粗品×syudou|第7世代の2人が語るボカロ愛

ボカロの美学、syudouのアンサー

syudou 僕は粗品さんが作った曲を聴くと、音楽に対してはもちろん、ボーカロイドというものに対しての愛をすごく感じるんです。いつ頃から、どういった方の曲を聴いてボカロに目覚めたんですか?

粗品 僕はハチさんとか、現実逃避Pのwowakaさんとか……。

syudou 第2世代ですね。自分なりにボカロを分類していまして、僕は第7を自称しているんですけど。

粗品 我々、第7世代同士なんですね(笑)。syudouさんは誰が好きだったんですか?

粗品

syudou ぶっちぎりでハチさんです。僕がボーカロイド曲を一番聴いていたのが2009~11年なので、ハチさん、wowakaさん、DECO*27さんとか、あとトーマさんっていう方も聴いていて。

粗品 思った! syudouさんの幻想的なところがトーマさんっぽいなって思ってたんですよ!

syudou トーマさんからは露骨に影響を受けてますね。

粗品 わかるわー。

syudou ハチさんはのちに米津玄師さんになったりしますけど、トーマさんって、ある種そこで完結しているというか。今も別名義で活動されているみたいなんですけど。

粗品 Gyosonさん。

syudou はい、Gyosonさんとして。ただやっぱりトーマさんとして1つの世界を完成させたというのが、めっちゃカリスマ性があると思っていて。

粗品 あれは美学ありますよね。

syudou そうなんですよ。

粗品 名前が出たから聞きたいんですけど、ハチさんに向けた歌じゃないかって言われている曲があるじゃないですか。

syudou 「ジャックポットサッドガール」ですね。

粗品 あれはそうなんですか?

syudou あれはそうですね。

粗品 うええーっ!

syudou 「砂の惑星」というハチさんの曲があるんですけど、その曲が発表されたのが僕が大学4年のときで。当時はボーカロイドが全然跳ねてなくて、「アンサーを返したいけど、自分がまだ跳ねてないしなあ」と思っていたんです。「砂の惑星」が「初音ミク『マジカルミライ 2017』」のテーマソングだったので(参照:初音ミクの10年~彼女が見せた新しい景色~| 第1回:ハチ(米津玄師)×ryo(supercell)対談)、いつか僕が初音ミクの公式のお仕事をいただいて、そのタイミングで返せたら最高だなと考えていたら、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」っていうゲームプロジェクトのお仕事をいただきまして。まだまだとはいえ、一応音楽で生活できるくらいにはなったので「アンサーしてみるか!」と意を決して作ったという感じです。

粗品 へえー! ちゃんとアンサーなんですね。

syudou 賛否は分かれていいんですけど、ちゃんと愛を持って作っています。ヒップホップって、ディスがあったら必ずアンサーがあるじゃないですか。米津さんは愛を持ってボカロシーンへのディスを出したのに、ちゃんと返している人がいなくて。ちゃんと向き合わないのは一番失礼なんじゃないかと。あと、直接ご本人にお会いできたということもあって決心がついたというか。

粗品 すげえ! 実はそれが気になっていたんですよ。

粗品はボカロ第8世代

──先ほどsyudouさんは独自の分析でご自身を“第7世代”だとおっしゃっていましたが、syudouさんから見たボカロ世代観を教えてください。

syudou ざっくりなんですけど、最初は「みくみくにしてあげる♪」とか出てきたのを単純に面白がっていた2007年頃。そのあと2009年あたりにハチさん、wowakaさんといった外部の才能が入ってきて面白くなってきたのが第2世代。第3が「千本桜」の黒うさPさんとかKEMU VOXXさんとかなんですけど、「千本桜」というでかい柱が立ったことによって新しいボーカロイドの形が1つできたんです。第4では「カゲロウデイズ」のじんさんとか、「脳漿炸裂ガール」のれるりりさんとかが出てきて、また違った形のボーカロイドの“ベタ”が完成しました。2014、15年あたりの第5世代は、Orangestarさん、ナユタン星人さん、和田たけあきさんなどですね。この時代の次に第6世代としてバルーンさん、有機酸さん、かいりきベアさん、カンザキイオリさんたちが出てきます。バルーンさんの「シャルル」のヒットで、YouTubeでボーカロイドを聴くというプラットフォームが定着するんです。そんな恩恵を受けて2018、19年あたりの第7に僕とか、すりぃとか、Ayase(YOASOBI)も入りますし、煮ル果実がいたりします。そして粗品さんは第8世代だと思うんです。

粗品

粗品 次の世代だ(笑)。

syudou 2020年で切り替わったという印象が強いですね。それこそYOASOBIはネットから出てきてネットのまま跳ねることを成功させた人たちだと思っていて。だからもはや“ネット発”と言われなくなったというか。それが前提の世界に変わっていくんだろうなと。

粗品 なるほど。面白いですね。ありがたいことにsyudouさんは僕をボカロ第8世代に入れてくださいましたけど、実は申し訳なさも感じていて。正直、今まで発表してきた曲も“粗品”って名前を出していなかったら伸びてないやろうし、曲そのもので勝負できていないんです。お笑いの世界でもトークができるからってバラエティに参入してくるタレントさんとか……正直「ん?」って思うことがあって。ボカロPをやっている人からしたら、ボカロ界に芸人が飛び込んでくるのも同じことですよね。でもその中で失礼のないように本気でボカロをやりたいと思ったので、誠意としてレーベルを立ち上げることにしたんです。

syudou 粗品さんがちゃんと愛を持ってやってくださっているのは、ボカロPの人たちもわかっていると思います。編曲までちゃんと自分でやっているところも素晴らしいですよね。編曲をやりたいっていうプロの人に任せるという選択肢も当然あるじゃないですか。それなのにちゃんと自分でミックスまでやって完パケしているところがすごいです。あと、piaproにカラオケを上げているところとかも正しすぎる(笑)。

粗品 あははは(笑)。自分が見てきたものですね、そこは。

なんて純粋なんだ

──syudouさんが粗品さんをボカロPとして見たとき、どのように分析しますか?

syudou けっこう初期のボーカロイドの手作り感を感じていて。メインに使われているのがピコピコ系のビットチューンだったり、最初にボーカロイドに触ったときにとっつきやすい音というか。

粗品 そうなんですよ(笑)。

syudou 僕もそうだし、最初は全員ああいうのを作るんです。それをちゃんと投稿しているところがなんて純粋なんだと思って。

粗品 あははは(笑)。

syudou もちろん悪い意味じゃなくて、それがめちゃめちゃいいなと思ったんです。なんでかと言うと、ボーカロイドの世界ってプロもアマもはっきりしていない自由な砂場みたいな場所なんですけど、そこで大きく跳ねようとする人の影響で、新しい人とかそこで楽しんでいた人たちの居心地が間接的に悪くなったんじゃないかと思っていたんです。そんなときにちゃんと面白い曲を作るKanaria君とか、キャラクターが確立された粗品さんが入ってくれたことで、カチカチの地面を壊してくれて。予備知識なんていらないんだと。パソコンを買って即作ればいいんだって、多様性が増してめちゃめちゃうれしかったんですよ。

粗品 そんなふうに思っていただいていたなんてうれしいです。

syudou 粗品さんはサウンドはDTM的なんですけど、音楽的にはアニソンの影響を感じますね。個人的にはUNISON SQUARE GARDENの田淵(智也)さんの曲展開とか、あとは田中秀和(MONACA)さんの“イキスギコード”じゃないですけど、ああいうモニュメントが入っているのを耳にすると、和声の捉え方がアニソン的だなあと思っていました。

粗品 確かにアニソンも好きです。

粗品

syudou でもちゃんと今っぽいというか。単に昔ボカロが好きだったというだけなら、こうはならないと思います。ちゃんと初期が好きなうえで2010年以降のアニソンを汲んでいるからこそできた作品だなと思います。

粗品 syudouさんはボカロ以外で好きなミュージシャンはいるんですか?

syudou いっぱいいますけど、小学生の頃は姉の影響でBUMP OF CHICKENとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとかバンドを聴いていました。中学に入ってからバンドを掘り進めながらボーカロイドを見付けて。高校生の頃にはアイドル、大学生になってからはヒップホップとか、いろいろ吸収しながら今に至るという感じですね。粗品さんはやっぱりクラシックの経験があるから、クラシックやアニソン、ボカロがお好きなんですか?

粗品 僕も意外とバンド好きなんですよ。

syudou そうなんですか!

粗品 はい。THE BLUE HEARTSとか、THE HIGH-LOWSとか、Hi-STANDARDとか。学生時代はアニソンやボカロと並行してそっちの影響も受けていました。

syudou 粗品さんの曲を聴かせていただくと、音の埋め方がすごくバンド的だなと思ったんです。ここのシンセを伸ばしているのは、たぶんギターの代わりなんだろうなとか。

粗品 よくおわかりで!(笑)