ナタリー PowerPush - 住岡梨奈
北海道が生んだ自然体シンガー「るろ剣」テーマ曲でデビュー
北海道出身、22歳のシンガーソングライター住岡梨奈。自らの性格を「人見知りで気にしいなんです」と分析する彼女は、柔らかな語り口とケラケラと笑うしぐさがキュートな、あくまで普通な女の子。だが、ひとたびアコースティックギターを抱えて歌声を放てば、凛とした強い個性で、聴き手をこれまで味わったことのない心地良い世界へと一瞬で連れさらう。
そんな才能を瑞々しく注ぎ込んだデビューシングル「feel you」のリリースを記念し、音楽と寄り添って歩んできたこれまでの道のりと作品に込めた思いについて話を訊いた。
取材・文 / もりひでゆき インタビューカット撮影 / 佐藤類
単純に歌うのが楽しかった
──住岡さんは北海道の酪農学園大学を今年卒業されたばかりなんですよね。
はい。とりあえず卒業できて良かったなぁって感じで、寂しさはあまりないですね。卒業の前の月にもう上京していたので、「よし頑張るぞ!」って気持ちのほうが強かったですし。まあ今はちょっとホームシックになっちゃって、その寂しさはあるんですけど(笑)。
──元々、酪農に興味があったんですか?
専攻が生命環境学科だったので、いわゆる酪農とはまたちょっと違う感じなんですよ。環境問題とか野生動物の保護管理の勉強をしてたので、直接牛と関わったりはしてないんです。昔から自然も動物も好きなのでそういう学校を選んだんですけど、本当の理由はサークル目当てだったんですけどね。
──なんのサークルですか?
音楽研究会っていうバンドサークルです。高校の進路指導の先生に「音楽がやりたいんです」って言ったら、酪農学園大学は音楽サークルの施設が充実してるよって教えてくれて。じゃそこにしようって。なので大学4年間は、ほぼサークルに入り浸ってましたね。3年生のときには部長もやらせてもらったので、いろんな経験ができました。
──サークル内ではどんな活動をしていました?
先輩方と一緒にバンドを組んで、そこで歌ってました。JUDY AND MARYとかCharaさんとかフィッシュマンズとかをコピーして、月に1回、サークルで企画したライブをやってましたね。
──高校生の頃からアコギを持ち、作詞作曲を始めていたそうですが、サークル内ではそれを披露していなかったんですか。
サークル内で1人でライブをしたのは4年間でほんとに数回だと思います。人前で自分の曲を歌うことが恥ずかしかったんですよ。ギターも全然弾き始めたばっかりだし、誰かの前で1人で歌う勇気なんてないなって。サークルに入った理由も、とにかく歌が歌える場所があればっていう気持ちだったので。
──歌うことが好き、という気持ちがまず大きかったわけですね。
はい。母が声楽をやっていた影響もあって、小さい頃から合唱コンクールとか音楽の授業が好きでしたし、家でもCDに合わせていつも歌ってました。それは歌手になりたいとかっていうことではなく、単純に歌うのが楽しかったからで。1人遊びみたいな感覚だと思いますね。
作曲は好奇心だけで始めた
──そういう状況の中、自分で曲を作ってみようと思ったのはどうしてだったんですか?
高校卒業間際に後輩のバンドに誘われて、ボーカルとして参加したんです。で、その後輩がギターを弾きながら曲を作ったりもしていたので、私も家にあった父のギターを借りて練習し始めて、なんとなく曲を作ってみるようになったんですよ。もちろん作った曲はバンドでやるわけでもなく、誰かに聴いてもらおうと思うわけでもなく、ほんとに好奇心だけで始めた感じでしたね。だんだん曲を作ることが楽しくなっていくんですけど、でもやっぱり歌うことのほうが楽しかったので、そんなに曲を増やそうとするわけでもなく。気分が乗ったら作ってみようかなっていうくらいでした。
──最初に作ったのはどんな曲でした?
デビュー前に出したCD(「ナガレボシ」)に入ってて、今でもライブで歌ってる「ひつじ」っていう曲です。これ、今はちゃんとアレンジしていただいたので普通の尺なんですけど、作った当初は7~8分あるものすごく長い曲だったんですよ。曲の作り方が全然わからなかったので、とりあえずAメロ、Bメロ、サビ、Cメロみたいな流れでやってったら、どんどん長くなっちゃって。人前で歌うことはないからまあいっかって思ってたんですけど、大学時代にライブハウスに出るようになったときこの曲も歌うことになって。そのままの形で歌ったんですけど、歌ってる間に自分もだんだん飽きてきちゃいました(笑)。
──アハハハ。そもそも人に聴かせるために曲を作っていたわけではなかったのに、大学時代にライブハウスで歌うようになったきっかけは?
学校でこっそり自分の曲を練習してたときに、先輩に「何それ?」って言われて。実は自分で曲を作ってるんですって言ったら、じゃライブハウスに出てみなよって。それがきっかけになって、大学2年からはサークルでコピーバンドをやりつつ、1人でライブハウスとかカフェで歌うようになったんです。
デビューシングル「feel you」/ 2012年6月20日発売 / Ki/oon Music
CD収録曲
- feel you
- カフェオレ
- grow
初回限定盤DVD収録内容
- feel you(Music Video)
住岡梨奈(すみおかりな)
1990年2月15日生まれ、北海道札幌市出身の女性シンガーソングライター。高校生の頃より作曲活動を始め、大学入学後は学内の音楽サークルで活躍。2010年から札幌市内を中心に弾き語りでのライブ活動を行い、2011年夏には北海道内で6公演の弾き語りツアーを開催した。同時に初の音源となるライブ会場限定シングル「ナガレボシ」をリリース。10月には東京で行われたSPARKS GO GO主催のライブイベントでオープニングアクトを務めた。2012年春、大学卒業と同時に上京し、6月リリースのシングル「feel you」でメジャーデビューを果たす。