適材適所の楽器配置を練る
──普段の演奏とはまた違う難しさがある?
柳下 ありますね。僕は今回、鉄弦ではなくガットギターのみを使ってるんですけど、響きもまったく別物ですし、アコースティックの場合は、限りなくゼロに近い弱音まで出せるので。もう、レンジの広さがまったく違う。
芹澤 お互いの出している音も、より集中して聴かなきゃいけないしね。
宮原 ドラムセットも、生楽器の余韻をかき消さないよう、なるべくソフトな音にチューニングして。スティックもあえて柔らかめのものを選んだり。
又吉 あと、曲の構築の仕方で言うと、楽器の振り分けみたいなことはいつも以上に考えて作ってます。さっき良太が言ったみたいに、4人の音圧でドーンと聴かせるタイプの音楽ではないので。「この曲のこの場面では、どの楽器が一番映えるだろう?」みたいなことは、みんなでよく話しました。適材適所の楽器配置っていうのかな。アコースティックの限られたボリュームを効果的に使い切るには、実はそこも重要なんだなと。
──その点では2014年の1枚目「LIGHT」に比べて、かなり進化した手応えがあったのでは?
柳下 うーん、どうかな(笑)。4人とも経験値は上がって、レコーディング作業自体はスムーズに進んだ気がするけれど。
宮原 楽器の上達って、身長と同じで本当に少しずつなので(笑)。やってる最中は、意外に実感できないんですよ。ただ、前のアルバムを改めて聴き直してみると、やっぱ今のほうがうまくなってるなとは感じる。
芹澤 前作の収録曲を演奏してみると、前は必死で叩いていたフレーズが今は余裕を持ってできたりね。ただ、この3年半もSOAで定期的にライブは行ってましたし、メンバー4人ともひさしぶりという感覚はなかったですね。
宮原 それぞれ、楽器も買ったりしてたしね。エレクトリックと同じくらい、常にアコースティックのことも考えている。
芹澤 俺たち4人にとって、エレクトリックとアコースティックが車の両輪になってきた。その意味ではSOAの演奏スキルも充実してきて、やっとまっすぐ走行できるようになった感じかもしれません。
──アレンジはライブでそのまま再現できるものを?
柳下 はい。そこはずっとこだわってます。
又吉 基本、オーバーダビングはなし。4人で演奏できる音しか入れていない。そこはエレクトリックもアコースティックも同じです。
宮原 メンバー4人だけで楽器を持ち運べて、いつでもストリートで演奏できるのもSOAのコンセプトなので。例えばオープニングの「WOLF」という曲では、ヤギ(柳下)と僕のギターが2本入っているんですけど、僕はドラムセットに座ったまま弾いてるんです。なので手は使わず、フットペダルだけでビートを打っていて。ライブでもそのまま再現できる形になってます。
100%悪ふざけな「WOLF」MV
──新曲の「WOLF」は、導入のガットギターのリフがすごく印象的ですね。なんとも言えず柔らかく、温かい音色で。今回の「Telepathy」というアルバム全体を象徴しているように感じました。
柳下 ありがとうございます。「WOLF」は今回、最後にレコーディングした曲で……。実はあの響きは、わざと弦楽器専用の弱音器を付けて演奏してるんです。もともとは夜に練習したりするときに使うアクセサリーなんですが、それを音色の変化に利用してみました。
宮原 ヤギ、今ちょっとカッコよく説明したけどさ、実際は「こんなの買ってきちゃったけど、使えるかな、えへへ」みたいな感じだったよね(笑)。で、1回やってみたら、みんなから「全然ダメじゃん」とかさんざん言われて。
柳下 うん(笑)。でも何度か試しているうちに、「あれ、やっぱよくね?」みたいになっていった。基本的には僕がリズムを刻み、良太がソロフレーズを弾いてるんですけど、同じガットギターでも音のキャラクターの違いが作れてよかったと思います。
芹澤 この曲はすごくスムーズに作れたよね。ギターに限らず、けっこういいフレーズがどんどん生まれた。個人的にはヤギの導入部のギターリフに良太のギターソロが重なるアンサンブルが、本作のハイライトかな。
宮原 そういえばレコーディング中も、芹澤にやたら響いてたね。
芹澤 うん。アルバムの最後に完成した曲なんですけど、どうしても世の中の人に広く知ってほしくて。それで「STEADY」に加えて、この曲のMVも作ろうって提案したんですね。撮影の合間に撮りだめた素材を使った、いわばプラハ旅行のアザーバージョンとして。
柳下 こっちのMVは、2012年のアメリカツアーでドキュメンタリー映像を撮ってくれた大島ジェイ(潤)がディレクターで。自分たち発信のアイデアもいろいろ盛り込みながら、手作り感満載で作っていきました。
宮原 まあ仕上がり的には、4人の男たちがただプラハの街でじゃれ合ってるだけとも言えるけどね(笑)。
芹澤 そう。観ていただくとわかりますが、「STEADY」のMVとは対照的に純度100%の悪ふざけになってます(笑)。同じ街でも視点が変わるとこうも違って見えるのかと。
──「WOLF」はギター2本の絡みに続いて、芹澤さんの吹く鍵盤ハーモニカと又吉さんの弾くマンドリンが入ってくるところも素敵ですね。2つの楽器の掛け合いがパッと花が咲くような雰囲気で。
又吉 うん。マンドリンって音の響き自体が華やかなんですよね。メロディはもちろんだけど、曲をカラフルに彩る部分でも面白い楽器だと思います。
宮原 細かいことを言うと、「WOLF」でギター2本と鍵ハモ、マンドリンが鳴ってるときって、リズム担当の楽器はなく、いわゆる“上モノ”4つだけによるアンサンブルなんです。バンド形式でこれをやるのは、わりとチャレンジングだと思う。ここも1つ、アルバムの聴きどころじゃないかなと。
芹澤 あと、後半で僕と良太のハンドクラップが入るんですけど、そこはちょっとだけスティーヴ・ライヒを意識したと言うか。最初は同じリズムを打っていたのが、次第に右と左で拍がずれていくんですね。
──ここ、ヘッドフォンでじっくり聴くと面白いですよね。トライアングルの細かい「チキチー、チキチー」という音に合わせて拍が変化していく。以前「イヨマンテ ウポポ」という楽曲でコラボしていたマレウレウ(アイヌの女性ヴォーカルユニット)を思い出しました(参照:スペアザコラボ第4弾でヒップホップ、第5弾でウポポと融合)。
芹澤 ああ、そうですね。要は輪唱と同じ要領です。
- SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
「Telepathy」 - 2018年5月16日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1367 -
通常盤 [CD]
3024円 / VICL-64989
- CD収録曲
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- WOLF
- Wayfarer
- STEADY
- IDOL
- My Home Town
- Birdie
- ローゼン
- CP
- Mirage
- Telepathy
- 初回限定盤DVD「ズッコケ4人組のプラハ珍道中」収録内容
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- 「STEADY」ミュージックビデオ
- 「WOLF」ミュージックビデオ
- 密着ドキュメント
- SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
2nd ALBUM「Telepathy」Release Tour 2018 -
- 2018年5月26日(土)
- 新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・能楽堂
- 2018年5月27日(日)
- 長野県 北野文芸座
- 2018年6月1日(金)
- 長崎県 長崎県美術館 エントランスロビー
- 2018年6月2日(土)
- 福岡県 電気ビルみらいホール
- 2018年6月7日(木)
- 宮城県 darwin
- 2018年6月9日(土)
- 山形県 山形県郷土館「文翔館」
- 2018年6月10日(日)
- 群馬県 ながめ余興場
- 2018年6月16日(土)
- 山口県 周南RISING HALL
- 2018年6月17日(日)
- 岡山県 YEBISU YA PRO
- 2018年6月22日(金)
- 北海道 cube garden
- 2018年6月23日(土)
- 北海道 CASINO DRIVE
- 2018年6月30日(土)
- 沖縄県 ガンガラーの谷 ケイブカフェ
- 2018年7月7日(土)
- 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年7月8日(日)
- 静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2018年7月11日(水)
- 東京都 LIQUIDROOM
- 2018年7月15日(日)
- 大阪府 服部緑地野外音楽堂(※追加公演)
- 2018年7月16日(月・祝)
- 滋賀県 サケデリック・スペース酒游舘
- 2018年8月25日(土)
- 東京都 上野恩賜公園野外ステージ(※追加公演)
- SPECIAL OTHERS(スペシャルアザース)
- 1995年、高校の同級生だった宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(B)、柳下“DAYO”武史(G)、芹澤“REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始め、2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリース。2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビューを果たす。2011年11月にさまざまなアーティストと共演したコラボ作品集「SPECIAL OTHERS」を発表し、2013年6月には初の東京・日本武道館公演を成功させた。2014年10月に、メンバー4人がアコースティック楽器で演奏する新プロジェクト「SPECIAL OTHERS ACOUSTIC」名義での“デビュー”アルバム「LIGHT」をリリース。2017年3月にデビュー10周年を飾るコラボアルバム第2弾「SPECIAL OTHERS II」を発表した。2018年5月にSPECIAL OTHERS ACOUSTIC名義でのニューアルバム「Telepathy」をリリース。