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瀬上純×菊地功|20年の時を経た今、アナログで聴く「ソニックアドベンチャー」の音楽

ドリームキャスト用のゲームソフトとしてリリースされた「ソニックアドベンチャー」(1998年発売)および「ソニックアドベンチャー2」(2001年発売)の音楽を集めたアナログレコード盤、「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」「SONIC ADVENTURE 2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」がそれぞれ12inchのLPレコード2枚組のパッケージとして、同時リリースされた。

音楽ナタリーでは長年「ソニック」シリーズの音楽に関わってきた瀬上純と、「ソニックアドベンチャー」シリーズなどの音楽のマスタリングおよび、今回発売したアナログ盤のマスタリングを担当した菊地功にインタビューを実施。東京・有明にあるパナソニックセンター東京「テクニクス リスニングルーム」で今作の中から4曲を選んで試聴をしてもらい、感想を聞いた。またアナログ盤制作に至った背景、アナログ盤ならではの音作りについても語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介

リスニングルームでの「Live & Learn」

──取材前に「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」および「SONIC ADVENTURE 2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」から4曲を選んで聴いていただきました。どういう理由で4曲を選びましたか?

東京・パナソニックセンター東京 テクニクス リスニングルームでの試聴の様子。

瀬上純 最初にかけたのは「ソニックアドベンチャー」の「My Sweet Passion」という曲。僕が手がけたわけではないんだけど、この作品の中で一番ミックスがいい曲だな、と思っていて。いわゆるスタジオでの演奏の空気感をいい感じでキャプチャーできていたトラックだったので、こういう空間で聴いてみたかったんです。次が「Lazy Days ~Livin in Paradise~」。これも「My Sweet Passion」と同じニューヨークのスタジオでレコーディングされた曲なんだけど、自分が携わったものも聴いてみたくて。曲中にパーカッションが入れ替わりつつ出てくる賑やかな曲だから、その辺りがどう聞こえるのか試してみたくて。ほかにも、レコードの最外周のトラックと最内周のトラックという聴き比べの意味合いもありました。

──残り2曲は「ソニックアドベンチャー2」の曲ですね。

瀬上 ガラッとムードが変わった「Fly In The Freedom」は、ルージュというキャラクターのテーマ曲ですね。これも1曲目と同じ理由で、録り音とミックスが素晴らしいと思っていたのでリスニングルームで聴いてみたかったんです。最後は自分のバンド、Crush 40の代表曲ともいえるナンバーで、ファンの方にもおなじみの「Live & Learn」。この曲はファンの方々に育てていただいた一曲だと思っているんです。皆さんのおかげもあって、僕自身が向き合うことも多いナンバーなので、この機会にかけさせてもらいました。

──リスニングルームで試聴した感想はいかがでしたか?

瀬上純

瀬上 すごい部屋ですね。驚きました。パーカッションの音、ボーカルの声、どれも鮮明に聞こえるし、かと言ってどれか1つの音がうるさすぎたりしない。

菊地功 音のバランスがすごくいいですね。高温がキツくないし、低音も出すぎていない。中域の音もすごく整理されているので聴きやすかったです。発売したあとの音源をこうやって改めてリスニングルームで聴く機会は滅多にないから、今日は貴重な経験をさせてもらいました。

瀬上 贅沢な空間で聴かせてもらって光栄です。「いつかリスニングルームを持ちたい」とは常々思ってますけど、さすがにこれだけの環境を整えるにはそれなりに大変ですから……こういう空間が家にあったらなあ(笑)。

菊地 リスニングルームは持っていないけど、僕の家で使ってるアンプはTechnics(テクニクス)さんのものなんですよ。確かSU-3200。もう40年ぐらい前に買ったやつだと思うんだけど、それでもまだ直し直し使ってます。

瀬上 リスニングルームで音を堪能させてもらって、家でもレコードをかけたくなりました。

「ソニックアドベンチャー」で初めてマスタリングを

──瀬上さんと菊地さんは1998年発売の「ソニックアドベンチャー」の音楽を制作した際に、一緒に仕事をしているんですよね。

瀬上 もう20年くらい前になるんですけど、僕が「ソニックアドベンチャー」の音楽を手がけるようになったときにマスタリングをお願いしたのが菊地さんでした。「ソニックアドベンチャー」より前に自分が関わったゲームタイトルでは、楽曲を外部のマスタリングスタジオでマスタリングしたことってなかったんですよ。そもそも曲数がそこまで多くなかったし、作った曲を自分で調整していればそこまでの違和感はなかったから。ただ「ソニックアドベンチャー」は当時の次世代機であるドリームキャストでリリースされるゲームで、それまでよりもディスク容量が増えていたり、圧縮技術の進歩のおかげで、収録曲数をものすごく増やすことができたんです。当然関わるスタッフも多かったから楽曲が生まれるプロセスも、収録場所も多岐に渡ってくる中で、きちんとしたマスタリングをしなければ統一感が出せなくなって。ゲームの中で違和感なく音楽を鳴らすために、どうしても客観的に音を判断して調整してくれる人が必要だった。

──「ソニックアドベンチャー」は「ソニック」シリーズにとって初の3D作品として注目を集めていましたが、音楽に関しても革新的な変化があったと。

瀬上 はい。楽曲のタイプですとか、そういうものも大きく変化したタイミングではあったのですが、プロダクション的な観点でも大きな変化がありましたね。「ソニックアドベンチャー」に収録される曲が100曲近く集まる中で、誰にマスタリングをお願いしようか探していたときに、「菊地さんが手がける音はたぶん瀬上くんに合うよ」ってバンド界隈の方から教えてもらったこともあって、菊地さんに仕事をお願いしたんです。

菊地功

菊地 最初はその曲数に驚きましたね(笑)。普段のCDなどのアルバム制作の案件だと多くても20曲くらいなんですけど、突然100曲近い曲数がDATで届いたわけですから。ちゃんとそれぞれにIDが打ってあればいいんだけど、テープによってはIDが1つだけのDATに何曲も入っていたりするからその度に瀬上さんとかスタッフさんに電話で確認してね。とは言え、もともと僕は瀬上さんが作るようなロックテイストの曲が大好きだから、作業自体はとても楽しかったことを覚えています。

──「ソニックアドベンチャー」の音楽をマスタリングする際にこだわったところは?

菊地 低い帯域の質感や聞こえ方が、そのときのエンジニアだったり機材の関係で違うことが多かったので、そこの調整には気を付けました。それと抜けのよさだけは全部一緒にしたいと思ってて。もちろんすべてを同じように聴かせることはできないけど、基本的には自分が定めた基準をクリアした、抜けのいいサウンドになるようにマスタリングをしてました。

作りたくても作れなかったもの

──今回のアナログ盤に関しては、菊地さんが制作のきっかけになったと伺いました。

瀬上 そうなんです。去年の春ごろに菊地さんから「うちの会社にアナログのカッティングマシンが入ります。内覧会に来てください」って連絡がありまして。あいにく僕はそのタイミングで現段階における「ソニック」シリーズ最新作、「ソニックフォース」のボーカル収録作業のために海外に行かなければならなかったので、内覧会に参加できなかったんですけど、「すごく興味があるので是非、伺わせてください」って話していたんです。それで改めて機会を設けてもらったんですけど、そのとき僕は社内の関係者を何名か連れて行ったんですよ。最初から商品化を想定していたので現場で「こういうところでアナログ盤を作ろうと思うけどどう?」って話をして、今作が作られることになったんです。

──菊地さんの会社がカッティングマシンを導入したのは、近年のレコード市場の盛り上がりを受けて、ということなんですか?

SL-1200Gの針を落とす瀬上純。

菊地 いや、そうじゃないんですよ。僕はもう5年くらい前から「カッティングマシンを入れたい」と思って、ずっと探していたんです。一昨年の暮れに「いいマシンが見つかった」って連絡をもらったんだけど、使えるようにするためにフルメンテナンスが必要だからってことで、去年の5月頃にようやくそれが届いたんです。ちなみに、カッティングエンジニアにも5年くらい前から声をかけてて……。

瀬上 カッティングエンジニアも今では相当貴重な人材ですからね。

菊地 そうです。昔から付き合いがあるエンジニアを、マシンが入ったらすぐ来てもらえるような状態にしてたんです。その彼が定年になったのが一昨年か去年くらいのタイミングで。で、そんな話を進めている間に瀬上さんとはときどきアナログの話をしてたよね。

瀬上 してましたね。僕、幼い頃からレコードが身近にあって。母親がラジオの仕事をしていた関係もあっていろんなレコードがあったし、父親もレコードを聴くのが好きだったんですよね。だからレコードを聴くっていう音楽体験がわりと自然なことだったんです。ただし、僕が会社に入ってゲーム音楽を作り始めた頃にはもう商品としてのレコードを作る文化がなくなってしまっていて。サウンドトラックのリリースとかは全部CDだったんですよね。だから僕からしたらレコードって“作りたくても作れなかったもの”なんです。

菊地 これはあとから知ったんだけど、カッティングマシンを見つけてくれた人が瀬上くんとも仕事をしたことがある人で。

瀬上 そうそう(笑)。さっき検聴のときにかけさせてもらった「My Sweet Passion」などの3曲はニューヨークでレコーディングをしたものなんですけど、そのときのプロダクションの担当者が今回カッティングマシンを入れてくれた人なんです。「ソニックアドベンチャー」20周年のタイミングで、これまで仕事をしてきた人たちとのつながりでレコードを作れることになるなんて、本当に奇跡的なことだと思っています。

「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」
2018年1月31日発売 / Brave Wave Productions
「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」

[アナログ]
5940円 / BW-SGA-001

Amazon.co.jp

Side-A収録曲
  1. Introduction …featuring "Open Your Heart"
  2. It Doesn't Matter …Theme of "SONIC"
  3. Welcome to Station Square
  4. Azure Blue World …for Emerald Coast
  5. Run Through The Speed Highway …for Speed Highway
  6. Pleasure Castle …for Twinkle Park
Side-B収録曲
  1. Believe In Myself …Theme of "TAILS"
  2. Be Cool, Be Wild and Be Groovy …for Ice Cap
  3. Theme of "Dr. EGGMAN"
  4. Mt. Red: a Symbol of Thrill …for Red Mountain
  5. Blue Star …for Casinopolis
  6. Lazy Days ~Livin' in Paradise~ …Theme of "BIG"
Side-C収録曲
  1. My Sweet Passion …Theme of "AMY"
  2. Mystic Ruin
  3. Theme of "TIKAL"
  4. Unknown from M.E. …Theme of "KNUCKLES"
  5. Theme of "CHAO"
Side-D収録曲
  1. Bad Taste Aquarium …for Hot Shelter
  2. Egg Carrier - A Song That Keeps Us On The Move
  3. Skydeck A Go! Go! …for Sky Deck
  4. Theme of "E-102γ"
  5. Open Your Heart …Main Theme of "SONIC ADVENTURE"
「SONIC ADVENTURE2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」
2018年1月31日発売 / Brave Wave Productions
「SONIC ADVENTURE2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」

[アナログ]
5940円 / BW-SGA-002

Amazon.co.jp

Side-A収録曲
  1. SA2 ...Main Riff for "Sonic Adventure 2"
  2. It Doesn't Matter ...Theme of "SONIC"
  3. Event: Let's Make It!
  4. Escape From The City ...for City Escape
  5. That's The Way I Like It ...for Metal Harbor
  6. Won't Stop, Just Go! ...for Green Forest
  7. Live & Learn ...Main Theme of "SONIC ADVENTURE 2"
Side-B収録曲
  1. Unknown from M.E. ...Theme of "KNUCKLES"
  2. A Ghost's Pumpkin Soup ...for Pumpkin Hill
  3. Dive Into The Mellow ...for Aquatic Mine
  4. Believe In Myself ...Theme of "TAILS"
  5. This Way Out ...for Prison Lane
Side-C収録曲
  1. Throw It All Away ...Theme of "SHADOW"
  2. Vengeance Is Mine ...for Radical Highway
  3. Rhythm And Balance ...for White Jungle
  4. The Supernatural ...for Final Chase
  5. For True Story ...for Sonic vs. Shadow
  6. Supporting Me ...for Biolizard
Side-D収録曲
  1. Fly In The Freedom ...Theme of "ROUGE"
  2. Lovely Gate 3 ...for Egg Quarters
  3. I'm A Spy ...for Security Hall
  4. E.G.G.M.A.N. ...Theme of "Dr. EGGMAN"
  5. Soarin' Over The Space ...for Cosmic Wall
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瀬上純(セノウエジュン)
株式会社セガゲームスのサウンドディレクター。1993年に当時のセガ・エンタープライゼスに入社し、主に「ソニック」シリーズなどの家庭用ゲームタイトル向けの楽曲制作に携わる。1998年にリリースされた「ソニックアドベンチャー」の開発にはサウンドディレクター、リードコンポーザーとして関わり、数多くのボーカルソングを制作した。その後、同ゲームのメインテーマ曲「Open Your Heart」を歌唱したジョニー・ジョエリとユニットを結成し、ギタリストとして活動。Crush 40という名義で数多くのゲーム音楽やオリジナル曲を制作する傍ら、「東京ゲームショウ」をはじめとしたイベントへの出演も果たす。また「ソニック」シリーズ25周年となった2016年からは「ソニックアドベンチャー」シリーズのインスト曲を演奏するトリオ編成のバンド・SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCEの一員としてもステージに立っている。2018年1月には自身が音楽を手がけた「ソニックアドベンチャー」「ソニックアドベンチャー2」の音楽を集めたアナログ盤を同時リリースした。
菊地功(キクチイサオ)
ミキサーズラボ・ワーナーミュージックマスタリングのエンジニア。1979年にワーナーパイオニアに入社。山下達郎、中森明菜、クラムボンなど数多くのアーティストの作品のマスタリングを手がけている。2017年5月にミキサーズラボのスタジオにカッティングマシンを導入。CDマスタリングやハイレゾマスタリングといった業務だけでなく、アナログ制作の業務も請け負っている。