ナタリー PowerPush - ストラト☆ダンサーズ
中川いさみ連載マンガが生んだ“編集部バンド”がメジャー進出
1000枚完売の条件に「そんなハードルいらないよ!」
──オリジナル曲を作るようになった後、本格的なレコーディングを経験したんですよね。
江上 オリジナル曲を作るようになった後、それをただライブでやってるだけだとマンガとしては同じことの繰り返しになってしまうので、レコーディングをしてCDにしようということになったんです。
中川 でもレコーディングした段階で、もうお金がないからプレスはできないっていう話になって。どうすんだよっていう(笑)。まあでもそのことで、自分たちでCDを焼いていろんなレコード会社に配るとか、路上ライブをしながら売っていくとか、面白そうな展開が見えたりもしたんですけど。
──でも実際はもっとドラマチックな展開が待っていましたね。
江上 これもまたものすごい偶然で、レコード会社の人とたまたま知り合うことができて。インディーズでCDをリリースして、それが3カ月間で1000枚売れたらメジャーデビューできるという話になったんです。
──ストラト☆ダンサーズはつくづく引きが強い。
神村 なんなんでしょうね。ほんとに偶然の積み重ねで、わらしべ長者のようにしてここまで来たっていう。
──とは言え1000枚のCDを売らなければいけないというのはものすごく高いハードルだったと思いますよ。結果としてそこも実力で飛び越えてしまったわけですけど。
中川 正直「そんなハードルいらないよ!」と思ってましたけどね(笑)。
江上 「1000枚売れませんでした!」っていうのもマンガとしてはおいしい展開だったかもしれないですけどね。でもやっぱり挫折するとそこから這い上がっていくのってものすごく大変じゃないですか。
神村 傷つきたくない大人なので。
江上 だから石にかじりついてでも売ろうって思ってました。
──中川さんも、その段階ではもうメジャーデビューしたい気持ちが固まっていました?
中川 そうですね。バンド作ったからにはちゃんとした形にしたいと思ってましたし、素人としてやっているよりもプロみたいなことになれば今まで以上にギターの上達にもつながってくる話だと思ったので。もはややらざるを得ない、みたいな。
佐藤 プロになって上達するって、ものすごくぜいたくな上達の仕方ですよね(笑)。
江上 でもほんとにCDを作ると、うまくならざるをえないんですよ。あいまいなところが全部わかっちゃうから適当じゃ済まなくなる。これは最高の上達法なんです。
神村 それに、どんだけ企画が大きくなろうが最終的には自分たちの演奏力が全てですからね。結局はうまくならないと何も成立しないし、誰も何もしてくれないですから。
「俺の曲が1曲も入ってない!」編集長プチギレ事件
──そしていよいよメジャーデビューシングル「運命論メロン」がリリースされます。
中川 俺はインディーズで出した「オタマジャクシ・ベイベ」をメジャーで売ってもらえるんだと思ってたんですけど、歌詞に固有名詞がいっぱい出てくるからメジャーでは出せないって言われて(笑)。だから新たに作った曲たちなんですよ。で、作ってみれば今度は歌詞がオヤジくさいから書き直せってメンバーに言われたりして(笑)。
江上 中年サラリーマンの哀愁が出てた歌詞だったんで、それはちょっと違うかなって思ったんですよね。それよりはもっと得体の知れない歌詞のほうがストラト☆ダンサーズっぽいよなあって。
──「運命論メロン」なんて、タイトルからしてほかでは味わえないテイストですよね。中毒性がものすごくありますし。
江上 ああ、中川さんの歌詞って中毒性がありますよね、確かに。そこがいいとこだよね。
中川 洗脳しないと(笑)。
神村 そういえば、このシングルを作るにあたってちょっとした事件があったんですよ。
江上 そう! 僕も曲を作ったんだけど、それが1曲も入らなくてプチギレしたんです。
──今回収録される曲は全て中川さんが作曲されていますもんね。
神村 「キレる前に言わせてください」っていうものすごく長いメールが来て。いやこれもうキレてるよねっていう(笑)。
江上 業務のメールを打ってるときに、どうしても気になってきちゃってね。俺の曲が1曲も入ってないじゃないかあ!って。
神村 で、その日の晩にロイヤルホストに江上さんを誘って、「ちょっと大人気ないですよ」「最年長なんですから」と。
江上 クールダウンしてもらって。
佐藤 中川さんからはそのメールに対して謝りのメールが来ましたからね。
中川 「そんなつもりじゃありません!」って送ったもん(笑)。
江上 この場を借りて謝ります。すみませんでした。
──また今後、江上さんの曲がリリースされることもあるでしょうし。
江上 (消え入りそうな声で)いや別にいいんですよ……。
神村 ライターさんに気遣ってもらうっていう(笑)。
佐藤 ここでは「別に……」って言うくせに、あとで「チクショー!」って言いますからね。根深いです(笑)。
メジャー1stシングル「運命論メロン」2012年8月29日発売 Ki/oon Music
収録曲
- 運命論メロン
- ヴィレッジヴァンガードのテーマ
- 風俗ガールとバドミントン
初回限定盤DVD収録内容
- 運命論メロン(ミュージックビデオ)
- ストラト★ダンサーズ メイキングダイジェスト
LIVE INFORMATION
中川いさみ&漫画「ストラト!」presents 祝・キューンミュージックよりメジャーデビュー!! 遅れてきた新人バンド [ストラト☆ダンサーズ] CD発売記念LIVE!!
2012年8月30日(木)東京都 新宿LOFT
OPEN 19:00 / START 19:30
<出演者>
ストラト☆ダンサーズ / 水中、それは苦しい / 久住昌之 / 羽生生純 / カネコアツシ / ヤスコーン / 河井克夫 / and more
ストラト☆ダンサーズ(すとらとだんさーず)
マンガ家の中川いさみ(Vo, G)が、小学館「月刊IKKI」編集長の江上英樹(G)、編集部員の佐藤祐二(B)と神村正樹(Dr)とともに結成した4人組ロックバンド。中川の「ギターがうまくなりたい」という願いを叶える過程を追った「IKKI」の連載実録マンガ「ストラト!」を通じて結成され、さまざまなライブイベントに出演して注目を集める。2011年11月、初の音源となるシングル「オタマジャクシ・ベイベ」をリリース。このシングルを1000枚販売するという条件をクリアし、Ki/oon Musicからのメジャーデビューが決定する。2012年8月、シングル「運命論メロン」でメジャーデビュー。同月には「ストラト!」の最新刊となる第3集も発売される。