Taiki×明希(シド)インタビュー|憧れの人からの“プレゼント”を携えて新たなステージへ

俳優としても活躍する山崎大輝がTaiki名義によるニューシングル「終わりの始まり」を10月19日にリリースした。

今回のシングル表題曲の作詞はシドのマオ(Vo)、作曲はシドの明希(B)が手がけており、カップリングにはTaikiが新たに立ち上げた音楽プロジェクト「眠りにつくまで付き合って」の楽曲を収録。かねてからシドのファンを公言していたTaikiにとっては念願のコラボとなる。今回のタッグを記念して、音楽ナタリーではTaikiと明希にインタビュー。レコーディング時のエピソードなどとともに、Taikiのディープなシド愛や、明希から見たアーティストTaikiの魅力などを掘り下げた。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 緒車寿一

今こそ勇気を出して……

──「終わりの始まり」は、Taikiさんが長年憧れていたシドのマオさん、明希さんが提供した楽曲です。Taikiさんはいつからシドを聴かれていたのでしょうか?

Taiki 中学生のときですね。当時のクラスメイトたちが「シド大好き」と言っていて聴き始めたんですが、僕がどハマりするのはもう少しあとなんです。16歳で俳優の活動を始めて、18歳で上京をしたのを機に音楽に対する意欲が湧いていろいろと聴くようになりました。その流れで改めてシドさんの曲も、過去のものから新しいものまで聴いているうちにグサッと刺さりまして。中でも感動したのが「紫陽花」。ほかのアーティストさんがあまり表現されていないような、毒々しさとか陰の部分を感じたんですよね。自分の中に秘めている、表には出せない気持ちというのが、シドさんの曲を通して昇華されていく感覚になって、「音楽ってこんなに素晴らしいんだ。自分も作る側へ行きたい」と強く思いました。

Taiki

Taiki

──Taikiさんが音楽活動を始めて、今年で5年目になります。このタイミングで明希さんとマオさんに楽曲提供をお願いしたのは、どうしてだったんですか。

Taiki アーティストとして新たな境地に行きたいのもありましたし、「終わりの始まり」を皮切りに「眠りにつくまで付き合って」という新しいプロジェクトを始動することになったのも大きいです。

──「眠りにつくまで付き合って」を始めるにあたって、Taikiの門出の曲は特別な人と組みたかった。

Taiki そうなんです。やっぱりシドさんは僕の原点なので、今こそ勇気を出してご一緒したいと思いました。

明希 楽曲提供の依頼を受けた際、最初にお手紙をくださったんです。そこでTaikiくんのことを初めて認識しまして、僕が言うのもおこがましいですけど、すごく礼儀正しくて、すごく僕らのことを気遣ってくださった。それでいて自分の思いも手紙の中にちゃんと宿っていて、誠意を感じたんですよね。僕、楽曲提供の相談で手紙をいただいたのが初めてで。ピュアな気持ちが伝わったし、そしてちゃんと我々を立ててくださっていて純粋にうれしかったです。

Taiki シドさんからは音楽を通して、自分の人格とか「何を表現したいのか」とか、僕の軸を作っていただいてるので、そのことを手紙に書くのがめちゃくちゃ恥ずかしくて、夜中に書こうと決めていたんですよ。そうじゃないと、本当に思っていることを書けない気がして。言葉にできることは全部文字にして「とにかく一緒に何か作る機会をいただけたら」って、その一心でした。まさに……ラブレターでしたね(照)。

──お返事をもらったときの気持ちはどうでした?

Taiki 本当に嘘みたいでした。楽曲提供のお話が決まった瞬間は、喜び以上にちゃんと歌い上げないといけないし、お二人が書いてくださった音楽をいろんな人に届けたいし。とにかく誠心誠意歌わなきゃなって、一気に気持ちが切り替わりましたね。

左からTaiki、明希。

左からTaiki、明希。

刀一本で戦うスタイルのTaiki

──楽曲の打ち合わせはZoomで行ったそうですね。

明希 そうです。この話が決まってからミュージックビデオとか音源などできる限り、これまでの楽曲をチェックしていきました。そのうえで「どういう曲が好きか」とか「Taikiくんがどんな曲を歌いたいのか」を聞きつつ、ラブソングの方向がいいんじゃないかなと思ったところから、デモを制作し始めましたね。

Taiki よく覚えているのが、「サビはどういきたいですか? 広がっていく感じがいいですか?」とサクサク要点だけを押さえて「はい、わかりました」とおっしゃっていたところ。1から10まで聞くことなく「あとは楽曲で判断してくれ」というプロフェッショナルさを明希さんの言葉から感じました。打ち合わせが終わったあとに「これがプロなんだよな」と感動しましたね。

──「終わりの始まり」は壮大に広がっていくドラマ性も大きな魅力だと思うんですけど、これまでのTaikiさんの楽曲は、どちらかと言うとアッパーでポップな楽曲が多かったですよね。

明希 僕もそういう印象でした。ただ、見た目は大人っぽいけど、話してみたら少年っぽいところが僕の中での第一印象だったんですよ。そのギャップを楽曲の中で両方出せたらいいなと思いました。少年が歌っているんだけど、大人の温かみや包み込むような感じを出したい。なので今回はどバラードにして、ピアノとアコースティックの音色で、Taikiくんのファンの子を優しく包んであげられるような楽曲が似合うだろうなと。

Taiki 曲だけの状態から聴かせてもらったんですけど「これを僕が歌っていいのか」というのが最初に思ったことで。

──歌詞を受け取ったときはどんな印象を持ちましたか?

Taiki 優しいメロディで、それこそ包み込むイメージを感じました。そこにマオさんの歌詞が乗ったことで主人公の思いがよりイメージできるようになって、それが……胸にくるんですよね。

──明希さんはマオさんの歌詞を見て、どんなことを思いました?

明希 彼らしいなって。

Taiki ですよね! 本当にそう!

明希 いろんな思いを受け取って書いたのかな、って気がしますよね。

明希

明希

──野暮なことをお聞きしますけど、マオさんらしさって言葉にするとなんでしょう?

明希 んー、難しい(笑)。シンプルに「マオくんっぽい」という言葉になっちゃう。ただ、マオくんらしいこの歌詞をTaikiくんが歌うと、大人な一面が感じられるんです。好きな人と一緒にいて、最後は結ばれなかったのかもしれないけど、気持ちが残りつつも新たな始まりに向かうような。そんな複雑な気持ちをTaikiくんが歌うと、聴いてるほうも心がギュッとなるんですよね。僕はレコーディングにも立ち会ったんですけど、決して背伸びではない表現力というのがすごくよかったです。

──僕も現場で見学していましたけど、レコーディングでは明希さんがみっちりディレクションをされていました。

明希 Taikiくんが本当に一生懸命でしたね。ブースに入ってワンコーラス歌ったときに「本当はこうやって歌いたいんだろうな」というのがどんどん伝わってきたので「それなら、こうやって歌ってみたら」と提案して。すごく素直にやってくださるし、しかもどんどんよくなっていくし、タフでもあって。

──何度もテイクを重ねていきましたよね。

明希 ディレクションって「もうここが限界かな」とか、そういう見極めとの戦いなんです。「もう声が出ないだろうな」「これ以上はキツイだろうな」と思ったら80点くらいのテイクを録っておいて一旦止めるんだけど、Taikiくんは果てることがない。「わかりました、やります」と応えてくれて、すごい突き詰めて歌ってくれたので、ディレクションをやっていてひさしぶりに熱が上がりましたね。

──レコーディング中も「本当にタフだな」と言ってましたね。

明希 ボーカリストって、レコーディング中に飴とか喉にいいお茶を山ほど並べるけど、Taikiくんは水だけっていう。なんか刀1本で戦っていく感じがカッコイイなと思いましたね。

こんなにうれしいプレゼントは今までない

──明希さんのディレクションについて、どんなことを感じました?

Taiki ブースに入って立ち方やマイクの握り方まで教えていただいて。僕が「こうしたいんだな」というのを汲み取ってくださって、本当にうれしかったですね。そもそも僕は表に立っている明希さんしか見たことがないわけですから、もしかしたら近くに行くことによって自分のイメージとは違う顔を見てしまう可能性もあるわけじゃないですか。憧れていればいるほど、幻想が膨らんでしまうので。なんですけど、明希さんはめちゃくちゃ丁寧に教えてくださるし、気遣ってくださるし、それこそ僕が丸腰で戦うから、わざわざ事務所から喉にいいハーブティーを持ってきてくださったんです。「そんなことまでしてくださるのか」っていう!「もっと偉そうにしてください!」って思いましたね(笑)。あの日は、自分の中で受け取るものが多かったです。

──レコーディングを通して、明希さんはTaikiさんのボーカリストとしての魅力をどう感じましたか?

明希 ちゃんと歌詞を読んで主人公になろうとしてるというか、やっぱり俳優のお仕事もされている方なので、自然と自分を解き放って感情を外に出すことがすでにできていて、そこはすごいなと思いましたね。

Taiki 自分なりに「こういうふうに表現したい」というのはもちろんあるんですけど、この曲は知らず知らずにこの主人公にされたというか。デモを聴いたときから、自然と引き込まれていったんですよ。特別なことは考えてなくて、歌っている最中は、ただただこの曲の主人公として生きていました。

左からTaiki、明希。

左からTaiki、明希。

──ラフ音源を聴いたときは、何を感じました?

Taiki レコーディングが終わってすぐにエンジニアさんがラフミックスを届けてくださって。いざ聴いたら、ワケがわからなくなってボロ泣きしたんですよ。憧れのアーティストさんと楽曲を作れたこともそうだし……この曲を通してさらに憧れたし、いろんなものがフラッシュバックした感じでしたね。

──先日のライブで「終わりの始まり」を初披露したときも、涙を流しながら歌っていましたよね。

Taiki そんなに泣くタイプではないんですけど「いよいよ、ファンの方やいろんな方に発信できるんだな。本当にここで歌うんだな」と思ったら、やっぱり胸にくるものがあって。イントロを聴いた瞬間に「まずいまずい!」って、しかも涙腺が緩んだせいで喉がキュッとなったし、そんな感じでした。

──歌っている本人が誰よりも泣いてるっていう。

Taiki そうそう!(笑) 急にああなっちゃいましたね。

──改めて「終わりの始まり」はTaikiさんにとって、どんな楽曲になりましたか?

Taiki (目を潤ませながら)いや……宝物ですよ、本当に。うん……こんなにうれしいプレゼントは今までないです。

明希 そうやって言ってもらえると、僕のほうもうれしいですよね。