小学生のときにモデル活動を始め、過去には「Popteen」専属モデルを務めるなどして同世代から支持を得てきた菅井純愛が、この春、アーティスト活動を本格的に開始。自ら作詞したデビュー曲「さくら咲かないで」を4月2日に配信リリースした。
菅井は昨年10月末から、あえて顔も名前も伏せ、「えあ」としてTikTokにギターの弾き語り動画を投稿。オリジナル曲の動画が注目されたことで、「超十代ULTRA TEENS FES- 2025」のオープニングアクトに抜擢された。そしてその舞台上で「えあ=菅井純愛」であることを発表し、大きな話題を呼んだ。
音楽ナタリーは“アーティスト菅井純愛”としての初のインタビューを実施。「えあ」として弾き語り動画の投稿を始めた理由や本格的にアーティストを志した経緯、そして「さくら咲かないで」に込めた思いについて語ってもらった。
取材・文 / 田口俊輔撮影 / 佐々木貴幸
緊張で声も唇も震えっぱなしだった初ステージ
──まずは、初ステージとなった3月末の「超十代ULTRA TEENS FES- 2025」を振り返っていただきたいと思います。今までモデルとして立っていたイベントに、アーティスト・菅井純愛として出演するのは不思議な気持ちだったのではないでしょうか。
そうですね。まず人前で歌うという経験もなかったですし、さらに言えば弾き語りを披露するのも初。これまでモデルとして人前に立った経験はありますが、時間で言えばランウェイを歩いて帰ってくるほんの数秒なので、1人でステージに立ち続けるのは未知の経験で。今までも立ってきた舞台なのに、そこでたくさんの“初めて”を経験するのは不思議でしたし、それ以上に不安しかありませんでした。
──本番前日にもX(Twitter)に「明日の超十代緊張する~」と、つづっていましたね。
はい。当日はとにかく緊張して、心の準備をする時間が足らなすぎて気が付いたらもう本番直前。ずっと「早い!」って焦っていました。もう、歌っている最中は声も唇もずっと震えていました(笑)。ただ、曲が終盤に向かうにつれて慣れていき、最後は表情を付けて歌うことができて。いろいろな人から「ちゃんと歌えていたよ」と言っていただけたので、ホッとしました。
──まさか謎の新人歌手「えあ」が菅井さんだったとは、観に来た方も想像していなかったでしょうね。
ライブ配信のコメント欄にも「まさか純愛ちゃんが、音楽の道に進むとは思わなかった」という声が多かったんですよ。周りの人にも「音楽をやっている」とひと言も伝えていなかったですし、実際にステージ上で歌い始めても私だとなかなか気付かれなかったくらいで。会場に来ていた家族が、「もしかして、純愛ちゃん?」と言っている方を見たそうで、その話を聞いたときはうれしかったですね。
歌声とギターだけで人を魅了したくて始めた「えあ」としての活動
──菅井さんは「えあ」として昨年10月末に弾き語り動画の投稿を始めました。なぜ素性を明かさずに投稿を始めたんですか?
名前や見た目の印象がない、何も情報を出さない状態で試してみたいという思いがあったんです。“菅井純愛”として弾き語り動画を出してしまうと、モデル活動の延長に見られてしまうというか……中途半端だと捉えられる気がして。
──もともとギターは弾いていたのですか?
姉がウクレレとピアノをやっている姿を見てきたので、何か楽器を弾けたらいいなとずっと思っていて。それに昔から弾き語り動画を観るのが好きで、ソロで弾く楽器=ギターがいいんじゃないかなと思い、昨年夏に本格的にギターを始めました。
──いつ頃から本格的に「音楽の道」という選択肢が生まれたのでしょうか?
徐々にです。10歳の頃にモデルとして活動を始めたのですが、「いつかモデルとは違う形でも、自分を表現してみたい」と考えていたんです。そう思うようになったのは、「TOKYO GIRLS AUDITION 2018」というイベントで、さいたまスーパーアリーナでランウェイを歩いたとき。そのステージから見た光景が本当にすごくて、忘れられなかったんです。もっといろいろな形で舞台に立ってみたい、と考えるようになりました。そこから、昔から親しんできた音楽でステージに立ってみたいという思いが、ふと頭の片隅に生まれたんです。ただ、楽器も弾いたことない私にできるの?って、自分でもまったく想像できなくて。この思いは誰にも口にすることはありませんでした。
──その夢が、本格的な目標へと変わったきっかけはなんだったのでしょう?
一昨年の春に、「Popteen」を卒業したことや、高校3年生という人生の節目を迎えたこともあり、新しいことに挑戦してみたくなったんです。その中で、「今こそ音楽なんじゃないか?」と思い本格的にアーティストを目指すことにしました。それに、音楽活動を始めるなら自分の思いを込めた曲が歌いたかったので、以前から歌詞は書き溜めていたんです。
──そうだったんですね。どんなテーマの歌詞を書くことが多いですか?
なんといいますか……明るい系ではありません(笑)。私はマンガを読むのが好きで、中でも重厚で深みのあるテーマの作品が好きなんです。最近だと「傍観者の恋」の世界観に惹かれました。そうした作品の内容からいろいろと自分なりの世界やテーマを想像して、そこに私のこれまでの経験を掛け合わせ、妄想を膨らませて歌詞を書いています。
──作品から刺激を受けて生まれた感情に、創造を織り交ぜていくと。
見たことのない景色や色、彩り、形や感情を表現することにすごく憧れがあって。そこまで人生経験が豊富なわけではないので、作品から受けた刺激や感想を、作品の力を借りて自分の頭の中で膨らませていくのが好きなんです。
──歌詞作りで参考にしている方はいらっしゃいますか?
日本語特有の美しい言葉で世界を表現されるアーティストさんが大好きで、中でもヨルシカさんとSEKAI NO OWARIさんからは影響を受けています。どちらも日常で見たこと、感じたことを、美しい例えでまるで別の世界の出来事かのように表現されていらっしゃるのがすごく素敵で。また、言葉に表しづらい感情の表現をとても繊細な言葉で描写されるので、歌詞を読むたびに言葉1つひとつが心にすごく刺さります。
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「卒業を目の前にした寂しい気持ち」は、今しか書けない