聴いてもらおうっていう気持ちが出てきた

──ライブハウスで活動していく中で、デビューにつながる出会いがあったそうですね。

そうなんですよ。初めてライブハウスでライブをやったときに、たまたま今のレーベルの方が観にいらしてて。そのときは変質……変な人だと思ってあんまり関わらないようにしてたんです。

──今、変質者って言おうとしましたね（笑）。

してないです！ 言おうとしてないです！ 大丈夫です（笑）。いや、なんか最初はメールアドレスを聞かれただけだったので、ナンパだと思ったんですよ。だから連絡を取らないで過ごしてたら、1年後にまたお会いすることができて、そこで初めて名刺をいただいたんです。で、一緒に頑張っていきましょうって言っていただいて。

──そのときの気持ちはどうでした？

その段階ではまだ確実にメジャーデビューが決まってたわけではなかったんですけど、東京とか、他のいろんな場所でライブができるのかもなって思うと、すごく楽しそうだなって思いました。あとは、いろいろサポートしていただいて活動していく中で、多くの人に聴いてもらおうっていう気持ちで歌うようになれたと思いますね。それまではどっちかっていうと、なんとなくやっている感じだったので。

──「歌うのが楽しい」という住岡さんの軸に、「届けたい」という思いが加わったわけですね。

はい。ライブハウスで歌うようになったばかりの頃はほんとにあたふたしていて、余裕がなかったんです。自分のことを考えるだけで精一杯というか。それがだんだん、聴いてもらおうっていうドシッとした気持ちが出てきた気がします。

聴いてくれる人を思い描いて作曲するようになった

──ご自身で作る曲にも変化はあらわれましたか？

私の場合、割と「自分はこんな感じです」っていう自己紹介的な歌が多いと思うので、聴いてくれる人に何かを与える感覚ではまだないのかもしれないです。でも作っている段階で聴いてくれる人の顔を思い描いたりするようにはなりましたね。どう捉えてくれるかなって気になるようになりましたし。

──住岡さんの曲には、すごくナチュラルにご自身の感情が詰め込まれているような気がします。飾り立てた感情ではない分、聴き手にも染み込みやすいものだと思うんですよね。

ああ、背伸びしないこと大事かもしれないですね。あと最近は自分の考えを広げることで、決めつけない歌というものを歌ってみたい気持ちもあるんですよ。大学の頃って、それこそサークルの部長をやってたこともあって、自分の考えは絶対間違ってるわけはないって思いながら決めつけで話すことが多かったんです。まあ大抵間違ってるんですけど（笑）。でも今はいろんな考え方があるんだなあっていうことがすごくわかってきたというか。そういうところは歌詞にも入っている気がしますね。

──あとは、日常で感じるフラストレーションが根っこにある曲でも、ちゃんと前を向いて歌われている印象も受けました。

自分の中のもやもやを曲にぶつけることはありますね。でも結局は曲自体が自分の気分を上げてくれるものになることが多いんです。暗いままの曲だと自分もズーンとなるし、聴いてる人はもっとズーンってなるんじゃないかなって思うので（笑）。

──では、メロディにも何かこだわりはありますか？

自分でメロディを作っていると無難だなあって思っちゃうことがよくあって。そういうときは無理やりピュンって音を上げてみたりとか、ひねって歌ってみようとかっていうのはやりますね。そういうほうが歌ってて楽しいんですよ。覚えにくいんですけど、覚えてしまえばこっちのもんだなと思うので。聴いてる人からすると「今のなんか変じゃない？」って思うかもしれないんですけど。

──でもそれが住岡さんの個性としてフックになりますからね。実際、歌詞やメロディに関しては、心地良い引っかかりがどの曲にもありますし。

そうだったらうれしいですね。