僕は歌手だから、歌で表現をしたい
──“音程があるお芝居”は、ソン・シギョンさんが卓越した歌唱力と同時に研ぎ澄まされた感性もお持ちだからこそできることだと思いました。普段は、どのようにレコーディングを進めていくんですか?
かなり細かく録っていきます。僕の中でルールがあって、1日3時間半から4時間以上はレコーディングしないようにしています。それこそ集中力が持たないし、繰り返し歌ってもよくなるとは限らないから。声にもよくないですし。昔、偉大な先輩たちは、わーっと歌って、バーッと飲みに行ってたみたいな話を聞いたことありますけど、僕は吐息も含めて、エンジニアと細かくチェックしながら、慎重に進めていきます。レコーディングのやり方には正解がないんです。歌う曲にもよりますし。あくまで僕の場合は、ということですね。
──なるほど。日本にも歌が上手な歌手はたくさんいますが、個人的に韓国の方の歌、特にバラードに圧倒されることが多いので、ソン・シギョンさんの歌のディティールを知りたかったのでご質問しました。
僕は歌手だから、歌で表現したい。ただ音程だけに集中して歌うだけではなく、どう表現するのが一番伝わるのかを常に考えて歌います。歌詞だけ、あるいは感情だけに集中して歌うと納得できることもある。逆に、すごく感情を込めて歌うとちょっと音程が気になってしまうことがある。そういう“行ったり来たり”の調整を常にエンジニアとやっています。その日のコンディションによっても変わりますし。
──進め方は「一概に言えない」と。
そう。だからすごくプレッシャーがある。始めたら最後までやるしかない。その日がもしダメそうなら一旦やめて、次の日に持ち越します。
──そして3曲目に収録されているのは「残月」。日本人もあまり使わない言葉です。
韓国でも使わない表現です(笑)。
──こういった歌詞を歌う際は、どのようにアプローチするのですか? 母国語でない日本語で表現する際、ソン・シギョンさんがどのような準備をするのか気になります。
「残月」という言葉を知らなくても、僕にとっての回答は全部、歌詞の中にあります。「朝が来て明るくなるとなくなっちゃう、すごく不安な光。僕のあなたへの思いはそういうものではない。光があろうがなかろうが、ずっとそこにある」。そんなロマンチックな歌です。僕はこの歌がすごく好きです。最近仲よくしているMari-Joeという韓国の若手の作曲家が作ってくれました。とてもユニークな人で、完璧主義者。この曲はボーカルチューニングに7時間かけたそうです。歌詞がすごくいいですよね。制作も楽しかったです。
歌で人の心を動かすなら嘘はつけない。
──10月には神奈川と大阪の2カ所でホールコンサート「2025 SUNG SI KYUNG LIVE TOUR『A Song for You』」が開催されます。
おかげさまでチケット販売も好評のようでうれしいです。これは何度も言っていますけど、「韓国の音楽はK-POPアイドルだけじゃない」と知ってもらえたらうれしいです。日本ではいろんな方に支えてもらって今回、コンサートが開催できるわけで、そういった意味でもやりがいを感じています。僕自身も毎回、来ていただいた方が喜んでいただけ、来てよかったと思っていただけるように全力でがんばります。いつかは日本武道館でコンサートをしたいですね。
──ソン・シギョンさんが日本武道館という会場にこだわるのはなぜですか?
バラードという音楽ジャンルを歌ううえでは、日本武道館のサイズ感が音や感情をしっかり届けられる規模の会場だと思うからです。僕は歌をしっかりと聴いてほしい。だからこそ、僕の歌をしっかりと届けられる規模の会場、日本武道館でコンサートを開催したいと思っています。
──歌を届ける。
歌唱力とか音程の正しさは基本中の基本ですよね。歌手なんですから。でも、言葉がわからなくてもなんか泣けてくることってあるじゃないですか。僕が思うに、バラードは“心が動く”感覚が一番大事。ホントに。歌で人の心を動かすなら嘘はつけない。でも、だからといって切ないバラードを歌うとき、歌手が感情移入しすぎて泣いてしまったら歌が届けられなくなる。それだと意味ないですよね? 例えば小田和正先輩ってフラットに歌っているように聞こえるけど、なんか泣けてくるじゃないですか。もちろん、これは僕が26年間歌手としてやってきた経験の中で得た感覚であって、別に絶対的な正解ではないです。それに僕自身も、歌手としてまだまだいっぱい悩みます。そういうときに、偉大な先輩方の歌には励まされるんです。
──ホールコンサートが楽しみになってきました。
僕はどのコンサートでも「初めての方、いらっしゃいますか?」と聞くんです。すると、けっこうたくさんの方が手を挙げてくださる。新しいお客さんが半分を占めることもあります。もちろんファンと一緒に歳を重ねていくのも大事ですけど、初めてライブに来てくださるお客さんがいらっしゃるからこそ、こうして新しい作品を出すことも大事だと思っています。僕、キャリアが長くてヒット曲も多くあるので、お客さんはそういう有名な曲を聴きに来ていると思っていたんです。でも最近はがんばって作った新しいアルバムを歌うのっていいなと改めて思いました。今回のコンサートでは、有名な曲も新しい曲もいい配分で選曲していきたいと思っているので、「隣の国のグルメイト」とかで僕を知って、僕の歌に興味を持ってくれた人も楽しんでもらえるものにしたいと思っています。
公演情報
2025 SUNG SI KYUNG LIVE TOUR「A Song for You」
- 2025年10月5日(日)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2025年10月7日(火)大阪府 グランキューブ大阪 メインホール
※チケットは完売の可能性があります
プロフィール
ソン・シギョン
1979年生まれ、韓国出身のシンガー。MC、DJ、タレントとしても活躍している。韓国で2000年にデビューを果たし、韓国の人気ドラマ「シークレット・ガーデン」「星から来たあなた」などの劇中歌で広く知られる存在に。2017年にアルバム「DRAMA」で日本デビュー。2023年11月にニューアルバム「こんなに君を」をリリースし、2024年4月には5年ぶりとなる日本ツアー「SUNG SI KYUNG LIVE TOUR 2024」を開催した。2025年9月、およそ2年ぶりの新作ミニアルバム「しあわせのかたち」をリリース。10月5日に神奈川、7日に大阪で日本での単独ライブ「2025 SUNG SI KYUNG LIVE TOUR『A Song for You』」を開催する。
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