音楽ナタリー Power Push - SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん
夢、苦悩、挫折……そして“ジャキーン”!? 新境地ロックマンガの魅力に迫る
見開きで「なんかカッコよく」
──ラストまでの構想はもう決まっていますか?
町田 それはまだ全然です(笑)。最後の舞台は決まっているんですけど、その道程は今広がっている状況なので。ミニマムな規模感で始まったんですけど、長田さんとのケミストリーでどんどん広がっていって。ここまでの規模になるとは思ってなかったです。
長田 演奏シーンの表現もどんどんグレードアップしていくので、この先もっともっと超えていかないといけないっていうのもありますよね。
生形 こういう表現って、いろんなパターンを考えないといけないから難しそうですよね。
長田 町田さんのネーム、見開きで「なんかカッコよく」って書いてただけのときもあったし(笑)。
町田 でも、もともと長田さんがファンタジー系の作家だったことは大きいですよね。それが今回すごくいい形でマッチしてると思います。
生形 絵にしても話の展開にしてもポップですよね。シリアスになりすぎない。
町田 1話目が公開されたとき、友達に「今回はメジャー感があるぞ!」って言われました(笑)。
長田 今見るとジミヘンの顔が本当ひどいですけどね(笑)。(初登場シーンを開いて)最初これですよ! だいぶ変わったなー……。
生形 もはやサイ・ババじゃないですか(笑)。
長田 毛量とかパーマの当て具合が違う!
町田 描き慣れてないなー!
長田 ジミヘンを描くことのプレッシャーもあって緊張してたのかな。でもキャラクターとして、だんだんなじんできました。
町田 どんな性格にしようかも悩んだし。最近は自然と描けるようになりましたけど、あんまりしゃべらせなかったり、セリフを削ったり試行錯誤してました。
長田 最近は「ジミヘンならこう言うだろうね」っていうのが自然と見えてきましたよね。
生形 「やっぱボブ・ディランはサイコーにクールだな」って言うのとか、グッときますよ。
──レンタルCD店で歳をとったThe Rolling Stonesに反応する場面もありましたね。
町田 もともとはああいうコメディもやりたかったんですよね。カルチャーギャップを表したコメディだったらいっぱいできそうだし。今展開がシリアスになってきたから、なかなか描けないところではあるんですけど。
変な機種選んでたらヤバかったですね
──バンドのボーカル、目黒五月さんにスポットを当てた回ではTHE BLUE HEARTS「TRAIN-TRAIN」の歌詞を大々的に使用するシーンもありましたね。
町田 あのシーンはどう表現するかけっこう悩んだんですよね。
長田 バンドメンバーがそれぞれ違う方法で修行をしていくところなので。
町田 150ページぐらいボツにしたんじゃないかな? それで締め切りがヤバくなってきた頃に長田さんが「TRAIN-TRAIN」を使おうってアイデアを出してくれて。
長田 歌詞と物語の内容がすごくリンクするなと思ったんですよね。それで歌詞を載せつつ……。
町田 歌詞の内容に合わせてストーリーを展開していくっていう形でコマを組んだんです。
──対してキーボード担当の川崎忍さんは黙々と練習している様子が描かれていて。あの数話で各メンバーのキャラクターがはっきり見えてきました。
生形 JUPITER(※Roland製のシンセサイザー)買ってましたね。
町田 あそこ、ギリギリまで名前を出すか迷ってたんですよ。
生形 最近のNordのシンセとかじゃなく、あえて「JUPITER」を選んだのは渋いですよね。
長田 おー! よかった!!(笑)
町田 すっごい悩んだんです!「これで合ってるかな……」って不安だったから。
生形 詳細に書いてあると「あっ知ってるんだ!」ってなりますよ。
長田 変な機種選んでたらヤバかったですね(笑)。
町田 「すごい冷めました」とか言われたらもうね……。
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- 長田悠幸×町田一八「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん(6)」/ 2016年4月25日発売 / 627円 / スクウェア・エニックス
- 長田悠幸×町田一八「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん(6)」
“ジミ”だけどギターが大好きなアラサー高校教師・本田紫織。ある日アフロヘアの“ヘン”なおじさんに取り憑かれ、27歳を終えるまでに伝説を作らないと死んでしまう契約を交わすことに。学生たちとバンドを結成し活動を進めていくが……。果たして紫織は伝説を作ることができるのか?
- Nothing's Carved In Stone ニューシングル「In Future」/ 2016年4月6日発売 / 1296円 / Dynamord / GUDY-1002
- 「In Future」
収録曲
- In Future
- Ignorance
- YOUTH City(Live at Okayama CRAZYMAMA KINGDOM 2015.10.23)
- Perfect Sound(Live at Okayama CRAZYMAMA KINGDOM 2015.10.23)
長田悠幸×町田一八(オサダユウコウ×マチダカズヤ)
長田が作画、町田が原作を担当。2012年に大喜利をテーマにした「キッドアイラック!」を共作し、「ヤングガンガン」にて約1年間にわたり発表した。現在は「月刊ビッグガンガン」で「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん」を連載している。
Nothing's Carved In Stone (ナッシングズカーブドインストーン)
2008年に生形真一(G)が在籍するELLEGARDENの活動休止を機に、日向秀和(B)、大喜多崇規(Dr)、村松拓(Vo, G)と結成。2009年2月に初ライブを行い、5月に1stフルアルバム「PARALLEL LIVES」をリリースした。同年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」などの大型ロックフェスに出演。毎年オリジナルアルバムを1枚リリースするなどコンスタントに作品を発表し、2015年8月に初のライブアルバム「円環-ENCORE-」、同年9月に7作目となるアルバム「MAZE」をリリースする。2016年4月にはニューシングル「In Future」を発売した。