高垣彩陽|「戦姫絶唱シンフォギア」への愛を込めて

高垣彩陽が8月21日にニューシングル「Lasting Song」をリリースする。

表題曲はアニメシリーズ第5期で完結編となる「戦姫絶唱シンフォギアXV」のエンディングテーマ。これまで高垣はアニメの第1期より「Meteor Light」「Next Destination」「Rebirth-day」「Futurism」「Lasting Song」とエンディングテーマを担当してきたが、本作はこれまでの4曲とは違ったエモーショナルなロックナンバーに仕上がっている。高垣はこの曲でシングルでは初となる作詞に挑戦。音楽ナタリーでは高垣にインタビューし、「戦姫絶唱シンフォギア」シリーズの集大成となる作品で作詞を担当した覚悟と歌詞に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 曽我美芽

集大成の第5期で作詞がしたい

──アニメ「シンフォギア」シリーズも長いですね。

ありがたいことに、第5期を迎えまして。ただ、テレビシリーズは今作で完結と謳っているんです。もともとは3期で終わるはずだったんですけど、原作者の上松範康さんと金子彰史さんが続編を構想してくださって……。

──3期終了後に、4期と5期の制作がいっぺんに発表されましたよね。

そうなんですよ。ある意味、自らハードルを上げていくスタイルが「シンフォギア」チームらしいなと。しかも、4期の時点で物語の展開的にも出し惜しみせず、かつキャラクターソングにしても「これって、本当のラストで歌うべきなんじゃ? ここで歌っちゃって大丈夫なんですか?」と出演者のみんなが驚くような曲を用意してくださったんですよね。それを経ての5期なので、皆さんの期待もきっと大きくなっていると思いますし、私たちもその期待にきっと応えられるという自負を持って、今アフレコに臨んでいます(※本インタビューは6月下旬に実施)。

高垣彩陽

──ニューシングルの表題曲「Lasting Song」は、高垣さんにとってシリーズを通じて5作目のエンディングテーマになります。同曲はご自身で作詞をなさっていますが、それは自ら希望して?

はい。今まで自分のアルバムで「縁」(2015年11月発売の2ndアルバム「individual」収録曲)という曲を作詞・作曲したり、スフィアでメンバー4人とrinoさんとの共作という形で「Music Power→!!!!」という曲(2019年5月発売の10周年記念アルバム「10s」収録曲)の作詞をしたことはあるものの、シングル表題曲の作詞は初めてで。しかもタイアップ曲ということでプレッシャーも大きかったんですけど、5期も続くアニメシリーズで、そのすべてのエンディングテーマを歌わせてもらえるなんて、稀なことじゃないですか。

──そもそも5期まで続くアニメ自体、珍しいですからね。

そう。だから本当に得難い経験をさせてもらっていますし、その集大成である5期では私も作詞に関わりたいという思いをひそかに抱いていて。それをスタッフさんにお伝えしたところ、たぶんスタッフさんサイドでは「高垣にやらせて大丈夫か?」みたいな不安もあっただろうし、私自身不安だったんですが、任せていただけることになりました。今までの4曲のエンディングテーマはすべて作詞をmavieさん、作曲・編曲を藤田淳平(Elements Garden)さんが手がけてくださったんですが、mavieさんが私にバトンを渡しつつ背中を押してくださったので、私も覚悟が決まりました。

みんなと声を合わせられる歌にしたい

──「Lasting Song」の作曲・編曲は引き続き藤田淳平さんです。これまでの4曲はいずれもトランスもしくはシンセポップ寄りのデジロックでしたが、今回は毛色が違いますね。

そうなんです。「シンフォギア」シリーズでは、最初に淳平さんや上松さんやアニメのプロデューサーさんたちが集まって、どういうエンディングテーマにするか話し合う会議を開くんです。そこに私も参加しているんですけど、今回、初めて金子さんから楽曲の方向性についてご提案があったんです。それが「エモーショナルで、よりバンド然としたロックサウンド」というものだったんですね。

──なるほど。「これ、エンディングテーマなの?」と疑ってしまうくらい、ラウドでアグレッシブな曲ですよね。

やっぱり金子さんをはじめ、制作に関わっている誰もがシリーズ完結作である「戦姫絶唱シンフォギアXV」に対して並々ならぬ思いを抱いていて。7年かけて作ってきたシリーズのゴールが設定された今、そのゴールを彩るのにふさわしい楽曲とはどんなものか、皆さん本気で考えてくださっているのが会議でも伝わってきました。

──当然、そこで高垣さんも意見を出されたわけですよね?

はい。私から出させてもらった意見は「みんなと声を合わせられる歌にしたい」でした。というのも、私がシリーズを通じて歌ってきた「シンフォギア」楽曲の中には、そういうアンセム的な曲がなくて。でも、「シンフォギア」シリーズの根底にあるのは音楽だし、ここまで歌とストーリーの親和性が高いアニメはそうないし、それこそが作品の一番の強みであり魅力だと思うんです。だから「みんなも音楽そのものになってほしい!」という気持ちも込めて、作曲の淳平さんにお願いしました。ネタばらししちゃうと、イントロが明けた直後の「ウォー ウォー」を、皆さんも一緒に歌ってもらえたらうれしいです。

出会いを尊ぶ歌

──「戦姫絶唱シンフォギアXV」は「シリーズ完結作」であり「集大成」であるとおっしゃいましたが、そのエンディングテーマの曲名は「Lasting Song」。つまり、まだ歌は続いていくと。

やっぱり完結作という点で曲名はすごく悩みましたね。というか「そうか、自分で作詞したら、自分で曲名も決めなきゃいけないんだ!」とあとから気付いて(笑)。

──ということは、歌詞を書き終わってからタイトルを付けたと。

結果的には、そうです。とにかく私は作詞の経験が浅すぎるので、歌詞を書くにあたって作詞家の及川眠子さんや岩里祐穂さんの著作を読み漁りまして。その中に「歌詞の内容がブレないように仮タイトルでもいいから付けておいたほうがいい」という旨のことが書いてあったんです。私もそれに倣ったんですけど、やっぱり書いているうちに「このタイトルだと、ちょっと違うかも……」と悩んでしまい、結局レコーディング当日にようやく決まったんです。

高垣彩陽

──よいタイトルだと思いましたが、難産だったんですね。では、作詞のほうは?

1~4期まで毎回そうだったんですけど、プロデューサーさんからシナリオをいただいて、原作の金子さんから「エンディングテーマの歌詞はこういう方向性にしてほしい」というイメージノートをいただくんです。そのノートにはけっこう細かく「何話のこのシーンにフォーカスしたい」といった要望も書かれていて、それを参考にしながらmavieさんが歌詞を書かれていました。同じように私もシナリオとイメージノートをいただいたんですけど、まず金子さんが設定したテーマが「別離」だったんです。当然それは「XV」のストーリー展開の中で描かれる別れであり、今作で「シンフォギア」シリーズが完結するという意味では作品との別れでもある。だけど、別れを嘆くばかりではなくて、その別れに際して抱く感情は、出会いがあったからこそ生まれるものなんだと。つまり「出会いを尊ぶ歌にしてほしい」というのが金子さんの真意だったんですね。

──はい。

その金子さんが与えてくださったテーマが私の中ですごくフィットしたというか、私がエンディングテーマの歌詞を書くうえで言いたかったこととリンクしていて。それは、誰かと別れることになってしまったとしても、その存在はきっと私の歌の中で生き続けるということ。なので、まったくスラスラ書けたわけではないんですけど、そこが一致していたので芯だけはブレなかったはずです。

──その高垣さんが「言いたかったこと」には、高垣さんご自身の実体験も反映されている?

かなり反映されていますね。いくつかの別れを経験して「あのときこう伝えられればよかったのに、もう二度と会うことはできないんだ……」と後悔したこととか。誰だってなるべく後悔しないように生きたいとどこかで思っているはずですが、失ってしまったときに後悔することは避けられないですよね。でも、その後悔も失われてしまった存在が自分に残してくれたものだし、後悔の大きさはその人に対する思いの強さとイコールじゃないかって。それは「XV」の展開にも重なっている部分があるので、自分の正直な言葉を作品に重ねられたんじゃないかと思います。