音楽ナタリー Power Push - siraph
アニメ「Bloodivores」が拡げたバンドの音と世界
元School Food Punishmentの蓮尾理之(Key)と山崎英明(B)、ハイスイノナサの照井順政(G)、MOP of HEADやAlaska Jamで活動する山下賢(Dr)、そしてソロアーティストのAnnabel(Vo)によって結成されたバンド、siraphが1stシングル「quiet squall」をリリースする。
今年5月に発表されたデビューミニアルバム「siraph」では、ポストロックやエレクトロニカをベースに緻密かつ多彩な楽曲群を提示してみせた彼ら。しかし今回のシングルには、テレビアニメ「Bloodivores」のエンディングテーマに採用されたジャジーでアブストラクトなスローチューン「quiet squall」をはじめ、“siraphサウンド”をさらに拡張しうる3曲が収録されている。音楽ナタリーでは、現在進行形で変化を続ける彼らの姿に迫った。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 塚原孝顕
もっとバンドセットのライブを続けたくて
──siraphは今回が音楽ナタリー初登場ということで、バンド結成のいきさつからお聞きしてよろしいですか?
Annabel(Vo) 2014年に私がソロ名義で「TALK」というアルバムを出したとき、ギターの照井さんと鍵盤の蓮尾さんにそれぞれ曲を提供してもらったんです。その流れで、レコ発ワンマンで照井さんと蓮尾さん、そしてベースの山崎さんにサポートしてもらったのがそもそものきっかけですね。この日のライブがすごく楽しくて、もっとバンドセットのライブを続けたいなと。で、レコ発のドラムは元the cabsの中村一太くんだったんですけど、次のライブから山下くんを迎えて「Annabelバンド」として活動しているうちに、より彼らのプレイヤーとしての個性を生かした曲をやりたくなって、2016年にsiraphを結成しました。
──Annabelさんとサポートバンドという関係ではなく、siraphという1つのバンドとして活動していこうと。蓮尾さんと山崎さんはSchool Food Punishmentのメンバーとして活動してらっしゃいましたが、Annabelバンドに参加する以前からほかのメンバーの方との接点はあったんですか?
蓮尾理之(Key) 2007年に、School Food Punishmentがインディーズで1stミニアルバムを出したときのレコ発で、照井くんのハイスイノナサと対バンしてるんですよ。そこで彼とは仲良くなって。
照井順政(G) そう。ただ当時は、まだ山崎さんがSchool Food Punishmentに加入する前でしたよね。
山崎英明(B) だから僕と照井くんはAnnabelバンドが「初めまして」になるんだよね。山下くんもそうだよね。
山下賢(Dr) そうですね。僕も7~8年前に、当時自分がやってたバンドでハイスイノナサともSchool Food Punishmentとも対バンしたことがあったんですけど、照井さんが言ったようにそのときのベースは山崎さんではなかったので。
siraphサウンドが形になってきた
──今年5月に1stミニアルバム「siraph」をリリースされた際、他媒体のインタビューで、照井さんはこのミニアルバムには「siraphとしてやってみたいことをとりあえずやってみた」的な初期衝動感があるとおっしゃっていました。それを踏まえて、今回のニューシングルはどのような位置付けになりますか?
照井 当然、みんなが出す音やプレイスタイルがわかってきて、そのうえで「こういうことをやったらいいんじゃないか」っていうのがより明確に見えているので、ある意味持ち寄りみたいな感じで作ったミニアルバムよりも、siraphサウンドというものが形になっているのかなと。あと、やっぱりアニメのテーマソングでもあるシングルなので、そういう意味では特殊な部分もあると思うんですけど。
──おっしゃる通り、表題曲「quiet squall」はアニメ「Bloodivores」のエンディグテーマに採用されています。が、この曲は蓮尾さんの作曲ですが、いわゆるアニソンらしい作りにはなっていないですよね。しかも、これまでのsiraphの曲と比べると音の隙間も多く、アブストラクな色合いが強い。
Annabel 実はタイアップといっても、そこまでアニメに寄せなくてもいいとは最初から言われてたんです。「エンディグテーマなのでバラードのような静かな曲で、ジャズ要素がほしい」「あと海外展開を視野に入れてるアニメだから歌詞は英語で」みたいなざっくりしたオーダーがいくつかあったくらいで。
蓮尾 テレビで流れる89秒間のうちにその条件を満たせていれば、あとは好きにしてよかったというか、自由な感じではやれました。
──確かに、テレビで流れない2番以降は音の輪郭もはっきりしてきて、siraphらしい凝った展開も見られますね。
蓮尾 そこはわりと意識的に、1番のムードに沿ったうえで「こういう展開ができるな」って、狙ってやったところはありますね。というより、やっぱり展開が欲しくなっちゃうのかな。例えばこの曲がタイアップじゃなかったとしても、たぶんああいう詰め込み方をしたんだろうなとは思います。
山崎 デモを聴いて「蓮尾くん、カッコいい曲書いてきたな!」と素直に思いましたね。
──カッコいいと同時に非常にテクニカルな曲だと思われますが、演奏面での難しくはなかったですか?
山崎 難しいところは、あんまり……いや、難しかったです(笑)。普段はあんまりしない、不慣れな拍の数え方をしなきゃいけないところとかもあったりして、そこはいっぱい練習しなきゃいけなかったので。
山下 僕は、ジャズとかヒップホップっぽい感じでアプローチしようとして、例えばスネアにシンバルを乗っけてみたりとか……ジャズマンはけっこうやりがちだけど、僕自身は今まであんまりしてこなかったようなことをやってみたんですけど、結果的にうまくハマったかなと。
──山下さんはMOP of HEADという、人力でブレイクビーツのようなビートを刻んでテクノやハウスをやるバンドでも活動してらっしゃいますが、それとsiraphではアプローチが大きく異なりますよね?
山下 そうなんですけど、そこまで悩むほどではないというか……。
照井 変な拍子があるかどうかだけだよね。
一同 (笑)。
山下 そうですね。MOP of HEADは基本的に4分の4拍子なので。siraphの曲にあるような6拍子とか7拍子は今まで叩いてこなかった分、そこは苦戦してます。でも、すごく楽しいです。
次のページ » 2人の音使いに導かれるままに詞を書いている
- 1stシングル「quiet squall」2016年12月21日発売 / 1404円 / NBCユニバーサル・エンターテイメント / GNCA-0448
- 「quiet squall」
- Amazon.co.jp
収録曲
- quiet squall
- dilatant
- leap
- quiet squall(instrumental)
- dilatant(instrumental)
- leap(instrumental)
siraph live information
- 照井順政生誕祭
- 2017年1月19日(木)東京都 WWW
<出演者>
siraph / sora tob sakana / ハイスイノナサ
- 青春の始末 後夜祭 day3
- 2017年1月27日(金)東京都 Zirco Tokyo
<出演者>
siraph / 感傷ベクトル
siraph(シラフ)
ソロシンガーとしても活動するAnnabel、元School Food Punishmentの蓮尾理之(Key)と山崎英明(B)、ハイスイノナサの照井順政(G)、MOP of HEADやAlaska Jamで活動する山下賢(Dr)からなる5人組ロックバンド。楽器隊がAnnabelのソロ活動のサポートを務めたことが縁で2016年に結成し、首都圏を中心にライブ活動を展開する傍ら、同年5月にセルフタイトルのミニアルバムを発表した。そして12月、テレビアニメ「Bloodivores」のエンディングテーマ曲を含むメジャーデビューシングル「quiet squall」をリリースする。