スピラ・スピカ「アオとキラメキ」|“好き”を貫いた先に見えた新たな世界 (2/2)

いろんな人とつなげてくれた「燦々デイズ」

──シングルには「燦々デイズ」のピアノバージョンも収録されています。

ライブや編曲などでずっとサポートしてくださっている重永亮介さんにピアノアレンジをお願いしました。一緒にスタジオに入って、その場で「こんな感じで歌ったらどうかな?」とやりとりしました。歌ってみて、聴いて、また歌って……というのを繰り返して、今のアレンジになりました。原曲はテンポが速くて、勢いに乗って歌えていたところもあるので、ピアノ1本になったときに「この曲の明るさをどう表現したらいいんだろう?」と考えながら改めて楽曲に向き合いましたね。海夢ちゃん、五条くんもいろんな出会いの中で成長しているし、私も「燦々デイズ」のピアノバージョンで、「大人になった」とまでは言わないですけど、少しずつ変わっている自分を見せられたらいいなと思ってレコーディングに臨みました。重永さんの演奏に乗せて、息を合わせて歌ったので、臨場感を感じてもらえるんじゃないかなと。

──深く感情を込めたボーカル、素晴らしいです。「燦々デイズ」をリリースした3年前には、こういう歌い方はできなかったのでは?

できなかったと思います。「燦々デイズ」のレコーディングの日も、実はめっちゃ泣いてたんですよ(笑)。もちろん自信を持って歌っていたんですけど、途中で「大丈夫かな」と心配になってきて……。「燦々デイズ」は今、スピラ・スピカの曲の中で一番聴かれている曲なんです。皆さんに知ってもらっている曲だからこそ、3年経って、成長した部分を感じてもらいたいという気持ちもありましたね。

──スピラ・スピカにとって、間違いなく大事な曲ですよね。

はい。「着せ恋」のテーマともちょっと被るんですけど、「自分の“好き”に正直にいよう」と思い直させてくれた曲だし、いろんな人とつなげてくれた曲でもあります。「燦々デイズ」と「着せ恋」のおかげで日本はもちろん、海外の方にもスピラ・スピカのことを知ってもらえたんですよ。去年インドでライブをやらせてもらったんですけど(2024年にインド・デリーで行われたイベント「Mela! Mela! Anime Japan!!」)、「燦々デイズ」を歌ってくれるお客さんがいて。アニメ系のDJイベントでこの曲をかけてくださる方もいたり、国境とかジャンルとか、いろんなものを超えてたくさんの人に届いていることを実感しています。

自分が歌ってきたことは間違いじゃなかった

──さらにシングルにはカップリング曲として「あしたは天晴れ!」が収録されています。作詞作曲を手がけたぼっちぼろまるさんとは以前から交流があるそうですね。

そうなんです! FMヨコハマでレギュラー番組を持っていたときに、ゲストでぼろくんが来てくれて。そのときすでに「いつか曲を作ってほしいです」という話をしてたんですよ。それで、今回CDを出せることになって「ぼろくんの曲をぜひ入れたいです」とお願いしました。私としてはライブで老若男女が楽しめる、自然とノれるような曲にしたくて。日常生活の中で小さなイライラとかストレスが溜まることもあるけど、それでもがんばって生きてる僕たちってすごいよね、天晴れだよねって。スピラ・スピカはアップテンポの曲が多いので、がんばりすぎず、ゆったり乗れる曲が欲しいという気持ちもありました。いろいろオーダーしちゃったんですけど、ぼろくんが見事に応えてくれました。ぼろくんから「自信作ができました」という言葉をもらえたのもうれしかったですね。

スピラ・スピカ

──シングル「アオとキラメキ」のリリースをきっかけに、スピラ・スピカの活動はさらに活性化しそうですね。

そうなるようにがんばります! 10月にはシングルのリリースを記念したワンマンライブツアーが控えていて。スピラ・スピカ、幹葉を応援してくださる方は、私のいろいろな活動を楽しんでくれているんですが、「ライブで歌っている姿が好き」と言ってくださる方が多いんです。その期待を超えるライブをお見せしたいですね。しかも10月のツアーはフルバンド編成なんですよ。ずっと一緒にやってくれてるキーボードの重永さん、ドラムの岡本啓佑さん、ソロプロジェクトになってから参加してくれてるベースの芳井雅人さん、ギターの香取真人さんが加わって、バンドのグルーヴもさらに高まってます。もちろん「アオとキラメキ」も歌いますし、青春のキラキラをみんなで感じまくりたいです。

──幹葉さんの原動力は“好き”のパワーだと思います。そこはずっと揺るがないですか?

そうなんですけど、この2年間は「これで合ってるのかな」とか「大丈夫なのだろうか」と思ってしまうこともあって。これまでお世話になってきた方々が手を差し伸べてくれて、それがいろいろな活動につながってきたんですけど、ファンの皆さんからは「早く新しい曲が聴きたいです」「アニメタイアップはまだですか?」という声もあったし……。正直「私も早く出したい。でも、そんなに簡単じゃないんだよ」という気持ちもありました。今回のシングル発売が決まったとき、ファンの方から「泣きました」とか「うれしくて眠れなかったです」と言ってもらえたときはすごくうれしかったし、少しは安心してもらえたのかなと。なんていうか、ミュージシャンは自分が応援されることを前提にしちゃダメだと思ってるんですよ。

──ミュージシャンはリスナーを応援しないといけない、と?

はい。好きな音楽をやって、それを好きだと言ってくれる人に届けるというのが本来の姿。でも、ここ数年は応援されてばっかりだったんですよ。申し訳ないなという気持ちもあったんですけど、やっと……。

──返せますね。

まだまだですけどね。「着せ恋」はスピラ・スピカが大事にしてきたこととバチッとリンクしていて。ソロプロジェクトになって最初のアニメタイアップが「着せ恋」で本当によかったなと思っています。デビュー曲の「スタートダッシュ」でエンディング曲を担当させてもらった「ガンダムビルドダイバーズ」に「俺たちは、俺たちの好きをあきらめない!」というセリフがあるんですよ。その言葉が今も忘れられなくて、ガンダム作品にも「ありがとう」だし、10枚目のシングルが「好きに正直でいよう」というテーマを描いている「着せ恋」のオープニングになったことで「自分が歌ってきたこと、歌っていきたいことは間違いじゃなかったな」と思えました。まずはたくさんの人に「アオとキラメキ」を聴いてほしいです。

スピラ・スピカ

この世界にはワクワクできることがいっぱいある

──最後に音楽以外の活動についても聞かせてください。幹葉さんはNHK Eテレの番組「The Wakey Show ~ ザ・ウェイキー・ショウ」にMC・DJのウェイキーのスーツアクターとして出演してますね。

はい。「声優として出演してるの?」と言われることがあるんですけど、スーツアクターなんですよ。ピンマイクを付けた状態でウェイキーとして、演技したり歌ったり踊ったりしています。声優だけではなくてスーツアクターだということを、ぜひ皆さんに知ってほしいです!

──実際に幹葉さんが動いてしゃべって歌っているんだよ、と。

はい。初めてのことだらけで、最初はかなり大変でした。歌やライブのことは先輩アーティストに相談できるけど、周りにスーツアクターをやっている方はいないし、とにかく壁にぶち当たりまくって。放送が始まって半年くらい経って、Eテレのほかの番組に出演しているスーツアクターの先輩たち……ワンワン(「いないいないばあっ!」)のチョーさん(長島雄一)、サボさん(「みいつけた!」)の佐藤貴史さん、シュッシュ(「おとうさんといっしょ」)の柳原哲也さんとも関わりができて、ちょっとずつ慣れてきました。着ぐるみなので表情は変わらないんだけど、私の動きや声でしっかりエネルギーを出せたらなって。それができるようになったら、スピラ・スピカのライブでも10倍くらいのパワーが届けられるようになると思うんですよね。

──スピラ・スピカの活動にもフィードバックできる、と。

はい。「The Wakey Show」にも「子どもたちの“好き”を応援しよう」というテーマがあって。悲しいニュースもあるけど、「この世界にはいろんな面白いこと、ワクワクできることがいっぱいあるんだよ」という。それはスピラ・スピカとして歌ってきたことも重なるなと感じています。

スピラ・スピカ

公演情報

スピラ・スピカ Release One-Man Live「アオとキラメキ」

  • 2025年10月17日(金)東京都 harevutai
  • 2025年10月26日(日)大阪府 Shangri-La

プロフィール

スピラ・スピカ

スリーピースバンドとして活動をスタートし、2018年8月にテレビアニメ「ガンダムビルドダイバーズ」のエンディング曲「スタートダッシュ」でメジャーデビュー。その後も「みだらな青ちゃんは勉強ができない」「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」「戦翼のシグルドリーヴァ」「その着せ替え人形は恋をする」といったアニメのテーマソングを担当した。2022年8月に寺西裕二(G)、ますだ(B)がバンドを卒業し、9月より幹葉(Vo)のソロプロジェクトとして再始動。2024年2月にミニアルバム「未知の設計図」をリリースした。2025年2月にワンマンツアー「スピラ・スピカ One-Man Live Tour 2025」を実施。8月にアニメ「その着せ替え人形は恋をする」Season 2のオープニングテーマを表題曲とした10thシングル「アオとキラメキ」をリリースし、10月に東阪ワンマンライブを行う。ラジオDJや雑誌連載、NHK Eテレの教育番組「The Wakey Show」へのウェイキー役での出演など、音楽活動以外のフィールドにも活躍の場を広げている。