粗品×syudou|第7世代の2人が語るボカロ愛

初音ミクには言えなかった「ここをこういうふうに歌ってください」

──粗品さんの新曲についてもお聞きしたいと思います。syudouさんも新曲の音源を聴いて驚かれたと思いますが、ボカロ曲じゃなかったという。どういう経緯でそうなったんですか?

syudou 本当に驚きましたよ! しかも歌っているのが声優の竹達彩奈さん、ドラムが石若駿さん、ギターがReiさんって、また恐ろしい面子を集めたなって(笑)。

粗品 そうなんですよ(笑)。まず竹達さんに関しては去年イベントでご一緒させてもらいまして。ものすごくいい人で、めっちゃ仕事に熱い方やったんです。イベント当日に竹達さんのライブもあったので後ろで聴かせてもらったんですけど、ひどく感動しまして。いつかこの人に僕が作った曲を歌ってもらえたら死んでもええなくらい思っていたんですね。それでせっかくレーベルを立ち上げて環境がここまで整っているので、周りのプロの力を借りて1回フルパワーを経験してみたいと考えたんです。正直エグい面子です。

syudou しかも石若さんとReiさんはアニソンとかボカロと全然違うところから連れて来ていて、面白いことをするなあと。

粗品

粗品 バンドサウンドのライブ感に憧れてオファーさせてもらったんですけど、ホンマにとんでもない面子ですよね。あと、プロの方のミックスとかマスタリングの現場に立ち合って「ここをこうしてください」と言えることがもう本当に幸せで……! 僕の夢が詰まった曲にさせてもらいました。

syudou そうは言っても、ほかの楽器の音は粗品さんが組んでらっしゃるじゃないですか。そこがすごいですよね。歌詞とか指示じゃなくて、実際に粗品さんの音が入っていることで聞こえ方が変わってくるというか。

粗品 DTMをチバニャンさんに教えてもらったんですよ。ソフトの導入とかもしてもらって。たくさんある音を1つひとつ聴いて、ギターとドラムの音以外はポチポチやりました。チバニャンさんのおかげです。いやあ、やっぱり音楽ってめちゃめちゃ面白いですね。

syudou 今回温かみのある声の竹達さんを起用して歌を成立させたことで、粗品さんはボカロPでもあり、音楽家なんだなと思いました。知っている声で粗品さんの曲が聴けるのは新しい楽しさでしたね。

粗品 「ここをこういうふうに歌ってください」って、初音ミクには言えなかったことを言わせてもらいました。

syudou 声優さんのレコーディングって、やっぱりすごいですか?

粗品 すごかったですね。歌に演技を乗せるってできるもんなんやなあって。僕が「ここは怒りの感情でお願いします」と言ったら、「どんな怒りですか?」と聞かれて、そこでまた考えたり。「ミュージックビデオではこんな表情をしています」と見せたら「じゃあ2パターン録らせてください」と返ってきて。

syudou すごいですね。こちらの要望にちゃんと演技で返答が来るという。

粗品 声優の中でも竹達さんは特にキャラクター愛がある方で、この世に生を受けたキャラクターに大切に向き合ってくださったので、いい楽曲になったと思います。

syudou サビ終わりに掛け声とかも入っていて。あれはボーカロイドじゃない、人間だからできる面白いアプローチだと思いました。かわいいですもんね。

粗品 「ズキューン!」というセリフを言っていただいたんですけど、めっちゃかわいくて。一応僕がよく言うギャグの「え↑ぐぅ↓」も言ってもらったんですけど、これもかわいかったですね。曲には使えへんなと思ってやめましたけど。

夢はコンビで紅白出場

syudou 気が早いかもしれないですけど、今後の展望は考えているんですか? ボーカルはずっと竹達さんで行くとか。

粗品 ボーカロイドはやめないですけど、しばらくは声にフォーカスを当てて曲を作っていきたいと思っています。僕が「この人に歌ってほしい」と思う歌声の人が山ほどいるので、そういう方に歌っていただけたら夢に近付くというか。自己満足なんですけど、1曲ごとに夢を叶えさせてもらいたいです。

syudou 人によって変わりますもんね。

粗品 syudouさんは去年けっこういろんな人に楽曲提供されていましたけど、それはご自身の考え方に変化があったんですか?

syudou めちゃめちゃありましたね。会社を辞めて、これから音楽をやる人という立場になることを考えたときに、やっぱり人の歌声で曲を成立させるノウハウをもっと知らなければいけないなと。それに同期のAyaseがYOASOBIとして歌でヒットしたことも大きいですね。もちろんボーカロイドは大好きですけど、そうじゃない曲でもヒットを飛ばせるという自信とか技術が欲しくて、たくさんコラボしました。

──粗品さんはご自身で歌うという試みは考えていないんですか?

粗品 ゆくゆくはやりたいと思っています。

syudou 替え歌ではご自身で歌われていますもんね。

粗品 あれはもうめちゃくちゃなので……(笑)。でも今後の話で言うと、せいやと2人で歌いたいと思っています。コンビで「紅白歌合戦」に出たいです! とんねるずさんとかダウンタウンさんとか、面白すぎるレジェンドの方も歌で一世風靡してるじゃないですか。

syudou 確かに。

──syudouさんの今後の夢はなんですか?

syudou 僕は「うっせぇわ」を超えたいですね。でも超えるために変に自分を変えるようなことはしたくなくて。「うっせぇわ」はAdoさんのおかげで自分が思っていることを1つも変えずに世に出せたので、それを超える作品も自分に一切嘘を付くことなく、いいと思ったもので勝負したいです。自分で作った敵を自分で倒していくって、バトルマンガみたいで面白いので。粗品さんは紅白のほかに目標はあるんですか?

粗品 誰も聴いたことがない音楽を作るのって、今は難しいと思うんですね。やっぱり何かに似るし、誰かがやっているし。だから僕は見たことがない音楽をやりたいと思っています。「こんなの見たことない!」っていう面白味のある音楽を生み出せる、面白味のある音楽家を目指したいです。

粗品