須田景凪 特集|フレデリック三原健司&エンジニア岡村弦によるプレイリスト、高松美咲のコメント掲載

須田景凪が5月24日に約2年3カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「Ghost Pop」をリリースする。音楽ナタリーでは「Ghost Pop」のリリースを記念し、須田の特集記事を展開中。2月にはその第1弾企画として、須田景凪 / バルーンというクリエイターの足跡と現在のモードを、音楽ジャーナリスト・柴那典によるレビューで掘り下げた(参照:須田景凪 / バルーンとはいったい何者なのか?)。

第2弾では須田が初のフィーチャリングゲストとして新世代シンガー・むトを迎えた「いびつな心 feat. むト」、現在TOKYO MXほかで放送中のテレビアニメ「スキップとローファー」のオープニングテーマとして書き下ろした「メロウ」にフォーカスしたプレイリスト企画を掲載する。今回の特集に参加してくれたのは、須田と親交があり2021年12月にはコラボCD「ANSWER」を発表したフレデリックの三原健司(Vo, G)、2021年2月発表の1stアルバム「Billow」以降、須田のレコーディングには欠かせない存在となっているエンジニア・岡村弦の2名。アーティストとエンジニア、それぞれの視点から「いびつな心 feat. むト」「メロウ」の分析、須田の楽曲で構成したプレイリストの作成を依頼した。

さらに「スキップとローファー」の原作者である高松美咲にもアンケート取材を実施。アニメのために書き下ろされた「メロウ」を聴いた感想や、須田の作品に触れて感じたその魅力についてつづってもらっている。

構成 / 下原研二

三原健司(フレデリック)

三原健司

「いびつな心 feat. むト」を聴いて

いつもは曲を聴いてから歌詞を見てその世界観に浸ることが多いのですが、なんでやろう、この曲は最初に歌詞を見て、世界を想像してから音楽に触れました。それくらいこの歌詞から出てくるなんかこう、心をくすぐられてそっと暗闇に押し戻されて、けどそれがなんか心地いい。っていう須田くんの言葉選びに惹かれたのかな。

音を聴く前はもう少し濁ったドロっとしたイメージだったのですが、むトさんの澄んだ声と須田くんの歌唱の絶妙なバランスで、言葉がスッと耳に届き気付くと何回も聴いてしまうような作品です。素敵な曲をありがとうございます。

「メロウ」を聴いて

楽曲の疾走感と須田くんの表現の中ではストレートな歌詞でまたアーティストとしても新しい世界に進んだ印象を受けました。
ただ、キラキラした部分を歌ったとしても、あふれ出る濁りというか、陰というか、そんな一面が見え隠れしていて、そういうドロドロとした部分も理解しつつその先にある光を歌うことができる、そんな奥行きを感じてより一筋縄ではいかない楽曲に仕上がってるな。という印象でした。また進化してるなー。素敵な楽曲をありがとうございます!

須田景凪との出会い、その魅力について

出会いはネットサーフィンをしていていろんなアーティストの曲を流し聴きしていたときに「雨とペトラ」を聴いたところからです。
アレンジの多彩さ、須田くん特有の言葉選びなど、魅力を挙げ出すとキリがないですが自分が一番惹かれたのは「メロディ」でした。
曲を口ずさんだときに口馴染みがいいというか、メロの流れに自分たちとも共通する部分が多く「同じ血が通ってる!」そんな感覚を持ちすぐにハマりました。最高yeah

プレイリストの選曲理由

まだ須田くんと仲よくなる前「他人の曲のライブセットリストを勝手に作る」ことにハマってる時期があり、須田景凪ver.を作っていたんですよね笑(本人にも公開済)それの2023年更新版をプレイリストにします。野外フェスの日も暮れてきて照明も映像演出もバチバチに効く時間帯のセカンドステージのトリ、50分ステージの想定です。アンコール込み、緩急たっぷりの時間をお楽しみください。

須田くん、このセットリストの細かい演出などはまたランニングでもしながら語らせてください。笑

プロフィール

フレデリック

双子の兄弟の三原健司(Vo, G)、三原康司(B, Vo)と、赤頭隆児(G)、高橋武(Dr)からなる4人組バンド。幅広い音楽要素から生み出されるユニークなサウンドと、ライブならではのアレンジや多彩な演出でライブバンドとしても定評がある。2014年9月にメジャーデビュー作となるミニアルバム「oddloop」を発表。その後もコンスタントにリリースを重ね、2018年4月に初のアリーナ単独公演を兵庫・ワールド記念ホールで行い、2020年2月には神奈川・横浜アリーナ公演、2021年2月にはバンド初の日本武道館公演を成功させた。2022年3月に3rdアルバム「フレデリズム3」をリリース。6月に東京・国立代々木競技場第一体育館でバンド史上最大規模のワンマンライブ「FREDERHYTHM ARENA 2022」を開催した。2023年2月に新作ミニアルバム「優游涵泳回遊録」、3月にはフジファブリックとのコラボレーションシングル「瞳のランデブー」をリリース。

岡村弦

岡村弦

「いびつな心 feat. むト」を聴いて

まず今回は須田さんのメロディにむトさんの声がピッタリ合っているなと思いました。少し抑え気味の発声と声のトーンに倍音成分の多いこともあり、須田さんの繊細なメロディとの相性が抜群で心をつかまれてしまいます。
須田さんとの掛け合いになるサビも違和感なく2人が混ざり合うようでとても素敵で。アレンジ面に関してはピアノの細かいフレーズで作られたリフも春風を感じるようなさわやかさがあり、アコースティックギターのカッティングも相まってとても聴いていて気持ちのいい楽曲です。

「メロウ」を聴いて

まず須田さんのメロディと久保田さんの音の出会いとその化学反応に感動しました。個人的にJazzin' parkさんとも何度もお仕事をご一緒していたのでそのお仕事ぶりは周知ではありましたが、計算され尽くされた緻密かつ華やかなアレンジに須田さんのVoが合わさったときの新境地のような感激がすさまじいと思います。歌詞も普段の須田さんよりも青春感というか、光を感じる内容でそこに疾走感のあるストリングスなどのフレーズが絡んでくることで、春や初夏に聴きたくなる素敵な楽曲に仕上がっていると思います。

須田景凪との出会い、その魅力について

須田さんとは前作「Billow」からありがたいことにかなりの数の楽曲制作をレコーディングエンジニアとしてご一緒させていただいております。須田さんの魅力はなんと言っても誰しもが持つであろう心の内側、葛藤や昇華されない思いのようなものを儚く、時にリアルに表す歌詞とメロディだと思うのですが、トラックメーカーとしての才能も特筆すべきものがあると思っています。
リズムトラックに関してはそもそもドラマーであることも大きいかと思うのですが、絶妙なグルーヴ感を打ち込みで表現していく技量には感動すら覚えます。またミックスに関してもプロ顔負けの構築力を持っていらっしゃるので、自分は毎回須田さんの作ったラフミックスのバランスと音色の持つ意味合いを参考にしながら最終仕上げを微調整していくというプロセスを踏んでいます。
まさにDAWなども進化した現代ならではのアーティストの形を最先端で走っているという印象です。

プレイリストの選曲理由

夜に聴きたくなるような大人の須田さんサウンドで選んでみました。
これからも素晴らしい楽曲を楽しみにしております!

プロフィール

岡村弦(オカムラゲン)

レコーディングエンジニア。須田景凪、LiSA、音羽-otoha-、DREAMS COME TRUなど、多くのアーティストのレコーディングに参加。劇伴やアニメ音楽も多数手がけている。

高松美咲

「メロウ」を聴いて

予備知識なしで初めて聴いたときに浮かんだシーンが、「ここをイメージして作りました」と須田さんが送ってくださったシーンと同じでびっくりしました!
さわやかでありながら、それだけではない複雑なレイヤーをいくつも感じます。
変化の兆しを感じたとき、それが前向きなことであっても最初の一歩は不安なもの。
始まりの期待と不安、瑞々しくも危うい感情がぎゅっと表現された曲だと思います。
そしてOPでダンスがつくとは!とびっくりしたのですが、音楽と合わさると本当にかわいい~んです! 何回視聴しても足りません。

須田景凪の作品に触れて

須田さんの曲を聴いていると具体的な情景が浮かびます。
一方でなぜかとてもファンタジックで、現実と物語世界を行ったり来たりするような感覚になります。
寓話のようでありながら、メッセージを押しつけるのではなく聴く側の想像に委ねる余白のある作品だと感じます。

須田景凪へのメッセージ

まずは「メロウ」を届けてくださって、ありがとうございました!
自著イメージの曲を書き下ろしていただけること自体、
作家として一生に一度あるかないかだと思っていました。
それがとても繊細に読み込んで解釈していただけたこの曲だったこと、
本当にうれしいです。何度も聴いています。
これからの須田さんのご活躍も楽しみにしています!

プロフィール

高松美咲(タカマツミサキ)

富山県出身のマンガ家。大学在学中の2012年に「アフタヌーン四季賞2012年秋」のコンテスト「箱庭のこども」にて佳作入賞を経て、集中連載「カナリアたちの舟」にてデビューする。「アフタヌーン」2018年10月号より「スキップとローファー」の連載をスタートさせる。現在TOKYO MXほかで「スキップとローファー」のテレビアニメが放送されている。

須田景凪 ライブ情報

須田景凪 LIVE 2023 "Ghost Pop"

2023年5月27日(土)東京都 昭和女子大学人見記念講堂

※音楽ナタリーでは、須田景凪がニューアルバム「Ghost Pop」について語るインタビュー記事を5月下旬に公開予定。

プロフィール

須田景凪(スダケイナ) / バルーン

2013年より「バルーン」名義でニコニコ動画にてボカロPとしての活動を開始。代表曲「シャルル」はセルフカバーバージョンと合わせ、YouTubeでの再生数が1億回再生を突破。JOYSOUNDの2017年発売曲年間カラオケ総合ランキングで1位、年代別カラオケランキングのうち10代部門で3年連続1位を獲得し、現代の若者にとって時代を象徴するヒットソングとなっている。2017年10月、自身の声で描いた楽曲を歌う「須田景凪」として活動を開始。2019年1月、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEより初の音源集「teeter」をリリースした。2021年2月にメジャー1stアルバム「Billow」を発表。同年11月にはフレデリックとのコラボ曲「ANSWER」をリリースした。2023年3月に初めてフィーチャリングゲストを迎えた楽曲「いびつな心 feat. むト」、4月にテレビアニメ「スキップとローファー」のオープニングテーマとして書き下ろした「メロウ」を発表。5月24日には2年3カ月ぶりとなるニューアルバム「Ghost Pop」をリリースする。