鈴木このみ|4thアルバムは自分への果たし状

毎日パブでギネス飲んで「うまーい!」

──続く新曲は3曲目の「Humming Flight!」。この曲は鈴木さんの作曲ですが、アイルランド音楽をベースにしたポップスに仕上がっています。

もともと私はアイリッシュタップダンスをずっとやっていて、前回の5thライブツアーのときに、初めてステージで曲に合わせてタップダンスを踊ったんですよ。それからアイルランドそのものに興味が湧いてきて、「じゃあ、次はもうちょっと踏み込んでアイリッシュミュージックにも挑戦してみよう」と。ツアーが終わったあとに1週間ぐらいお休みをいただくことになっていたので、息抜きがてらアイルランドに行って音楽の勉強をしてきたんです。

──そうなんですね。現地でどんな勉強をしてきたんですか?

つい“勉強”と言ってしまいましたけど、思い返せばずっと音楽を聴いて楽しんでいた感じなんです。毎日パブに行ってアイルランド音楽をバックにギネスビールを飲んで「うまーい!」みたいな(笑)。でもそのほかにもタップダンスもやられているストリートミュージシャンの方に路上で教えてもらったり、プロの歌手として活動されている方にメロディの特徴を教えてもらったりもしました。この曲のミュージックビデオも滞在中に撮影してもらったんですよ。

鈴木このみ

──曲はすんなり書けました?

書き始めるまでに時間がかかりました。本当はアイルランドに行く前に断片だけでも作っておこうと思っていたんですけど、アイリッシュはインストゥルメンタルのイメージが強くて、歌が乗るところを想像できなかったんです。でも現地のストリートやパブで実際に歌われているところをたくさん見ることができたので、帰国してからは比較的スムーズに書けましたね。

──アレンジもフィドル、バンジョー、ティンホイッスルといったトラディショナルな楽器が使われていますね。

「やるならガッツリやろう!」とみんなで話して、楽器もアイルランドから持ち帰ってきました。最初はメロディをもっとJ-POP風にしようかと迷ったんですけど、それだとアイルランドまで行った意味がないし、自分への果たし状にもならないと思い直して今の形にしました。

──デジロック的なクールなサウンドの収録曲が多い中で、アコースティックでリラックスした「Humming Flight!」は非常に効いていると思います。

うれしいです。先日この曲を上海で歌ったんですが、初披露だったにもかかわらず、意外とすんなり会場に溶け込んでる感じがしたんです。サビの歌詞はシンプルにみんなで合唱するようなイメージで作ったので、ライブで大事に育てていきたいですね。

畑亜貴さんは世界の素敵なものをたくさん知っている

──作詞は畑亜貴さんですが、どんなやりとりをされたんですか?

畑さんにはこのアルバムで絶対に作詞をしてほしいと思っていたんです。畑さんのInstagramを覗くとキレイな旅行写真がいっぱい出てくるので、きっと世界の素敵なものをたくさん知っている方なんだろうなという印象があって。「そういうキラキラ感や、旅に行くときのワクワク感をめいっぱい出してください」とシンプルにお願いしました。

──迷いなくハッピーな歌詞ですよね。

そうですよね。あと、「歌えばきっと大丈夫だから、ね!」という歌詞があるんですけど、こういう誰かを励ますような歌詞の場合、今までの自分の歌だと背中をバシン!と叩く感じだったんです。でも「Humming Flight!」はもっと気軽に、カジュアルに表現してほしいともお願いしました。

──歌い方も「シアワセスパイス」とは対照的に、非常に軽やかです。

鈴木このみ

実は、最初はもっと硬かったんです。どうも自分は深く考えすぎてしまうタイプみたいで、それが歌にも出てしまったんですよね。でも、アイルランドに行ったときも、現地の人たちがすごく人懐こくて、それこそカジュアルに話しかけてくれる人がたくさんいたんですよ。そういう雰囲気も取り入れたいと思って、全部録り直しました。真顔で「なんなんなんだか気分が ああ気分がいい日だね」とか歌われたら嫌じゃないですか(笑)。

──確かに(笑)。

だからレコーディングではちょっと苦戦したんですけど、「Humming Flight!」は自宅でギターを弾きながら鼻歌感覚で歌ったのをボイスレコーダーに録って、それをスタッフさんに送るというやりとりを事前にしていたんです。本番のレコーディングで「あの感じがよかった」と言ってもらえたので、ある意味開き直って、寝る前にパジャマ姿であぐらをかいて歌うようなイメージで歌ったらポンといいテイクが録れて、そこからはするするっとうまくいきました。

──「Humming Flight!」はまさにアルバムならではの曲というか、シングルではなかなかこういうチャレンジはできないですよね。

はい。だからやっぱりアルバムを作るのは楽しいですね。