音楽ナタリー Power Push - ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) × 伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)

弾丸を手にした無敵な2人

THA BLUE HERBとOLEDICKFOGGYが、12月16日に京都・KYOTO MUSEでツーマンライブを開催する(参照:THA BLUE HERBとOLEDICKFOGGY、初顔合わせツーマン実現)。

2組が競演するのはこの日が初めて。そこで音楽ナタリーでは、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB / Rap)と伊藤雄和(OLEDICKFOGGY / Vo)の2人にインタビューを実施。競演の経緯や、1月に作品としてリリースするコラボ曲「弾丸さえあれば」の制作秘話などを聞いた。

取材・文 / 柴山順次 撮影 / 西槇太一

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初対面は今夏

──お二人が出会ったきっかけを教えてください。

伊藤雄和(OLEDICKFOGGY / Vo) KYOTO MUSEの店長である行貞(利晃)さんがつないでくれたんですよ。

ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB / Rap) 今年の8月に一席設けてくれたんだよ。12月にツーマンをやることは決まっていたんだけど面識がなかったから、「会ったほうがいいし、飲みましょうか」ってノリだったと思う。

──面識がない状態でツーマンが先に決まっていたんですね。それまでお互いのことは認識していました?

左から伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)。

伊藤 僕は知ってましたよ。

BOSS 俺も名前は普通に知ってた。最初は札幌のパンクスの仲間が教えてくれて。で、俺がよくポスターをまきに札幌を回るといろんなところにこのOFのマーク(OLEDICKFOGGYロゴ)が貼ってあったから、「ああ!」って。ちゃんと曲を聴いたのは今年の春、三重にライブに行ったとき。俺たちを三重に呼んでくれる仲間が伊藤たちとも仲間で、その仲間が移動の車の中やイベントの最後にOLEDICKFOGGYの曲をずっと流してたんだよね。

──初めて聴いたときはどう感じましたか?

BOSS メロウだなって思った。パンクなんだけどメロウ。初めて聴いた俺にもちゃんと言葉が聴き取れるし、下手な英語を使ってないから、雰囲気だけでやってないなって。リリックが聴き取れるのはいいよね。

──伊藤さんはTHA BLUE HERBをどうやって知ったのですか?

伊藤 大阪にCHOPPERっていうスケーターの友達がいるんですけど、彼は普段パンクしか聴かない人間で。でもそのCHOPPERが「ヒップホップもTHA BLUE HERBだけは聴く」って言っていたんです。彼含めて「普段ヒップホップを聴かないけどTHA BLUE HERBは聴く」って人は多いんですよね。OLEDICKFOGGYのアートワークをやってくれてる人もTHA BLUE HERBが好きだったし。それで自分も聴いてみたら、よく聴くようなヒップホップの感じではないなと思って進んで聴くようになりました。特に僕は歌詞にすごくシンパシーを感じましたね。

──どんな部分にシンパシーを感じたのでしょうか?

伊藤 ヒップホップのイメージの1つに「お金が入ってうれしい」みたいな歌詞ってあるじゃないですか。そういうのじゃないところがいいなと。そういう歌詞も好きだし、グッとくるときもあるんですけど。BOSSくんとは考え方が近いのかなって思いました。あとよく歌詞を覚えられるなって思います(笑)。ずっとしゃべってるのがすごい。

──BOSSさんは伊藤さんの歌詞をどう捉えていますか?

左から伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)。

BOSS ロマンチックな詞が多いよね。ラップは直接的な表現が多いけど、伊藤はわりと抽象的だと思う。あと女性の気持ちを歌うでしょ。あれは俺にはないことだから。そういうことを歌うのってSIONだけじゃなかったんだなって思った。「のし上がってやる」とか「世の中クソだぜ」って歌詞は誰でも書ける、誰もが思ってることだし。でもそこから歌詞を自分の世界として発展させていくのが難しいんだよね。そういう音楽を作れているのはすごいなと思う。

──お互いのライブを観たことはありますか?

BOSS 俺はまだない。

伊藤 僕はあるんです、実は。

BOSS え! マジで!? いつ?

伊藤 すごい前です。深夜24時過ぎのclubasiaで。

BOSS 知らなかった。1人?

伊藤 いや、役者の渋川(清彦)くんと2人で。そのとき誘ってくれた共通の友人にも、「OLEDICKFOGGYとTHA BLUE HERBは一緒にやったほうがいいよ」って言われたんですよ。でもそう簡単にやれないですから(笑)。

「一緒に曲やろうって言ってるよ」

──ちなみに8月に初めて会ったときはどんな感じだったのですか?

BOSS 会うのは初めてだけど音楽も知っていたし映像も観ていたし、あと俺らのライブDVD「ラッパーの一分」「PHASE 3.9」を手がけてくれてる仲間の川口潤っていう監督がOLEDICKFOGGYの映画(ドキュメンタリー映画「オールディックフォギー / 歯車にまどわされて」)も監督していて、ほぼ同時進行で動いていたから、伊藤がすぐ向こう側にいる感じはあったかな。監督から「昨日も伊藤と一緒にいた」ってよく言われて「そうなんだ、よろしく言っておいて」って感じだった。そうやってずっと付かず離れずの関係だったんだけど、一緒に飲んで気付いたら友達になってた(笑)。

左からILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)。

伊藤 僕は緊張していましたよ。

BOSS してた?

伊藤 してましたよ(笑)。あまり会うことのない世界の人だからどういうノリなのかわからないし。でも飲み屋だったから緊張感もだんだんほぐれていって盛り上がった気がします。

──どういう会話をしたのですか?

BOSS その時点で一緒にライブをやることは決まっていたし、「どうせやるならソールドアウトさせるために何かやりたいよね」って話から一緒に曲を作るとこまでは決まっていたんだよ。それでレコーディングをする前に会っておきましょうかっていうのが8月の飲み会の趣旨だったんだよね。日程が迫っていたから「いつもどう録ってる?」とか「どういう曲にする?」って話を延々としてた。

──曲を一緒に作ることが決まっている段階でも会ってなかったんですね。

BOSS 会ってないね。

伊藤 僕は川口監督から聞きましたから。「一緒に曲やろうって言ってるよ」って。それで監督からBOSSくんのメールアドレスを教えてもらって連絡したんですけど返信が一切なくて(笑)。監督に「返信ないっすけど」って言ったら「大丈夫、必ず連絡するって言ってる」って言われてから1カ月くらい返信がないっていう(笑)。

THA BLUE HERB × OLEDICKFOGGY

2016年12月16日(金)京都府 KYOTO MUSE

出演者
THA BLUE HERB / OLEDICKFOGGY

OLEDICKFOGGY × ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)コラボ作品「弾丸さえあれば」2017年1月25日発売 [CD]1000円 Diwphalanx Records / PX316
「弾丸さえあれば」
THA BLUE HERB(ブルーハーブ)
THA BLUE HERB

ILL-BOSSTINO(Rap)とO.N.O(Track Maker)が1997年に札幌で結成。ライブではDJ DYE(LIVE DJ)がバックDJを務める。THA BLUE HERBの最大の特徴は強いメッセージを持ったリリック。デビュー当時は東京のヒップホップシーンと地方に目を向けないメディアへの怒りを全面に打ち出して大きな話題となった。そして、1998年に1stアルバム「STILLING, STILL DREAMING」、2002年に2ndアルバム「SELL OUR SOUL」をリリース。独自の世界観を確立したリリックとソリッドでミニマルなビートが人気を集め、アンダーグラウンドなヒップホップシーンで支持を集めた。2007年に3rdアルバム「LIFE STORY」を発表後、約3年半で日本全国179カ所におよぶライブを敢行。2011年2月にそのツアーのライブドキュメンタリーDVD「PHASE3.9」を、2012年5月に4thアルバム「TOTAL」を発売した。2015年にILL-BOSSTINOがtha BOSS名義で1stソロアルバム「IN THE NAME OF HIPHOP」を発売し、全国ツアーを開催する。その東京・LIQUIDROOM公演の模様を映像化したライブDVD「ラッパーの一分」が2016年8月にリリースされた。

OLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)
OLEDICKFOGGY

伊藤雄和(Vo, Mandolin)、スージー(G, Cho)、TAKE(B)、四條未来(Banjo)、yossuxi(Key, Accordion)、大川順堂(Dr, Cho)からなるラスティック・ロックバンド。エモーショナルでポリティカルな日本語詞と1960年代後半~70年代前半の日本のフォーク、ニューミュージック的な温かいメロディー、そして時にはハードコア・パンクな側面を見せる独特なサウンドが特徴。2003年に結成されて以来、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、年間平均100本のライブで知名度を上げてきた。2012年「京都大作戦2012 ~短冊に こめた願いを 叶いな祭~」に出演後、活躍の場を広げ、2014年には映画「クローズEXPLODE」の挿入歌として代表曲「月になんて」が使用された。2016年3月に5th新作アルバム「グッド・バイ」をリリース。全国縦断63会場ツアーを敢行し、ツアーファイナルの東京・渋谷TSUTAYA O-EASTワンマンを大成功に終わらせる。2016年8月には川口潤監督によるドキュメンタリー映画「オールディックフォギー / 歯車にまどわされて」が劇場公開された。