スパンコールグッドタイムズ 1stアルバム発売記念インタビュー|根暗な4人の内なる思いをショーに

スパンコールグッドタイムズは、I LOVE YOU ENTERTAINMENT MUSICに所属する4人組アイドルグループ。ここ最近知名度を高めているカイジューバイミーと同じく、メルクマール祐がプロデュースを手がけている。ロックアイドルとして活動するカイジューバイミーとはまた異なる音楽性を持ち、ファンクやAORの要素を取り入れたアーバンな楽曲を歌っているのが特徴で、12月12日に1stアルバム「SPANCALL NUMBER ~今夜のヒッツ!~」がリリースされた。

音楽ナタリーではアルバムの発売を記念してメンバー4人とメルクマール祐にインタビュー。グループの成り立ちやアルバムの収録曲について話を聞いた。

取材・文 / 真貝聡撮影 / 塚原孝顕

スパンコールグッドタイムズができあがるまで

──スパンコールグッドタイムズは、どういうきっかけで生まれたグループなんですか?

メルクマール祐 実は、スパンコールには前身グループがありまして。メンバーは今と同じ4人で、別の事務所に所属して違うグループ名で活動していました。なぜ今、僕が関わっているのかと言うと、当時彼女たちを担当していたマネージャーが僕の友達で、「力を貸してくれないか?」とお願いをされて外部のプロデューサーとしてコミットするようになったからなんです。それから1年ほど経って、僕が代表を務めているI LOVE YOU ENTERTAINMENT MUSICにメンバーが移籍し、新しいグループ、スパンコールグッドタイムズとして動き出しました。

メルクマール祐

メルクマール祐

──メンバーの皆さんが、このグループに加入した経緯は?

睦月真尋 私は学生の頃から、ギターを弾いたり歌ったりすることが好きだったんです。高校を卒業するタイミングで、このまま地元の岐阜にはいたくないと思いまして。上京するきっかけを作るために、練習生として面倒を見てくれる事務所を見つけて東京に来ました。

 それはアイドルとしての練習生だったの?

睦月 アーティストとしてボイトレを受けていました。でもぶっちゃけ上京のきっかけを作れたらなんでもよかったので、レッスンには全然行かなくて。今後どうしていこうかと悩んでいたとき、祐さんを紹介していただいたんです。アイドルをやりたいというよりも、祐さんの作る曲がすごく好みだったので、この人の曲を歌いたいなと思ってグループに加入しました。

藤ナオ 私は、物心ついた頃からアイドルになりたいと思っていました。高校生の頃からアイドルオーディションを受けてはいたんですけど、全然受からなくて。……で、気付いたらここにいます。

睦月真尋

睦月真尋

藤ナオ

藤ナオ

一同 (笑)。

──なぜアイドルになりたかったんですか?

 小さい頃はあやや(松浦亜弥)になりたいと思っていたんですけど……なってない。今、あややになれてないよね?

天野りこ ははは! なってない!

 ハロプロさんとか、AKB48さんとか、有名グループのオーディションはだいたい受けたんですけど、受からなくて。そしたら前の事務所でアイドルをやることになり。祐さんがプロデュースで関わってくださるということで、面接みたいなものを受けて、スパンコールにいます。

深田百香 私はクラシックバレエを習っていたのもあって、昔からステージに立つことに憧れを持っていました。ミュージカルやディズニーが好きだったから、ディズニーダンサーになりたかったんですけど、身長が足りなかったんです。部活では新体操をやっていたんですが、靭帯をケガして部活もできなくなっちゃって。そんなとき、街を歩いていたらアイドルのオーディションにスカウトされたんです。そこで「やってみるか!」と思い切って挑戦したのが始まりです。

天野 私はもともとかなりの人見知りで、人前に出ることが本当に苦手でした。もちろんアイドルになる気も全然なかったです。ただ、従姉妹がアイドルをやっていて、家族みんなでライブを観に行ったとき、自分の知らなかった世界がそこに広がっていたんです。親戚の子としてしか見てなかった子が、ステージに立っているときは別人に見えた。「この子、こんなにキラキラしていたんだ」と衝撃で。そこから人前に出て、表現をすることに興味が湧きました。そんなタイミングで、ちょうどスカウトしていただいて「じゃあ、やってみようかな」って。その後、その前身グループに祐さんが外部のプロデューサーとして関わってくれるようになって、今はスパンコールにいます。

深田百香

深田百香

天野りこ

天野りこ

ステージに立ってるときだけはエンタメ集団

──プロデューサーの祐さんから見た、各メンバーの魅力は?

 まずは、メンバー全員の総合的な魅力から言いますね。楽曲しかりグループ名しかり、ショー的な明るさと洒落た要素を含んだグループなんですけど、もとの4人はなんというか……誤解を恐れずに言うと、どこまでいってもズッコケ的な部分を持ち合わせた陰キャラの匂いがしたんです(笑)。そんな彼女たちがスパンコールの付いた衣装を身にまとい、ステージに立てばヒーローのようなエンタメ集団になるんですよ。最高じゃないですか? もとからメンバーはプロ意識が本当に高くて、今では音楽的にクオリティの高いこともやってのけるんですけど、それでもやっぱりそれぞれが持っているズッコケ要素はステージにしっかり残っていて。カッコいいだけじゃない、周りにいる人が楽しい気持ちになれる魅力的な子たちが集まっています。1人ずつの魅力を言うと、りこはどんなときでも明るいですね。とにかく明るくて大事な場面でもヘラヘラしていて、ムカつくこともあります(笑)。

天野 ははは!

 だからたまにハッとすることもあるんですよ。「この大事な局面でさえも、彼女にとっては取るに足らないことなんだ。自分は何クソ真面目に音楽やっちまってるんだ」と(笑)。そんな彼女の一面に救われてる人もたくさんいるんじゃないかなと思っています。スパンコールの音楽って、ジャンル的にはヴィンテージっぽさや90年代のサウンドを取り入れつつ、楽曲に哀愁感があるんですけど、一見ミスマッチなりこの声質やパフォーマンスがすごくハマるなと思っていて。彼女がいることによって“洗練さ”が増すんです。誰もがとっつきやすいエンタメの要素を注入してくれているのが、大きな魅力の1つかなと思います。

──深田さんについてはどうですか?

 グループで活動していたら、普通は自分が真ん中に立って、誰よりも目立ちたいという願望があると思うんですよ。僕がバンドをやっていたときも、「ボーカリストは前に出てなんぼだ」「自分が世界で一番すごいんだ」という気持ちでステージに立っていましたし。でも、彼女は意外とそっちのタイプじゃないのと、前に出ないときのパフォーマンスがとにかく美しい。積極的に前に出てもらったことも過去に何度かあったんですけど、やっぱりどこか物足りない(笑)。そんな彼女は、今のスパンコールで主にコーラスを担当していて、かなり難しいコーラスラインもやってもらっています。コーラスとして前に出すぎず、ちゃんと存在感を残すバランスが絶妙ですね。

深田 ありがとうございます。

スパンコールグッドタイムズ

スパンコールグッドタイムズ

──では、睦月さんに感じる魅力は?

 とにかく歌がとてもいいです。技術的なところもそうですし、声質もいいなと思っていて。彼女のステージは、どこか物憂げに感じさせる魅力があるんですけど、ステージを降りると一変、まるでさっきまでとは別人のような平和な空気感が漂っています(笑)。その両方の魅力が今のスパンコールに欠かせないエッセンスになっていると感じていますね。

──最後、藤さんについてはいかがでしょう?

 まずボーカリストとして、華がありますよね。ステージでのパフォーマンスも破天荒さが売りみたいになってるところがあるんですけど、実はすごく繊細でクソ真面目。その持ち前の繊細さと真面目さで、石橋を叩きすぎて渡る前に失敗してるところを何度も目撃しています(笑)。だからこそ、その真逆にあるようなスパンコールの音楽をやってほしいと思ったんです。藤に限らず、4人とも自分が思っていることを積極的に表に出すタイプじゃない。僕は自分の中にある思いをステージにぶつけるのが音楽表現の1つだと考えていて、スパンコールでは彼女たちの中に潜む表に出していない部分を、本人たちが望んでステージにぶつけられるようにショーに昇華してあげたいと思っています。今までの経験から「これをステージに出すべきじゃない」と考えるなんてナンセンス。全部ショーにすればいい。スパンコールグッドタイムズというきらびやかな名前は、本来の彼女たちとはある意味真逆だけど、衣装をまとってステージに立てばいつだって人を魅了するエンタメ集団になれる。そんなグループになっていけばいいなという気持ちがあるんですよね。