ナタリー PowerPush - ストラト☆ダンサーズ
中川いさみ連載マンガが生んだ“編集部バンド”がメジャー進出
マンガ家・中川いさみと、小学館マンガ誌「月刊IKKI」編集長の江上英樹、編集部員の佐藤祐二と神村正樹の4人からなるロックバンド、ストラト☆ダンサーズ。「ギターの上達」という中川の目標を叶えるために音楽活動を開始した彼らは、あらゆる偶然と運命の波を乗りこなしながら今回、シングル「運命論メロン」でメジャーデビューを果たすこととなった。
その歩みは中川が「月刊IKKI」に連載中の実録マンガ「ストラト!」に詳しいが、ナタリーでは改めてメンバーたちの口から活動の軌跡について語ってもらった。大人たちが本気で楽しむ痛快な姿を、マンガとともに味わってほしい。
取材・文 / もりひでゆき
ストラト☆ダンサーズは偶然の積み重ねでここまで来た
──ストラト☆ダンサーズが生まれることになった発端は、「人生でやり残したこと、それは……ギターだ!!」という中川さんの熱い思いからなんですよね。
中川いさみ(Vo, G) そうです。僕はマンガ家のとり・みき先生たちと3人組のフォークバンドをやっていたんだけど、他の2人はギターがうまいから僕だけミソっかすみたいになってて。これはちょっとギターがうまくならないとダメだなって思ったんです。あとはギター周りにはいろいろ面白い話がありそうだし、それをマンガにできないかなっていう思いもあって。
──その構想が「月刊IKKI」編集長である江上さんの耳に届いたわけですね。
江上英樹(G /「月刊IKKI」編集長) そう。ストラト☆ダンサーズは結構、偶然の積み重ねでここまで来てるところがあるんですよ。中川さんがギターに対してウゴウゴした気持ちを持っていたように、僕も音楽に対してずっとコンプレックスを持っていて。楽器が弾けないことのカッコわるさ、弾けるやつに対しての敗北感みたいな感じがずっとあった。で、そういう気持ちも含めてマンガにできないかなって僕も思っていたんです。さらに、後に中川さんも参加した「楽器挫折者救済合宿」(メンバーのギターの師匠でもある宇野振一が講師を務める、楽器演奏に挫折した人向けの合宿指導企画)に、僕と佐藤と神村はこの企画が動き出す前に既に一度参加していたんです。
──このプロジェクトが動き出すための土壌が整っていたような感じですね。
江上 その直後に中川さんから話があって、みんなの思いが合致したっていう。僕と中川さんは歳も近いんで境遇が似てたんだと思いますね。あとの2人はちょっとこの企画に引きずられた感じもあったと思うんだけど(笑)。
神村正樹(Dr /「月刊IKKI」編集部員) 確かに、僕はドラムを1回もやったことがなかったですからね。ベースもそうでしょ?
佐藤祐二(B /「月刊IKKI」編集部員) うん。僕、楽器を弾きたいなんて1秒も思ったことないんで。
江上 1秒もなかったの?
佐藤 ないです。嫌々ですらないです。何も感じずに始めているので。「佐藤くん、ベースね」って言われたから。
──あははは(笑)。佐藤さんのキャラってマンガの中でも一番謎ですよね。
佐藤 そうですか?
江上 でも意外と、ライブなんかだと一番絵になるんだけどね。まあでも年齢的に言って、新しいことを始める時間はそうないぞっていうのは感じていたので、できることはやっとかないとなっていう気持ちはありましたね。今のままで死んでいくのはいやだなって。
マンガにするには派手な展開がないとダメ
──そこからストラト☆ダンサーズはメジャーデビューまでたどり着いたわけですけど、中川さんの中には最初から先々の明確なビジョンはあったんですか?
中川 全然なかったです。そもそもバンドを組むことも考えてなかったし、ましてやメジャーに行きたいなんてことも全く考えてなかったですね。最初は単純にギターが上達していく様子をマンガにしようと思ってましたから。ただ、それをやっていくうちにどんどん地味なマンガになっていっちゃう気がしてきて。
江上 続けていくモチベーションも保ちにくいしね。
中川 やっぱりマンガにするには、それなりに派手な展開がある程度ないとダメなんですよね。ずっとギターの理論的なことばっかりを描いていても、マンガとしては面白くないというか。今までにヒットした音楽マンガって、天才ギタリストが現れて2週間後には学園祭でヒーローになってるみたいな、そういうものが多かったと思うんですよ。でも実際は楽器の練習ってものすごく地味。指が動かない、指が痛い、飽きてきた、みたいな。しかもなかなか上達してないから、派手な急展開が起こるわけもなく。
──ああ、確かにそうですよね。ものすごくリアルな内容にはなりますけど。
神村 そこを描いたマンガって今までになかったから、それはひとつありだとは思ってたんですけど、でもいかんせん地味だっていう。そういうジレンマとか葛藤がありましたね。
江上 それがバンド結成前夜って感じだったよね。
中川 うん。その後、バンドを組んで人前で演奏することが上達への一番早い方法かなっていう話になって。まあそれも上達のための一環として、とりあえず組んでみたっていう感じでしたけど。
──先程出てきた「楽器挫折者救済合宿」に参加し、そこでバンドを結成したんですよね。
江上 そうです。バンド名も朝食のときに適当につけたんだよね。
中川 名前つけろって言われたから、その場で適当に。結局今もそのままなんだけど。
──どうしてストラト☆ダンサーズというバンド名にしたんですか?
中川 僕がストラト買ったから……。
佐藤 それはわかります(笑)。なんでそこにダンサーズをつけたんですか?
中川 ストラトだけだとパッとしないから。ダンサーズをつけたらいいかなあと思って。メンバーに女の子を入れて踊らせようってずっと言ってるんですけどね。なかなか実現しなくて。
佐藤 まだ言ってるんですか!
中川 いやあ(笑)。
神村 合宿でとりあえずバンドを組んだから、名前も気軽につけただけでしたからね。そもそもこんなに長く続けるとは、その段階では思ってなかったですから。
メジャー1stシングル「運命論メロン」2012年8月29日発売 Ki/oon Music
収録曲
- 運命論メロン
- ヴィレッジヴァンガードのテーマ
- 風俗ガールとバドミントン
初回限定盤DVD収録内容
- 運命論メロン(ミュージックビデオ)
- ストラト★ダンサーズ メイキングダイジェスト
LIVE INFORMATION
中川いさみ&漫画「ストラト!」presents 祝・キューンミュージックよりメジャーデビュー!! 遅れてきた新人バンド [ストラト☆ダンサーズ] CD発売記念LIVE!!
2012年8月30日(木)東京都 新宿LOFT
OPEN 19:00 / START 19:30
<出演者>
ストラト☆ダンサーズ / 水中、それは苦しい / 久住昌之 / 羽生生純 / カネコアツシ / ヤスコーン / 河井克夫 / and more
ストラト☆ダンサーズ(すとらとだんさーず)
マンガ家の中川いさみ(Vo, G)が、小学館「月刊IKKI」編集長の江上英樹(G)、編集部員の佐藤祐二(B)と神村正樹(Dr)とともに結成した4人組ロックバンド。中川の「ギターがうまくなりたい」という願いを叶える過程を追った「IKKI」の連載実録マンガ「ストラト!」を通じて結成され、さまざまなライブイベントに出演して注目を集める。2011年11月、初の音源となるシングル「オタマジャクシ・ベイベ」をリリース。このシングルを1000枚販売するという条件をクリアし、Ki/oon Musicからのメジャーデビューが決定する。2012年8月、シングル「運命論メロン」でメジャーデビュー。同月には「ストラト!」の最新刊となる第3集も発売される。