒で無断欠勤はできないし、そんなことやったらみんなに迷惑がかかる。だから、自分の体調がどうだろうが仕事に出ないといけない。だけど、限界になることはあるから、そうなったらどんな状況でも休める。そうやってメンバーを大事にしてるんですよね。
T$UYO$HI 再起不能になるぐらいまで落ち込むんだったら、その直前で言ってもらえれば、一旦ストップできる。
JESSE そう。アメリカとかでもよくミュージシャンがドラッグまみれになってますけど、それは仕事をがんばっているからなんですよね。実際のクスリじゃなくても、仕事をしないと落ち着かないっていうのもドラッグの1つだと思うし、そういう状況を改善するためのカリカリブレイク。とは言え、この5年でまだ誰も使ってないんですけどね。
──ああ、まだ誰も権利を行使してないんだ。
JESSE それを使えるってわかってるだけでも大きいから。
T$UYO$HI あと、このキャッチーな名前も俺の中では重要で。
JESSE 「核停止ボタン」みたいなのじゃなくてね(笑)。だから、その言葉が出る時点で肩の力がちょっと抜ける。
T$UYO$HI 「ああ、カリカリブレイク来ちゃった?」みたいなね。
JESSE そうそう。「しょーがねーしょーがねー!」って(笑)。
──なんか、いい話ですね。
T$UYO$HI Dragon Ashのケンちゃん(Kj)が、ある番組で「The BONEZは失ったところから始まってるバンドだから、人の気持ちがわかってる。だから感動するんだ」っていうことを話してくれてて、それはすごくわかるなって。K(Pay money To my Painのボーカリスト。2012年12月に急逝)が死んだのは俺が40手前のときで、そんなタイミングでそれまで自分が無我夢中でやってきたものがなくなるってなったら、「あいつ、これからどうすんの?」ってなるじゃないですか。だけど結局、そこからもう一度バンドを始めて。
JESSE イチからじゃなく、ゼロからね。
T$UYO$HI そうそう。そうやってバンドとしてまたステージを踏めるっていうのは夢があると思う。The BONEZはそういう喪失感を味わったことによって、今あるものに価値があるということを感じられる人たち、いろんなことを経たメンバーが集まってるから、ちょっとやそっとのことでぐしゃぐしゃにはならないし、ただ笑ってる人とは違うんだよね。
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俺らは楽しく生きているけど、それだけじゃない
- The BONEZ「WOKE」
- 2018年5月9日発売 / tensaibaka records
-
[CD]
2484円 / TBRD-0509
- 収録曲
-
- Until you wake up
- Bird ~people with wings~
- Rude Boy
- One more
- SUNTOWN
- LIFE
- Kings work
- Code name
- Nice to meet you
- Anthem
- See you again
ライブ情報
- The BONEZ Tour「Woke」(※終了分は割愛)
-
- 2018年6月3日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2018年6月7日(木)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年6月8日(金)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2018年6月10日(日)岐阜県 yanagase ants
- 2018年6月16日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2018年6月17日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2018年6月28日(木)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2018年6月30日(土)熊本県 熊本B.9 V1
- 2018年7月1日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2018年7月8日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2018年7月15日(日)愛媛県 松山サロンキティ
- 2018年7月16日(月・祝)高知県 X-pt.
- 2018年7月20日(金)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2018年7月22日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2018年9月2日(日)宮城県 Rensa
- 2018年9月15日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年9月22日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年9月24日(月・振休)大阪府 BIGCAT
- The BONEZ TOUR 「WOKE」 - ENCORE -
-
- 2018年9月30日(日)東京都 Zepp Tokyo
- The BONEZ(ボーンズ)
- RIZEのフロントマンであるJESSE(G, Vo)のソロプロジェクト、BONEZから発展した4人組バンド。JESSEが参加したオーディション企画「Stand Up! Project」をきっかけに出会ったZUZU(G)と共に1stアルバム「Stand Up!」を制作し、2012年11月にリリースした。2013年1月には東京・下北沢SHELTERでワンマンライブを開催。このワンマンライブにPay money To my PainのT$UYO$HI(B)とZAX(Dr)がサポートメンバーとして参加した。この公演がきっかけとなり、The BONEZとして4人体制での活動をスタートさせた。2014年1月には2ndアルバム「Astronaut」を発表し国内と台湾にてライブツアーを開催。このツアーは新ギタリストのNAKAと共に回る。同年7月にNAKA加入後初の音源「Place of Fire」を発表し、年末に東名阪でワンマンツアー「Astro Tour "ONE MAN SHOW"」を行った。2016年3月にはニューアルバム「To a person that may save someone」をリリースし、5月より全国ツアーを開催した。2018年5月に約2年ぶりとなるアルバム「WOKE」を発表。同月よりツアーを開催しており、9月にツアーファイナルで初の東京・Zepp Tokyo公演を行う。