ナタリー PowerPush - ケラ&ザ・シンセサイザーズ × FLOPPY

世代は違えどベクトルは同じ? 脱線ニューウェイブ対談

傍若無人だったからねぇ

──写楽さんは影響されたアーティストというと?

写楽 影響受けたって意味では、やっぱり有頂天ですね。

KERA (写楽氏の耳を見ながら)そんな、耳に輪っか、いっぱいつけて(笑)。

写楽 KERAさんにファンとして初めてお会いしたときにも、同じこと言われました(笑)。

KERA 5個もつけてるからね。なんで会ったんだっけ?

写楽 某企画で、KERAさんと一般ファンが対談するっていうのがあったんです。それで「メンバーをクビにする」って話をしたら「そのピアスで脅してるんだ?」って言われて。池尻大橋の喫茶店で。

KERA 全然覚えてないや(笑)。俺、時間どおりに行った? 待たされた?

写楽 ちょっとだけ(笑)。

KERA 傍若無人だったからねぇ。

写楽 で、(KERAさんは)着いてまずカレーとコーラを頼んで。

KERA いきなり食ってた? しょうがないなあ、叱っとくよ(笑)。

「休みの日は何やってますか?」「キンタマ!」

──KERAさんは有頂天のときって、そんなに傍若無人だったんですか?

KERA 有頂天、そんなに悪かったっけ?

三浦 悪かったよ。雑誌のインタビューで「好きな食べ物はなんですか?」みたいな平たいこと聞かれたことがあって。

KERA ギターの河野(裕一/コウ)が一番嫌いなタイプの質問だ。

三浦 で、いくつかはちゃんと答えてたんだけど「体の部分でどこが好きですか?」って聞かれたときに……飽きてきちゃったんだろうね、「キンタマ」って答えて(笑)。そこでスイッチが入っちゃって、後はなにを聞いても答えは全部「キンタマ」。「好きな場所は?」「キンタマ!」。「休みの日は何やってますか?」「キンタマ!」。終わったあとレコード会社のプロモーターに「なんだあれは!」って怒られてさ。オレらの言いわけは「好きなもんは好きなんですよ」(笑)。FLOPPYはいいよね、誠心誠意答えてくれるもん。

KERA お行儀いいよね。やっぱりストレス発散にどっかで猫殺したりとかするの?

写楽戸田 しません、しません(笑)。

KERA そういうの知りたいな。何も溜まっていかないの?

写楽 溜まりますね。

KERA それ、ライブで発散するの?

写楽 発散は……しないですかね。

KERA しないのか(笑)。

ドラマチックなだけじゃ終わらない

KERA じゃあさ、音楽作る原動力ってのは、音楽が好きだからってこと?

戸田 そのような感じです。若い頃はもう少しパンク的な心持ちで取り組むこともあったのですが。

KERA 音楽家なんだね、純粋に。

三浦 2人とも個人作業ですごく深いとこまで作り込むから、作り終わった後は何も残らないというか、灰になってるよね。バンドで作るのとは違う灰のなり方なんじゃないかな。せーの!でバーン!って録ってさ、終わった後「よし、飲み行くぜ!」ていうのとはやっぱり違う感じがあるんじゃないかな。

KERA 中野(テルヲ)君とかそうだったよ。ロンバケ(LONG VACATION / 1991~95年に活動。現在は休止中)の頃は。彼がほぼ灰になるぐらいの状態でまず素材を作ってきて、バンドがそれにあわせて演奏する、みたいなやり方だったから。彼だけ負担が大きくて申し訳なかった。でも他のメンバーは手伝おうにも手伝いようがないし。芝居もそうだけど、稽古の2カ月前くらいから動き出して、ひとつの世界観にある期間没頭するわけでしょ? それは灰にもなるよね。俺なんかアルバムっていうと、じゃあどんなコンセプトで、ってなっちゃうんだけど、2人の世代はアルバムって、もうコンセプト云々じゃないんでしょ? なんかモチーフになるアルバムがあったりするの?

写楽 そういうのはないですかね。

KERA 作ろうって言ったときには曲はもうできてるの?

写楽 半々ぐらいですね。例えば、今回は「メテオストライク」と「エブリデイ」って曲がもともとあって、「メテオストライク」の詞の世界観でアルバムをトータルに作りたいなっていうのがあったんです。で、そこ以外は各自自由にって。

KERA 世界観っていうのは歌詞も含めてってこと?

写楽 そうですね。オーバーテクノロジーというか、行き過ぎた科学で世界が終わったあと、ふたたび世界が復興する、みたいな。終焉と再生というトータルなイメージで歌詞を書きたいなと思って。そうじゃない曲もあるんですけど。

KERA はっきりしてるじゃん(笑)。終焉ってどんなの? 「メトロポリス」とか「鉄腕アトム」みたいな? それとも、もっとヘビーなもの?

写楽 手塚治虫的な「科学の行き過ぎはよくない」みたいな。科学が暴走して終わるんだけど、まだ人がいるから結局何かしらの文明が始まるんです。で、始まるかな、ぐらいのとこでアルバムが終わる感じ。

KERA ドラマチックだよね。今やってる舞台(「黴菌」)は、太平洋戦争の末期から始まって復興に向かわんとする時期で終わる話なんだけど、そういうのっていいなあ。

三浦 そこんとこ、KERAさんと写楽は似てるよね。希望だったり絶望だったりものすごくドラマチックなことがあるんだけど、その逆のことが最後にちょこっとくっついて、納得いくようないかないようなところで終わる。そのバランス感覚がFLOPPYとケラリーノ・サンドロヴィッチの書く“戯曲”の共通点。

KERA 我々の世代はさ、青春期にYMOが「テクノポリス」とかで未来を奏でていたわけですよ。僕は砂原(良徳)みたいにYMOフリークじゃないからそんなに細かいとこはわかんないですけど。「1980」って映画撮ったときもさんざん言ったんだけど、ああいうバラ色の未来っていうものを、半分ウソだなってわかっていながらも、メインモチーフにし得た最後の時期だった気がするんだよね。昔は携帯電話なんかできたら人々の生活が一変して、働かなくてもよくなる(笑)みたいな幻想があったじゃない。だけど現実は、幸せになっていくわけではなく、ただ普通に便利な日常に取り込まれていくっていうね。

ケラ&ザ・シンセサイザーズ「Body and Song」 / 2010年12月8日発売 / 2415円(税込) / 電子音楽部 / DDCH-2322

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CD収録曲
  1. MORE SONG
  2. ニセモノ
  3. 今はミイラ
  4. パパのジャズ
  5. オンガク
  6. 機械じかけの子供たち
  7. ケムリの王様
  8. BODY AND SONG

FLOPPY「Over Technology」 / 2010年12月8日発売 / 2415円(税込) / 電子音楽部 / DDCH-2321

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CD収録曲
  1. Over Technology
  2. low-bit Disco
  3. メテオストライク
  4. 滅びのイド
  5. 時空ホロン
  6. エブリデイ
  7. 僕達は何かを目指す
  8. low-bit Disco "Don't Be Tricked Remix" Remixed by Mark Mothersbaugh (DEVO)
ケラ&ザ・シンセサイザーズ ワンマンライブ
「Bodies and Songs」
  • 2011年2月11日(金)東京都 代官山UNIT
    OPEN 18:00 / START 19:00
    料金:前売 4300円 / 当日 4800円(ドリンク代別)
FLOPPY
「Tour Over Technology」
  • 2011年1月15日(土)大阪府 大阪FANJtwice
    OPEN 17:30 / START 18:00
    料金:前売 3300円 / 当日 3800円(ドリンク代別)
  • 2011年1月16日(日)愛知県 名古屋池下CLUB UPSET
    OPEN 17:30 / START 18:00
    料金:前売 3300円 / 当日 3800円(ドリンク代別)
  • 2011年1月29日(土)東京都 代官山UNIT
    OPEN 17:00 / START 18:00
    料金:前売 3800円 / 当日 4300円(ドリンク代別)
ケラ&ザ・シンセサイザーズ
(けらあんどざしんせさいざーず)

1995年、元有頂天のKERA(Vo)と三浦俊一(G, Syn)を中心に「80年代ニューウェイヴの復権」を掲げバンドを結成。翌96年よりザ・シンセサイザーズを名乗るようになる。1998年に1stミニアルバム「ザ・シンセサイザーズ」、2003年にはバンド名を「ケラ&ザ・シンセサイザーズ」に改め、2004年に2ndミニアルバム「ナイト・サーフ」を発表。2006年にカバーアルバム「隣の女」、2007年に初のフルアルバム「15 ELEPHANTS」を立て続けにリリースする。2010年12月におよそ3年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Body and Song」が完成。「歌と歌詞」に重点を置いた新たなスタイルを提示した。数度のメンバーチェンジを経て、現在はKERA(Vo)、三浦俊一(G, Syn)、福間創(Syn)、RIU(B)、Reiko(Dr)の5名で活動中。

FLOPPY(ふろっぴー)

小林写楽(Vo,Technology)、戸田宏武(Syn,Technology)の2人によるテクノポップユニット。2004年に活動を開始し、2005年に初音源「FLOPPY」をリリース。以降、コンスタントにリリースやライブを行い、幅広い層からの支持を集めている。80年代歌謡曲を思わせるキャッチーなメロディと、近未来的なビジュアル、レトロフューチャーな世界観が特徴。