鈴木京香「dress-ing」特集|30周年で歌手デビュー レーベルヘッド・藤井隆の熱意と使命

京香さんの歌詞、すごくチャーミングだと思いました

──鈴木さんは作詞も担当されていますが、これもやはり藤井さんの希望で?

最初は「一節だけでもどうでしょう?」「無理ですかね?」とお願いしたら、「やったことがないので、わからないです」というお答えだったんです。でも京香さんは以前本を出版なさってますし、書くことはお好きだそうです。エッセイではないので「普段思ってることを書かなくてもいいんですよ」「フィクション、ノンフィクションが混ざっててもいいと思うんです」と相談してみたら、「書いてみます」と言ってくださったんですね。京香さんは舞台のときのインタビュー記事で「チャレンジする」ことについて前向きにお話になられていたので、作詞にチャレンジしていただけませんか?とご相談させていただきました。

──藤井さんから見て、作詞家としての鈴木さんはいかがでした?

鈴木京香

台詞という言葉と向き合うお仕事をなさってるので、言葉選びに対してすごく慎重ですてきだなあ、と感じました。京香さんが書かれた歌詞についてここで私が言うのもおこがましいですが、すごくチャーミングだと思いました。

──確かに、そこはかとないかわいらしさがあふれていますよね。

私の中で京香さんは強い芯を持った人物を演じられることが多い印象なんですけど、歌詞にはなんとも言えない柔らかな部分やかわいらしいお人柄がにじみ出ているように感じました。 それから作詞には「音に合わせる言葉選び」「文字数合わせ」という、歌詞ならではの約束がありますが、京香さんにはあまり細かいことを気にせず、まずは書いていただくようにお願いしました。

──鈴木さんの発する言葉をそのまま使いたかった?

はい。京香さんが初めて歌詞を書くということを大切にしたかったので、作曲してくれた皆さんには事前に「歌詞に合わせてあとでメロディの変更をお願いするかもしれませんが、いいですか?」と相談していたんです。tofubeatsさんはカバーなので少し話が違いますが、私の思いを汲んでくださって相談に乗ってくれました。冨田さんとDÉ DÉさんも「対応します」と言ってくださいました。これはすべて京香さんのチャレンジ精神とお人柄あってこそで。皆さん応じてくださったんだと思います。

──初めての歌で作詞に挑戦するというのは相当にハードルの高いオーダーだと思うのですが、チャレンジ精神旺盛な鈴木さんだからこそ受け入れてもらえたのかもしれませんね。

すごいチャレンジだったと思うんです。マネージャーさんもたくさん、ご協力してくださったけど、もしかしたら最初はやるべきではないと思われたかもしれないし、断られる可能性もあったわけです。でも京香さんと同じくチャレンジ精神で引き受けてサポートしてくださったのはありがたかったです。

──できあがった楽曲を聴いて、鈴木さん自身がどう思ってるのか聞いてみたいですね。

レコーディング中もその後も私からは直接、感想は伺わなかったんです。それぞれ感想はお話いただいてとてもうれしかったんですが、ここで私の口からお伝えするのは控えさせていただけたらと思います。京香さんの感想や思いはお渡し会でファンの皆さまにお話しになるのが、すべてだと思っています。ご自身の言葉で各楽曲を聴いてどう思われたのか、歌詞はどういう意味なのか、お渡し会でご本人からファンの皆さんへお話ししてくださったら光栄です。

「あなたの音楽、待ってましたよ」言ってくださる方がいたから

──「dress-ing」は意義深い作品になりましたし、きっと長年の鈴木さんファンも喜ぶ作品ではないかと思います。

藤井隆

そうありたいです。だからこそ、どうやったら多くの方に知ってもらえるんだろうなと考えてます。プロモーションをどうすればいいか、ずっと考えてます(笑)。自分がCDを出したとき、ずいぶん時間が経ってから応援してくださってる方から「〇〇さんプロデュースの歌だったんですね。知りませんでした」などと言ってくださる方がいます。伝えたい人に伝わってなかった、ということですよね。早見さん、椿さん、RGさんのCDをリリースしたときも、なんとか作品が世に広まるようプロモーションやイベントをスタッフと考えてきましたが、今回の京香さんのリリースに関するイベントは、お渡し会1回だけなので、私の判断ミスで京香さんのファンの方に情報が届いていなかったら「中止したほうがいいんじゃないか」「こんな明確なミッションを果たせないなら、レーベルなんて辞めてしまえ」と注意を受けると思うんです。「SLENDERIE RECORDを立ち上げて4年間、何をしてたんだ」って話ですよね。数年後に京香さんのファンの方に「知りませんでした」って言われたら、絶対立ち直れなくなると思います。ぜひお力、貸していただけませんか?

──僕らにやれる範囲でしたら(笑)。鈴木さんのファンがいつもどこで情報を仕入れているのか、まずはそこを把握したいですよね。

はい。さかのぼって調べています。「大人のけんかが終わるまで」をご覧いただいた京香さんのファンの方々にぜひ、お越しいただきたいです。

──今だとTwitterなどのSNSを通じて、身の回りに鈴木さんのファンの人がいたら伝えてもらえるよう、草の根的に口コミを広げるのも有効ですけど……。

舞台を観に来られた方の中で、ご自身のTwitterアカウントで今回のリリース情報を広めてくださった方がいたんですけど、そうやっていただけるのは本当にありがたいですね。それがきっかけで、いろんな人に知っていただけるかもしれないから。あと、音楽好きの方にはどんなふうに伝えたらいいんでしょう?

──「水星」を鈴木京香さんが歌う、というトピックだけでも飛び付く人はかなりいると思いますよ。むしろクラブミュージック好きがたくさん集まりすぎて、肝心の鈴木さんファンが参加できなくなってしまう懸念のほうが大きいです。

音楽ファンの方のこともずっと考えています。どこかにうまく着地できるようになっていたいです。SLENDERIE RECORDでのリリースは、普段音楽活動を行っていないアーティストのCDでも、興味を持ってくださった方がいたからがんばれたんです。僕も「お前の音楽なんかどうでもいいんだよ」って言葉をかけられたこともありましたけど、一方で「あなたの音楽、待ってましたよ」と言ってくださる方がいることを知って、ここまでやってこれましたから。さらにプロデュースだけじゃなく、歌詞やパッケージのデザインなども各所のプロの方に教えていただきながら自分でやってこれたので、「できないことではない」という確信が持てるようになってきたんです。

──本作では藤井さんはプロデューサーのみならず、アートディレクター、プロモーターのような立ち位置でもあるんですね。

今回のCDは、京香さんのことが大好きだからここまで動けたと思うんです。つまりそれって、ものを作るときの根源みたいなものですよね。でも僕が「プロデューサーになりたい」と言ったならば、今後は自分の考えた企画だけでなく、依頼を受けた企画を担当することも必要になるわけです。僕はまだそこまでできていなくて。

──でもSLENDERIE RECORDは藤井さんの“好き”が原動力になっていて、それがレーベルのカラーとして明確になりつつあると思うんです。

なるほど……でも、僕の色が強いレーベルだからこそ、なおさら失敗できないです(笑)。お渡し会、絶対来てくださいね。

藤井隆
鈴木京香「dress-ing」
2019年2月27日発売 / SLENDERIE RECORD
鈴木京香「dress-ing」

[CD+ブックレット+スリーブケース+メッセージカード]
2700円 / YRCN-90295

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 海岸線より[作詞:鈴木京香 / 作曲:冨田謙]
  2. わたしの左岸[作詞:鈴木京香 / 作曲:DAISUKE ENDO(DÉ DÉ MOUSE)]
  3. 水星[作詞:鈴木京香、オノマトぺ大臣、tofubeats / 作曲:tofubeats]

イベント情報

鈴木京香「dress-ing」発売記念スペシャルイベント
  • 2019年3月2日(土) 東京都 タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
    START 13:00 <出演者> 鈴木京香 / 藤井隆(司会)
藤井隆(フジイタカシ)
1972年3月10日生まれ。1992年に吉本新喜劇オーディションを経て、お笑い芸人として吉本興業入り。2000年にシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューし、同年「NHK紅白歌合戦」に初出場する。数々のシングルのほか、2002年発売のアルバム「ロミオ道行」、2004年発売のアルバム「オール バイ マイセルフ」などで高い評価を得ながらも、2007年8月発売のシングル「真夏の夜の夢」以降はしばらくアーティストとしての活動を休止。2013年6月にニューシングル「She is my new town / I just want to hold you」で6年ぶりにアーティスト活動を再開し、2015年6月におよそ11年ぶりとなるオリジナルアルバム「Coffee Bar Cowboy」を主宰レーベル・SLENDERIE RECORDから発表した。同レーベルでは自身の作品のほか、2016年8月には早見優「Delicacy of Love」、2018年6月にはレイザーラモンRG「いただきます」、同年9月には椿鬼奴「IVKI」をリリース。鈴木京香のシングル「dress-ing」では全面プロデュースを手がけた。
鈴木京香(スズキキョウカ)
宮城県出身の女優。高校2年のときにスカウトされたことをきっかけに、モデルとして芸能活動をスタートさせる。1988年にカネボウ水着のキャンペーンガールに選ばれ、1989年には映画「愛と平成の色男」で女優デビュー。1991年4月から1年間放送されたNHK朝の連続ドラマ「君の名は」では主演として真知子役を演じ、全国的な知名度を得た。以後は映画、テレビドラマ、演劇などさまざまな舞台で活躍。2019年2月にシングル「dress-ing」を発表する。