高城れに「OTOGIMASHOU」インタビュー|10年を超えたソロ活動への思い、ファンとの関係性を語る (2/2)

1stアルバムを上回る濃さ

──そのほかの新曲も粒ぞろいですが、先ほどおっしゃった「きみの世界をまもって!」はめちゃめちゃ攻めた1曲で、確かにライブで聴きたくなる仕上がりです。

この曲、すごく速いんですよ! ちょっとだけテンポを落としてもらったんですけど、それでも私には速い。しかも、この曲はライブでお客さんに歌っていただくパートが多いので、「みんな大丈夫かな?」と思ってます(笑)。でもこの10年の信頼関係があるのでモノノフのみんなを信じていますし、一緒に盛り上がれたらいいな。

──こういうタイプの楽曲は、予習なしでも一緒に盛り上がれると思いますよ。そして、アルバムにはシティポップ調で大人びた作風の「Lovely Monster」も新曲として収録されています。個人的にめちゃめちゃお気に入りの1曲です。

え、うれしい! 今回の新曲は、今まであまり歌ったことがない曲調が多くて。私のソロ曲は王道アイドルソングのようなさわやか系が多いので、ちょっとアダルティな雰囲気の「Lovely Monster」は歌うのがすごく難しかったです。作曲を担当いただいたSPENSERさんと作詞を担当いただいたASOBOiSMさんがレコーディングにいらして、ボーカルのディレクションもしていただいたんですけど、まずご本人が実演してくださったんですよ。それが「私には無理だ!」と思っちゃうくらい素晴らしくて。私なりにがんばって歌いました。

──歌い方や曲調はもちろん、歌詞も大人っぽいですよね。

歌詞は「自分らしさとはなんだろう」というテーマになっていて。「こっち、きて?」というセリフのようなフレーズを録るときに「吐息みたいな感じでささやいて」とディレクションいただいたんですけど、レコーディングでささやいた経験がなかったので、ちょっと恥ずかしかったです(笑)。そういう部分でも、新しさを感じてもらえたらうれしいですね。

──こういった楽曲を高城さんが歌うことに意外性を感じますし、これまで高城さんやももクロの楽曲に触れてこなかった音楽ファンにも刺さりそうです。それに、ファンタジー要素のある楽曲が多く並ぶ中に「Lovely Monster」のようなリアルな歌詞の曲が差し込まれていると、その存在感がより際立ちます。

そうですね。今回のアルバムは1曲1曲が違った味になっていて、しかもそれぞれに深みがあります。前作の「れにちゃんWORLD」もかなりバラエティ豊かでしたけど、今回はそれを上回る濃さだなと思います。

高城れに「OTOGIMASHOU」通常盤ジャケット

高城れに「OTOGIMASHOU」通常盤ジャケット

これからも自分なりに歌を届けていきたい

──今作には去年のソロツアー「まるっと10年まるごとれにちゃんポジティブがすぎるツアー」の千秋楽公演で初披露され、これが初音源化となる楽曲「message」も収録されています。

ソロと言っても私1人でライブをやっているわけではなくて、たくさんの方々の協力があるから開催できているし、観に来てくれるファンの方がいるから成立している。「message」は、私に関わるすべての人への感謝の気持ちを表現した曲を作りたいと思って制作した楽曲で、自分自身の言葉で思いをつづったほうがいいと考え、初めて1曲まるまる作詞したんです。本当はもっとおしゃれな歌詞を書きたかったんですけど、自分には語彙力が足りなくて。やっぱりやめたほうがいいのかなとか、悩みに悩んだ挙句、「感謝を伝えるのなら、自分が思った言葉のままでいいんだ」という結論になり、不器用ながらも思ったことをそのままストレートに表現しました。あと、絶対に「紫」と「ありがとう」というワードを入れたいなと思っていたので、ちゃんと歌詞に盛り込むことができてホッとしています。

──おっしゃる通り、高城さんの気持ちがストレートに伝わってくる、すごく素敵な歌詞だと思いました。そして、多彩な楽曲が並ぶこのアルバムを締めくくるのが、序盤にも話題に出た「シオン」です。

さっきもお話ししたように、この10年間でいろんな自分と向き合って葛藤したり、さまざまな感情に出会ったりする中で、自分を見失いそうになったこともあるし、今でもそういう瞬間があります。でも、そんなときに音楽に助けられ、「結局はどれも本当の自分じゃないか。特別じゃなくてもいい、平凡でも自分は自分なんだな」と気付いた。「シオン」の歌詞にはその感覚が反映された、今みんなに届けたい言葉がたくさん詰まった歌になっています。

──この数年間の変遷の集大成であると同時に、「物語はまだまだ続くよ」という希望のメッセージも込められていますよね。

「どんなに悩んでいても自分の物語はまだまだ続いていくんだから、君は君のままでいいんだよ。一緒に進んでいこうね」と呼びかける、すごく前向きな曲ですね。歌詞のラスト3行はストーリーテラーとしての私からのメッセージと受け取っていただけると、楽曲に込められた思いがより伝わってくるんじゃないかなと思います。

──今回のアルバムは各楽曲に強いメッセージが込められていて、全体的にすごくカラフルな作風なので、何度聴いてもまったく飽きがこない作品だと感じました。そんな個性的な楽曲群を表現する高城さんの歌も、より強く響いてくるなと。決して一本調子ではなく、それぞれの曲調に合った歌い方で表現している。素晴らしい成長を感じました。

歌が上手になった実感は、今もまったくないんですよ。私はもともと歌があまり得意ではなかったですし、今もどちらかというと苦手意識が強いですけど、モノノフの皆さんに歌声を褒めていただくことが多いので、少しは胸を張って誇ってもいいのかなと思っています。これからも自分なりに歌を届けていきたいですし、それをソロ活動のテーマとして掲げて進んでいきたいです。

お客さんが楽しめることを一番大事に

──アルバムには「まえがみ姫」と題したストーリーミニブックレットが封入されるそうですね。

アルバムのテーマが御伽噺なので、それに合わせて絵本のようなものを作ってみました。アルバムの発売に向けて、SNSで楽曲とともに物語を途中まで公開しているんですけど、その結末はこのブックレットでしかわからないので、ぜひ読んでほしいです。今抱えている悩みなんかどうでもよくなるくらい面白おかしい物語になっていますし、イラストも私が描かせていただいているので、それも込みで楽しんでいただけたらうれしいです。

高城れに「OTOGIMASHOU」初回限定盤の展開図。

高城れに「OTOGIMASHOU」初回限定盤の展開図。

──このアルバムは映像として視覚化しやすいというか、絵をイメージしやすい曲が多いと感じていたので、絵本のようなブックレットが付属するのはすごく理にかなっているなと思いました。

ありがとうございます。物語の中に歌詞の一部が入っていたり、曲の題名が入っていたりするんですよ。

──そして、アルバムのリリースに先駆けて10月2日にZeppツアーがスタートします。このインタビューが公開される頃には、残すところ10月20日のKT Zepp Yokohama公演のみとなります(※インタビューは9月下旬に実施)。

今回はアルバムの世界観を再現しつつ、お客さんみんなが楽しめることを一番大事にしたいと思っています。おとぎの世界と素晴らしい楽曲たちをシンプルに楽しんでいただくライブにしたいです。

──ソロ活動10周年という大きな節目を経た今、まだまだやりたいことがたくさんあるかと思います。今後ソロで実現させてみたいことは何かありますか?

パペットスンスンとコラボしたいです! (スタッフに向けて)できないですかね? パペットスンスンの「とてと」という曲が大好きで、緊張する仕事の前に必ず聴くんですよ。あとは、いろいろとカバー曲を歌ってみたいです。YouTubeでの「歌ってみた」企画を最近なかなか更新できていないので、好きな曲や最近気になっている曲をたくさん歌ってみたいなと思っています。

公演情報

高城れに「OTOGIMASHOW」Solo Concert Tour 2025

  • 2025年10月2日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2025年10月4日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2025年10月20日(月)神奈川県 KT Zepp Yokohama

プロフィール

高城れに(タカギレニ)

1993年6月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に結成されたももいろクローバーZのオリジナルメンバーで、担当カラーは紫。キャッチフレーズは「ももクロの鋼少女」。2015年3月9日に愛知・名古屋CLUB QUATTROでももクロメンバー初となるソロコンサート「高城の60分4本勝負」を行った。以降1年に1回のペースでソロコンサートを実施している。2021年8月に初のソロアルバム「れにちゃんWORLD」、2025年10月に2ndアルバム「OTOGIMASHOU」をリリース。2ndアルバムの発売に合わせてZeppツアー「高城れに『OTOGIMASHOW』Solo Concert Tour 2025」を開催し、10月20日に神奈川・KT Zepp Yokohamaでツアーファイナルを迎える。