レコードに向けた音にしたい
──今作を制作する上でこだわった部分はどこですか?
瀬上 12inchのサイズを活かしたパッケージング、ブックレットなど全体的にこだわって制作にあたりましたが、大きいのはやはり音ですね。アナログを作るときに「何をマスターにするか」という要素が大事なんです。例えばCDからレコードを作ることも物理的には可能なんだけど、それは今作のプロジェクトでやりたいことではなかったんです。そもそもCD用にマスタリングした時点で抜け落ちてしまう音、要素というのが必ずあって。だから今回、あるものはアナログのハーフインチテープのミックスマスターを引っ張り出してきて、改めてマスタリングする前の状態から制作に入りたかった。
──そのマスター音源は「ソニックアドベンチャー」発売当初に作っていたものですよね。
瀬上 そうです。「ソニックアドベンチャー」シリーズを手がけていた頃は、ちょうどレコーディング機材の過渡期で、この頃まではアナログテープで最終的なミックスを作っていた曲もあったんです。菊地さんにアナログハーフのミックスマスターテープを渡すとき「今までのCDマスタリングとは違ったもの、レコードに向けた音にしたいんだ」って伝えました。
菊地 さっき瀬上さんが言ったように、物理的にはCDのマスターをアナログにしたって問題ないんだけど、アナログならではの音を鳴らすためにはアナログに向けたマスタリングが必要になるんです。
瀬上 CDは「限られた入れ物の中にどれだけデータを入れてあげられるか」ってところが肝なんです。例えば歪ませずにどれだけ音圧を稼げるか、とか。
菊地 そもそもの音の出方が違うからね。CDのマスタリング向けにやっていた調整が、アナログにとってはものすごく邪魔になってしまうこともあるんです。ただ根本的に全部をやり直すわけではなくて、1カ所2カ所触るだけでもよくなることもあって。あとはカッティングの技術も関係してきます。それに関しては、先ほど話した昔なじみのエンジニアにお願いできたのでなんの問題もありませんでした。
──選曲や曲順も今作ならではのものですよね。
瀬上 アナログレコードである以上、収録時間の制約はどうしてもあるわけですから、入れたいものすべてが入れられるわけではないという前提のもと、それぞれの面でストーリーが展開していくように曲を選んでいます。例えば「ソニックアドベンチャー2」のレコードのSide-Aだったらソニック・ザ・ヘッジホッグというキャラクターのストーリーを順に追っていく、みたいな。「ソニックアドベンチャー2」はソニックと当時初登場となる新キャラクターの対比をメインに打ち出したタイトルでしたので、今作でもSide-Cにはシャドウ・ザ・ヘッジホッグをフィーチャーした曲を集めていますし、面によって異なる物語を感じてもらえるような構成になっています。
──「ソニックアドベンチャー2」の初回限定盤では青と赤のカラーバイナル仕様になってるのも印象的でした。
瀬上 一方の「ソニックアドベンチャー」の初回限定盤は、青と白の組み合わせになっています。正直に言うと、盤面色を変えることに対してはけっこう慎重だったんですよ。と言うのも、1980年代に買っていたピクチャーレコードって音があまりよくなかった印象が強くて。
菊地 確かに(笑)。
瀬上 ただスタッフの方に聞いてみたら、今は本当に音に影響がないみたいだったので、せっかくなのでソニックやシャドウにちなんだ盤面色でリリースすることにしました。マーブルとかクリアの盤面も薦められたんだけど、やっぱり溝が見えなくなるのは避けたかったので単色でシンプルな色にしました。
アナログはアナログの、ライブはライブの楽しみ方がある
──今年は「ソニックアドベンチャー」発売から20周年の年でもあります。アナログ盤リリースのほかにもファンからはいろいろな期待が寄せられていると思います。
瀬上 20周年の年だったからなのかはわかりませんが、今年1月にアメリカ・メリーランド州で4日間に渡って開催された「MAG Fest」という音楽とゲームの一大イベントに出演する機会がありまして。僕は「ソニックアドベンチャー」シリーズのインスト楽曲をメインに演奏するトリオ編成のSONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCEとして出演させていただいたんですけど、ありがたいことにライブセットのトリとして出演させてもらったんです。
菊地 すごいね。海外でも人気があるんだ。
瀬上 会場で今回のアナログ盤を先行販売したらすぐ売り切れちゃって。アメリカとヨーロッパのメーカーの直販サイトなんてボックスセットが1分以内に完売してしまったみたいなんですよ。もちろん日本でも人気で、ボックスセットは即日完売でした。
菊地 瀬上さんにとって念願のアナログ盤がファンにも喜ばれているというのは、とても幸せなことだよね。
瀬上 皆さんにも喜んでもらえてうれしいです。アナログにはアナログの、ライブにはライブの楽しみ方があると思っているので、今年またステージに立つ機会があるようだったら皆さんと一緒に「ソニックアドベンチャー」シリーズの曲を楽しみたいですね。
「ソニック×Technics」コラボキャンペーン「LOVE SONIC LOVE Technics」開催決定
このキャンペーンでは、今回の取材場所であるパナソニックセンター東京 テクニクスリスニングルームにて「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」および「SONIC ADVENTURE 2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」のアナログレコード盤の試聴をすることができます。なお参加者には「ソニック×Technics」コラボのオリジナルステッカーをプレゼント。
キャンペーン期間:2018年4月7日(土)~5月6日(日) ※要予約
場所:東京都 パナソニックセンター東京 テクニクスリスニングルーム
- 「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」
- 2018年1月31日発売 / Brave Wave Productions
-
[アナログ]
5940円 / BW-SGA-001
- Side-A収録曲
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- Introduction …featuring "Open Your Heart"
- It Doesn't Matter …Theme of "SONIC"
- Welcome to Station Square
- Azure Blue World …for Emerald Coast
- Run Through The Speed Highway …for Speed Highway
- Pleasure Castle …for Twinkle Park
- Side-B収録曲
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- Believe In Myself …Theme of "TAILS"
- Be Cool, Be Wild and Be Groovy …for Ice Cap
- Theme of "Dr. EGGMAN"
- Mt. Red: a Symbol of Thrill …for Red Mountain
- Blue Star …for Casinopolis
- Lazy Days ~Livin' in Paradise~ …Theme of "BIG"
- Side-C収録曲
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- My Sweet Passion …Theme of "AMY"
- Mystic Ruin
- Theme of "TIKAL"
- Unknown from M.E. …Theme of "KNUCKLES"
- Theme of "CHAO"
- Side-D収録曲
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- Bad Taste Aquarium …for Hot Shelter
- Egg Carrier - A Song That Keeps Us On The Move
- Skydeck A Go! Go! …for Sky Deck
- Theme of "E-102γ"
- Open Your Heart …Main Theme of "SONIC ADVENTURE"
- 「SONIC ADVENTURE2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」
- 2018年1月31日発売 / Brave Wave Productions
-
[アナログ]
5940円 / BW-SGA-002
- Side-A収録曲
-
- SA2 ...Main Riff for "Sonic Adventure 2"
- It Doesn't Matter ...Theme of "SONIC"
- Event: Let's Make It!
- Escape From The City ...for City Escape
- That's The Way I Like It ...for Metal Harbor
- Won't Stop, Just Go! ...for Green Forest
- Live & Learn ...Main Theme of "SONIC ADVENTURE 2"
- Side-B収録曲
-
- Unknown from M.E. ...Theme of "KNUCKLES"
- A Ghost's Pumpkin Soup ...for Pumpkin Hill
- Dive Into The Mellow ...for Aquatic Mine
- Believe In Myself ...Theme of "TAILS"
- This Way Out ...for Prison Lane
- Side-C収録曲
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- Throw It All Away ...Theme of "SHADOW"
- Vengeance Is Mine ...for Radical Highway
- Rhythm And Balance ...for White Jungle
- The Supernatural ...for Final Chase
- For True Story ...for Sonic vs. Shadow
- Supporting Me ...for Biolizard
- Side-D収録曲
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- Fly In The Freedom ...Theme of "ROUGE"
- Lovely Gate 3 ...for Egg Quarters
- I'm A Spy ...for Security Hall
- E.G.G.M.A.N. ...Theme of "Dr. EGGMAN"
- Soarin' Over The Space ...for Cosmic Wall
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Technics
ダイレクトドライブターンテーブルシステム
SL-1200G
- 瀬上純(セノウエジュン)
- 株式会社セガゲームスのサウンドディレクター。1993年に当時のセガ・エンタープライゼスに入社し、主に「ソニック」シリーズなどの家庭用ゲームタイトル向けの楽曲制作に携わる。1998年にリリースされた「ソニックアドベンチャー」の開発にはサウンドディレクター、リードコンポーザーとして関わり、数多くのボーカルソングを制作した。その後、同ゲームのメインテーマ曲「Open Your Heart」を歌唱したジョニー・ジョエリとユニットを結成し、ギタリストとして活動。Crush 40という名義で数多くのゲーム音楽やオリジナル曲を制作する傍ら、「東京ゲームショウ」をはじめとしたイベントへの出演も果たす。また「ソニック」シリーズ25周年となった2016年からは「ソニックアドベンチャー」シリーズのインスト曲を演奏するトリオ編成のバンド・SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCEの一員としてもステージに立っている。2018年1月には自身が音楽を手がけた「ソニックアドベンチャー」「ソニックアドベンチャー2」の音楽を集めたアナログ盤を同時リリースした。
- 菊地功(キクチイサオ)
- ミキサーズラボ・ワーナーミュージックマスタリングのエンジニア。1979年にワーナーパイオニアに入社。山下達郎、中森明菜、クラムボンなど数多くのアーティストの作品のマスタリングを手がけている。2017年5月にミキサーズラボのスタジオにカッティングマシンを導入。CDマスタリングやハイレゾマスタリングといった業務だけでなく、アナログ制作の業務も請け負っている。