大阪発のバンド・ソウルズが配信シングル「feel」でUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビューを果たした。
ソウルズは2018年に結成された、「愛とソウルを込めて」をモットーに活動する5人組バンド。音楽ナタリーでは大阪にいるコージロー(Vo)、テラ(G)、かおり(Key)、ちゃあ(B)、カズマ(Dr)にリモート取材を行った。メンバーが音楽ナタリーのインタビューに応えるのは今回が初。最初は緊張気味の5人だったが、徐々に気持ちが解れていったのか、後半はメンバー同士がテンポよく会話を重ね、バンドの描く未来や「feel」に込めた熱い思いを語ってくれた。
取材・文 / 天野史彬
音楽の話が合う仲間に出会えた
──ソウルズは2018年結成ということですが、ソウルズに改名前の前身バンドも含めると、コージローさんのバンド歴はさらに長いですよね。
コージロー(Vo) そうですね。2013年に前身バンドを結成して活動を始めたんですけど、途中、メンバーチェンジもありつつ、2018年に“ソウルズ”に改名しました。前のバンド名は英語で覚えてもらいづらかったですし、もともとソウルミュージックが好きだったので、ソウルズにしようと。前身バンドの頃からのメンバーは、僕とギターのテラですね。
──ちなみに今日はリモートで取材させてもらっていますけど、今コージローさんの背後に飾ってあるのはサム・クックのレコードですか?
コージロー あ、そうです。個人的に一番好きなアーティストが、サム・クックで。
──やはりソウルミュージックは、コージローさんにとって大きな影響源なんですね。
コージロー そもそも僕は洋邦問わずいろんな音楽が好きなんですけど、前身バンドのときから「ポップスをやりたい」という思いがあって。ただ、当時のライブハウスで対バンする同世代のバンドで、自分たちと同じような毛色のバンドって、なかなかいなかったんです。それにブラックミュージックをやろうと思っても、どうしてもアウトプット的な面で難しさを感じていた。そういうときに、テラと出会ったんです。僕とテラは同い年で、当時、テラは別のバンドにいて。楽屋で音楽の話をしたとき、初めて「同世代で音楽の話が合う仲間に出会えた」と思ったんですよ。
──じゃあ、テラさんとの出会いが、自分の志す音楽を形にしていくうえで大きかった?
コージロー そうですね。テラは前身バンドのときにまずサポートで入ってもらい、その後正式加入したんですけど、テラとの出会いは、僕らのバンドに大きな変化をもたらしたんです。今も曲作りは僕とテラでやっていますし。
テラ(G) たしか、初めてライブハウスの楽屋でコージローと会ったとき、山下達郎さんの話をしたんですよね。僕はもともとロックが好きなんですけど、その頃、ちょうどポップスにもハマり始めていて。でも、周りにそういう話をできる友達が全然いなかったので、コージローと会ったとき、「いろいろなジャンルの音楽を知ってるんだな」と思って、波長が合ったんです。
かおりが提案したルームシェア
──現在の5人にメンバーがそろったのはいつですか?
コージロー 現メンバーになったのは、2020年の7月です。ちょうどコロナ禍に入りたての時期だったので、5人そろってすぐにライブ活動をできる状況ではなかったんですけど、その代わりというか、今、テラ以外の4人は同じ家で共同生活をしているんです。あとから加入したメンバーであるかおりが「バンドでルームシェアをしませんか?」と提案してくれて。コロナ禍でスタジオも休業状態になってしまって、なかなか集まれなかった時期も、ちょっとでも一緒に音を出したり、ミーティングをできる環境があったことで、僕としては精神的な安心感もありました。この5人は、かなりつながりが強いと思います。
──正直、あとから加入したメンバーからシェアハウスを提案するのは、勇気が入りそうですね。
かおり(Key) そうですよね(笑)。その頃は気持ちが前に出ていたというか、「どうにかしたい」という一心でした。当時、コロナ禍でまったく音を出せない時期が続いていたし、私もバンドに加入したばかりだったので、もっとメンバーとの関わりを深めていけたらいいなと思っていて。
ちゃあ(B) 実際、家族ではない4人が住める家を探すのは大変だったんですけど、でも、バンドがよくなっていくかもしれないし、僕は提案を聞いたとき、ワクワクしましたね。
カズマ(Dr) 僕もワクワクしました。僕もかおりと同時期に加入したので、もっと関係を深めたかったし、同じ家に住んで、好きなときに音を出して、好きな音楽の話をしまくれるって、「めっちゃ楽しい生活が始まるんやろうな」って。実際、今は一緒にごはんを食べながら、そのとき聴いている音楽を勧めあったりするような生活が送れているので、毎日、楽しいですね。
コージローが4人を紹介
──では、コージローさんから、ソウルズのメンバーを紹介してください。
コージロー しっかりできるかわからないですけど(笑)、年齢順にいきますね。まず、ギターのテラはバンマスで、頼りがいのあるしっかり者です。この5人の中では兄貴っていう感じですね。キーボードのかおりは性格も明るくて、バンドのムードメーカーになってくれています。かおりはもともと、エレクトーンの先生だったんですよ。
──そうなんですね。
コージロー なので、キーボードとしてバンドに加入するのは、まったく違う楽器をゼロから始めるくらいの気持ちだったと思うんですけど、そう考えると、この1年間ですごく努力していたように見えて。ベースのちゃあは、もともとテラと地元のライブハウスの先輩後輩という関係だったんです。ベースという、音楽的に「支える」役割であると同時に、バンド内の真ん中で、間を取り持つ大変な位置にいながら、明るい空気を作ってくれています。ドラムのカズマは、僕とテラからすると年齢が8個も下なんですよ。聴いてきた音楽にもジェネレーションギャップがあると思うんですけど、僕やテラが好きな音楽を理解してくれています。
──今、コージローさんがおっしゃったことに関して、カズマさんは実際どうですか?
カズマ 僕はもともとミクスチャーバンドで叩いて、どちらかといえばポップスとは真逆というか、「音が大きければ勝ち」という世界でずっとやってきたんですよね(笑)。そこからソウルズに入って、ボーカルのうしろで支える役割に徹するドラムを叩くとなったとき、正直、最初は迷ったんですよ。でも、コージローくんやテラさんが聴いてきた音楽を自分も聴いて、その音楽がどういうアンサンブルのバランスで成り立っているのか、少しずつ体にインプットしていきました。そうやって積み上げてきた結果、今、少しはソウルズの役に立てているんじゃないかと思っています。
──ちゃあさんは、もともとベーシストとしてはどういったルーツがあるんですか?
ちゃあ Red Hot Chili Peppersのフリーが好きでした。なので、最初はけっこうアグレッシブなベースを弾いていたんですけど、いろんなバンドのサポートをやらせてもらううちに、ゴリゴリにロックな感じで弾く楽しさもあれば、バックバンドとしてほかの楽器が際立つように弾く楽しさも知って。そんな中でソウルズに加入することになったんですよね。テラさんは地元のライブハウスでも「ギターのヤバい人」っていうイメージだったし、今まで自分がやってきたことにプラスして、もっと新しいことに向き合っていかないといけないんだなって……直接、言葉で言われるわけではないんですけど、一緒に音を出していく中で感じましたね。ソウルズに入ってからは、みんなが鳴らす音を聴きながら自分のベースを磨いていった感じがします。
──かおりさんはエレクトーンの先生をやられていたということですが、ソウルズへの加入によってどういった意識の変化があったんですか?
かおり 前の仕事をしていた頃に、「もっと演奏活動をやりたいな」と思って。それでSNSを調べたときに、ソウルズがTwitterでキーボードを募集していたんです。実際にYouTubeで音源を聴いてみたんですけど、ビビビッときたというか(笑)。曲も好きやし、歌詞も好きやし、すごくスッと入ってきたんです。私はクラシックとか、ちょっとフュージョンチックなものとか、エレクトーンならではの音楽を聴いてきたんですけど、そういう要素がソウルズに加味されても面白いんじゃないかと思ったし。募集を見つけたその日に、もう応募していましたね。
──実際、演奏者として活動を始めた実感はいかがですか?
かおり 応援してくださっている方が目の前でノリながら聴いてくれていたり、私たちの演奏によって笑顔になってくれている姿を間近で見ると、「音楽でつながるってこういうことなんだな」と思うし、喜びを感じますね。
──テラさんは、このメンバーの中では一番、コージローさんと活動を共にしてきた期間が長いと思うんですけど、今この5人で集まったソウルズはどうですか?
テラ 僕が最初に「こいつと一緒にやろう」と思ったのは、コージローの歌を聴いたときだったんです。「この歌が届けば売れるやろ」と思った、その根本の気持ちは今でも変わっていないです。ただ、バンドを続けていくうちに周りのメンバーが変わっていって、「やっぱりバンドって、周りもいいメンバーじゃないと無理なんやな」という気持ちも強く芽生えてきて。今、やっとこの5人が集まって、いい感じでやれているので、このメンバーでずっと続けたいし、このメンバーで売れたいです。
不器用なお母さんで繊細な兄貴
──では、先ほどとは逆に、4人から見たコージローさんの人となりを伺いたいんですけど、どうでしょうか?
テラ コージローは、不器用なやつですね(笑)。ただ、僕の中にミュージシャンを見る物差しがあって、「不器用なやつが最強」と思っているんです。コージローは、何をやるにも容量が悪いし、遅刻もするし、社会的に誰でもできるとされているようなことが、できなかったりする。だけど、そんなやつが歌う歌だからこそ、みんなの気持ちを乗せてくれるものになるじゃないかと思っています。
かおり 私から見ると、ソウルズの中でのコージローさんって、お兄ちゃんであり、お母さんでもあるというか……温かくメンバーを見守ってくれる人。それに、ライブでお客さんの心を掴むのがうまいですね。歌が乗ったときのお客さんの反応を見ると、この歌声は最強やなって思います。
ちゃあ 僕が思うのは、(コージローは)誰よりも人の気持ちを感じ取ることができる人なのかなって。センサーがめちゃくちゃ敏感なんだと思うんですけど、一緒に住んでいても、人のちょっとしたテンションの違いに気付いて、その場の空気をよくしようとしてくれる場面が多々あるんです。ライブでも、お客さんがそのときどう思っているかを感じながら歌っていると思うんですよね。そういう繊細な人だから、歌詞も、聴いた人に刺さる歌詞を書けるんやなと思います。
カズマ 僕からすると、コージローくんは兄貴というか。さっき、コージローくんはテラさんのことを「リーダーであり兄貴」と言いましたけど、僕からするとテラさんはお母さんで、コージローくんは兄貴なんですよ。
テラ ややこしいなあ(笑)。
カズマ (笑)。コージローくんは、ボーカルとしてバンドを仕切るときはシャキっとしますけど、一緒にふざけてくれる場面もあるし、メンバー思いで愛が深い人なんですよね。僕は毎日、愛を感じながらバンド生活を送れているし、だからこそ、僕もコージローくんの歌をお客さんに届けたいなと思ってドラムを叩くし。
──4人の意見を聞いて、コージローさんとしてはいかがですか。
コージロー 今のをまとめると、僕は、不器用なお母さんで繊細な兄貴っていうことですよね?(笑)
──(笑)。
コージロー 見事にバラバラで(笑)、でも、うれしいです。
──テラさんが言う「不器用さ」というのは、ご自分ではどうですか?
コージロー 恥ずかしながら、うまくやろうと思ってもうまくできないことが多いんです(笑)。このバンドでは、僕が散らかしたものをテラがきれいに片付けてくれることが多くて。それは、曲作りにおいてもそうですね。僕があっち行ったりこっち行ったりしたとき、テラがいつも軌道修正してくれているなと思います。
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FM COCOLOで培った音楽性