音楽ナタリー Power Push - ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) × 伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)

弾丸を手にした無敵な2人

実際に曲作りまでたどり着くのはまれ

──伊藤さんは最初に思い描いたものとBOSSさんがリリックを乗せたものでイメージは変わりましたか?

左から伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)。

伊藤 いや、イメージ通りでしたね。なんとなく最初からこうなるイメージはありました。

──言わずとも同じものを見ていたと。歌詞のすり合わせはあったのですか?

BOSS 「弾丸さえあれば」だけ。すり合わせたのは、“弾丸(タマ)”を漢字にするかカタカナにするかってくらい。

──できあがった曲はTHA BLUE HERBでしかないし、OLEDICKFOGGYでしかなくて、でもまったく新しいものにも聴こえました。8月に初めて会ったとは思えないくらいのスピード感ですよね。

BOSS 俺はいろんなアーティストに会って酒も飲むし話もする、みんないいヤツだから意気投合して「曲を一緒に作ろう」って話になることも多いんだけど、実際に曲を作るとこまではなかなかいけない。彼らにも俺にもタイミングがあるしね。今回はそれがやれたのがよかったと思う。

伊藤 僕にとっても挑戦だったし新しいことができたと思います。本来、合体しないはずのものが合体できたのはうれしかったですね。

BOSS 楽しかったよ。

「よかった、BOSSくんもクズで」

BOSS 飲んだ帰りに伊藤が「よかった、BOSSくんもクズで」って言ったんだよね。なんか俺はそれがうれしかった。パンクもヒップホップもクズなんだよ。だからある意味、正解なんだよね。クズのくせに「クズじゃない」っていうのがヒップホップで。要は強がってるんだよね。コンプレックスからきてるから。それはパンクも一緒かもしれなくて、どっちも虐げられたマイノリティなんだけど、ヒップホップはそこでなんか逆切れしちゃう。不良、クズ、ジャンキー……いろんな言い方があるけど、そこでつながれたのが俺はうれしかった。

左からILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)。

伊藤 そんなこと言ったんだ……何も覚えてないです(笑)。

──お互いのどこに魅力を感じていますか?

BOSS 今話してきた通りだね。楽しいヤツらだよ。

伊藤 BOSSくんは話が早い。どんどん進んでいくフットワークの軽さはいいなって思います。

BOSS 勢いは大事だよ。今まで何度も「曲作ろうぜ」って話になったけど、実現できたことは少ないからね。

──では最後に、12月16日のツーマンライブについて聞かせてください。当日はコラボ曲「弾丸さえあれば」も披露するんですよね。

BOSS 楽しみだね。ちゃんと練習しないとな(笑)。

伊藤 BOSSくんがラップしてるとき、僕は何をしていようかって不安はあります(笑)。

BOSS あははは(笑)。「手持ち無沙汰になっちゃうかな」って思ったから、あれでも削ったんだよ、俺のラップ。長すぎるかなって思ったもん。普段は曲の間奏とかどうしてるの?

伊藤 マンドリンを弾いてます。もともと楽器はやってなかったんですけど、間奏が長いからどうしていいかわからなくてマンドリンを持ち始めたんですよ。

BOSS じゃあ当日もマンドリンを入れたら? 適当にやってる振りでもいいけど(笑)。まあ飲んでりゃいいよ。余裕かまして。16小節なんてすぐだから。弾丸はもうあるわけだし。

左からILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)。
THA BLUE HERB × OLEDICKFOGGY

2016年12月16日(金)京都府 KYOTO MUSE

出演者
THA BLUE HERB / OLEDICKFOGGY

OLEDICKFOGGY × ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)コラボ作品「弾丸さえあれば」2017年1月25日発売 [CD]1000円 Diwphalanx Records / PX316
「弾丸さえあれば」
THA BLUE HERB(ブルーハーブ)
THA BLUE HERB

ILL-BOSSTINO(Rap)とO.N.O(Track Maker)が1997年に札幌で結成。ライブではDJ DYE(LIVE DJ)がバックDJを務める。THA BLUE HERBの最大の特徴は強いメッセージを持ったリリック。デビュー当時は東京のヒップホップシーンと地方に目を向けないメディアへの怒りを全面に打ち出して大きな話題となった。そして、1998年に1stアルバム「STILLING, STILL DREAMING」、2002年に2ndアルバム「SELL OUR SOUL」をリリース。独自の世界観を確立したリリックとソリッドでミニマルなビートが人気を集め、アンダーグラウンドなヒップホップシーンで支持を集めた。2007年に3rdアルバム「LIFE STORY」を発表後、約3年半で日本全国179カ所におよぶライブを敢行。2011年2月にそのツアーのライブドキュメンタリーDVD「PHASE3.9」を、2012年5月に4thアルバム「TOTAL」を発売した。2015年にILL-BOSSTINOがtha BOSS名義で1stソロアルバム「IN THE NAME OF HIPHOP」を発売し、全国ツアーを開催する。その東京・LIQUIDROOM公演の模様を映像化したライブDVD「ラッパーの一分」が2016年8月にリリースされた。

OLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)
OLEDICKFOGGY

伊藤雄和(Vo, Mandolin)、スージー(G, Cho)、TAKE(B)、四條未来(Banjo)、yossuxi(Key, Accordion)、大川順堂(Dr, Cho)からなるラスティック・ロックバンド。エモーショナルでポリティカルな日本語詞と1960年代後半~70年代前半の日本のフォーク、ニューミュージック的な温かいメロディー、そして時にはハードコア・パンクな側面を見せる独特なサウンドが特徴。2003年に結成されて以来、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、年間平均100本のライブで知名度を上げてきた。2012年「京都大作戦2012 ~短冊に こめた願いを 叶いな祭~」に出演後、活躍の場を広げ、2014年には映画「クローズEXPLODE」の挿入歌として代表曲「月になんて」が使用された。2016年3月に5th新作アルバム「グッド・バイ」をリリース。全国縦断63会場ツアーを敢行し、ツアーファイナルの東京・渋谷TSUTAYA O-EASTワンマンを大成功に終わらせる。2016年8月には川口潤監督によるドキュメンタリー映画「オールディックフォギー / 歯車にまどわされて」が劇場公開された。