音楽ナタリー Power Push - Slow LIVE'16 in 池上本門寺

トータス松本 × 田島貴男

同い年だから語れる2人のソウル

地方出身アーティストは2回勝負しなくちゃいけない

──夏以降のお二人の活動について伺わせてください。トータスさんは、ウルフルズとして8月27日に大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場で「クリアアサヒPresents OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る!2016ヤッサ! 20年目のバンザイ~やっててよかった~」を開催します。

トータス 「ヤッサ!」は毎年夏の終わりに大阪でやってるイベントで。今年は「バンザイ」のリリースから20周年ということで、ウルフルズの名前が全国区に広がって20年経った今、改めて僕らを生んだ大阪っていう街に感謝の気持ちを込めて開催したいなと思ってます。

田島 大阪の人は地元に戻って関西弁でそういうことができるからいいよね。

トータス だけど大阪生まれやと、2回勝負せなアカンところもあるよ。

田島 ああ、1回大阪を出て東京へ行って?

トータス松本

トータス そう。いきなり「東京へ行こう!」ではなくて、大阪で1回試して「行けるかな!」と思ってから東京に行くからね、みんな。タイプは違うけど芸人さんもそう。今は回りくどいから一気に東京に行っちゃう人も多いかもしれないけど、昔の芸人はやっぱり大阪で1回売れないと「東京へ行こう」ってならへんのよ。

──大阪でブレイクしても、東京に行くともう1回無名になる。

トータス そう。だからウルフルズも、FANDANGO(大阪・十三のライブバー)がいっぱいになって調子に乗ってるのに、東京に行ったら「シーン……」みたいなところからもう一度始めるんです。

田島 なるほどね。

トータス ある意味その段差は必要やったと思うし、その間に大阪に支えてもらったところもある。

──ちなみに「バンザイ」の歌い方は以前と変わりましたか?

トータス 意識的に変えないようにしてます。あとから音源を聴いてみると、間合いの取り方とか変わってるけどね。ただ、お客さんには「いつも聴いていた『バンザイ』」を聴かせてあげたいと思って歌ってます。やっぱりそのほうがお客さんは喜ぶかなって思うから。

田島 俺もメロディを崩して歌うことがあったけど、今はもうしなくなった。「接吻」とか音源と変えないように歌ってる。

トータス 同じように歌うほうが、自分も飽きないよね。

田島 うん、楽しい。で、いまだに難しいんだ、「接吻」を歌うのが。あれをどう歌うかって今でも考える。 

トータス 「バンザイ」もそうだよ。今でも難しいなって思う。

──一方田島さんは、10月から「ひとりソウルツアー 2016」が始まります。

田島 「ひとりソウル」は毎年のライフワークみたいになってきて。最近やっと面白くなってきましたね。

トータス えっ、それまでは苦痛やったの?

田島 バンドがいるときはライブ中も少しは休めるじゃない。でもこれは「ひとりソウル」って銘打ってるから、お客さんに踊ってもらうために2時間全部1人でやらなきゃいけない、一切休めないステージでさ。毎年やってるから内容もちょっとずつ変えていかなきゃいけないし。もう大変! でも最近ね、面白くなってきて(笑)。

トータス へえー、すごいなあ。

田島 大変だと思う時期を乗り切って「これはこれで、こういうことができるな」とかいろいろアイデアが出てきてる。今はけっこう楽しいですね。

「Slow Live」は地元のお祭りに似たアットホームさが魅力

──そしてお二人は、9月2日に東京・池上本門寺で開催される「Slow LIVE'16 in 池上本門寺」で共演されます。

トータス 田島くんは本門寺でのライブは何回目? 

田島 もう6回くらいやってるかな。

トータス 会場の雰囲気ってどんな感じ?

田島 毎年めちゃくちゃ盛り上がるよ。屋台が出てたりして下町のお祭り感があるし、すごいアットホームで「東京にこういう温かさってあるんだ!」っていう感じ。

トータス そうなんや。それ、縁日みたいなところでやるっていうこと?

田島 そうそう、縁日感ある!

──一応オフィシャルには“大人のミニフェス”ってことになってるんですけど (笑)。

田島貴男

田島 いやいや、縁日っぽいですね(笑)。客席にはお子さんもいるし、地元に住んでる人たちが毎年楽しみにそこに集まってきてる感じ。独特の雰囲気がある。

トータス へえー! 俺、神社仏閣みたいなところでやったのは7、8年前に平安神宮でやった1回きりなんですよ。そのときは荘厳な雰囲気っていうかね。

田島 全然、荘厳じゃない。

トータス あ、そう?

田島 ほら、地元の人たちの暮らしに必要不可欠なお寺のよさってあるでしょ。町の人たちとの付き合いがいろいろあったりさ。そういう庶民的なよさって言うのかな。

──プロレス界のレジェンド・力道山のお墓もありますね。

トータス なるほどね。実は家の近所の神社で毎年10月に秋祭りやってるんだけどさ。1年間練習して「ここで発表します」みたいな。境内でおばあちゃんたち5人ぐらいが大正琴を弾いたあとで素人の舞いみたいなのがあったり、順番にやっていくわけ。それ見て「うわ、俺ここで歌いたいわ~!」って思ったの。すっごい和やかで。

田島 はいはい(笑)。本門寺は遠からずですよ。

──ちなみに、お二人は今回のライブで何か一緒にやろうという話にはなっているんですか?

トータス セッションみたいな? もちろんもちろん! 俺ら自身も楽しみで。

田島 まだ具体的に煮詰めて話してないんですけど、一緒にやる曲をこれから打ち合わせします。

「制御不能」と「ガッツだぜ!!」が2人のソウル

──最後に「THE SOUL NIGHT」という公演タイトルになぞらえて、お二人が思う相手の「ソウル」について聞かせてください。まず、トータスさんが思う田島さんの「ソウル」とは?

田島 いいこと言ってよね(笑)。

トータス 田島くんのソウルはもう、「制御不能」やね。だって50歳になってからますます声が出始めているって、これはすごいことですよ!

──確かに、ちょっとキケンな香りもしますしね(笑)。では、田島さんが思うトータスさんの「ソウル」とは?

田島 くくく……(笑)。トータスのソウルは「ガッツだぜ!!」だよね。

トータス 何がやねん(笑)。

田島 「ガッツだぜ!!」そのものみたいな人間じゃないですか、この人。歌うことによってその歌が自分の人生になっちゃったみたいなところがある。

トータス ははは!(笑) それ、偏見。俺、ほかの曲もあるんですけど(苦笑)。

田島 でも今日話して、改めてそう思った。「ガッツだぜ!!」と「バンザイ」の人だな、この人はって。しゃべりの口調も歌とつながってるし。

トータス でもね、「ガッツだぜ!!」ってすごい作為的に作った曲で。一方の「バンザイ」はまったく作為的に作ってない曲なのよ。だから最近は、そのバランスが自分の面白さやなとは思う。

田島 あ、でもカレーはつながってない。カレーには別のトータスがいるよ。

トータス なんでやねん!(笑)

──別のトータスと言うと?

田島 この前トータスにカレーの作り方を教わったんだけど、これがもう繊細で! スパイスの微妙な使い分けとか、細かい作業がすごくて。「何これ、どんな一面を隠し持ってたわけ?」って思ったもん。カレーと「ガッツだぜ!!」はつながってないんだよなあ。 

トータス ははは(笑)。俺、カレーを作るときぐらいの緻密さでレコーディングやってるからね?

田島 うん、それはここ最近でわかった。「ガッツだぜ!!」も「バンザイ」も、トータスなりのいろんな試行錯誤があって行き着いた表現なんだなと。

トータス 俺は、田島くんってもっと緻密な頭脳派やと思ってたんだよね。でも実は、やりたいことをウワーッと本能のままにぶちまけてやってる人なんやってことがわかった。カレーを作ってても、俺は最後の盛り付けまで「うーん」って悩みながらやるけど、田島くんはできあがったら鍋のまま「はい!」って差し出すみたいな感じがある。だからやっぱり、制御不能だよね(笑)。

田島 それ、めちゃ面白い(笑)。でもその通りだと思うね。

左からトータス松本、田島貴男。
Slow LIVE'16 in 池上本門寺
2016年9月2日(金)
東京都池上本門寺 野外特設ステージ
出演者 ORIGINAL LOVE(アコースティックセット) / トータス松本 / and more
2016年9月3日(土)
東京都池上本門寺 野外特設ステージ
出演者 Char / 中納良恵(EGO-WRAPPIN') / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND / ましまろ / GLIM SPANKY(アコースティックセット) / 土岐麻子 / and more
2016年9月4日(日)
東京都池上本門寺 野外特設ステージ
出演者 ハナレグミ / 奇妙礼太郎 / 堀込泰行 / 野宮真貴 / チャラン・ポ・ランタン / NakamuraEmi / and more

田島貴男 ライブ情報
「ひとりソウルツアー 2016」
  • 2016年10月15日(土)石川県 vanvanV4
  • 2016年10月16日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2016年10月22日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2016年10月23日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2016年10月29日(土)北海道 cube garden
  • 2016年10月30日(日)北海道 CASINO DRIVE
  • 2016年11月3日(木・祝)東京都 東京キネマ倶楽部
  • 2016年11月5日(土)京都府 磔磔 
  • 2016年11月6日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2016年11月8日(火)富山県 Soul Power
  • 2016年11月10日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2016年11月12日(土)香川県 DIME
  • 2016年11月13日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2016年11月17日(木)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2016年11月19日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2016年11月20日(日)宮崎県 SR BOX
  • 2016年11月22日(火)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2016年11月23日(水・祝)静岡県 LIVE SPOT WOW!
  • 2016年11月27日(日)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2016年12月3日(土)沖縄県 桜坂セントラル
田島貴男(タジマタカオ)

1985年結成のバンド・THE RED CURTAINを経て、1987年よりORIGINAL LOVEとしての活動を開始。1991年7月にアルバム「LOVE! LOVE! & LOVE!」でメジャーデビューを果たす。同年11月発売の2ndシングル「月の裏で会いましょう」がフジテレビ系ドラマ「BANANACHIPS LOVE」の主題歌に採用され全国的に注目を集めた。その後も「接吻 kiss」「朝日のあたる道」などのシングルでヒットを記録し、1994年6月発売の4thアルバム「風の歌を聴け」はオリコン週間アルバムランキング1位を獲得。以降もコンスタントに作品を発表し、柔軟な音楽性を発揮している。近年はバンドスタイルでのライブのみならず、田島貴男1人での「ひとりソウルツアー」や「弾き語りライブ」も恒例化している。2016年6月には、メジャーデビュー25周年記念シングル「ゴールデンタイム」をリリース。10月に「ひとりソウルツアー2016」をスタートさせる。

トータス松本 ライブ情報
「クリアアサヒPresents OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る!2016ヤッサ! 20年目のバンザイ~やっててよかった~」
2016年8月27日(土)
大阪府 万博記念公園 もみじ川芝生広場
OPEN 13:30 / START 15:30
トータス松本(トータスマツモト)

1966年生まれ、兵庫県出身。トータス松本(Vo)、ウルフルケイスケ(G)、ジョンB(B)、サンコンJr.(Dr)からなる4人組ロックバンド・ウルフルズのボーカリストとして1992年5月にシングル「やぶれかぶれ」でメジャーデビュー。1995年発売のシングル「ガッツだぜ!!」が注目を集め、翌1996年にリリースした3rdアルバム「バンザイ」が100万枚を超える大ヒットを記録する。その後も「明日があるさ」「ええねん」など数多くのヒット曲を発表するが、2009年8月のライブを最後に活動休止。2014年2月に約4年半の沈黙を破り再始動を果たす。2015年9月に13thアルバム「ボンツビワイワイ」をリリース。2016年8月27日、大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場で「クリアアサヒpresents OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る!2016ヤッサ! 20年目のバンザイ~やっててよかった~」を開催する。