ナタリー PowerPush - 島谷ひとみ
野崎良太(Jazztronik)プロデュース 童謡カバーアルバム「Sign Music」
両親や地元の人はどんな反応するのかな
──アルバムタイトルの「Sign Music」とは、「聴くことで昔の記憶がよみがえる音楽」だそうですね。島谷さんにとっての“Sign Music”は、どんな曲ですか?
やっぱり、私の故郷の広島県音戸町に伝わる「音戸の舟唄」ですね。音戸以外の町ではほとんど知られてない曲だけど、地元では昔から歌われているし、故郷を思う大切な歌だから。
──どんな内容の歌なんですか?
音戸では漁をしながら歌うので、景気付けの歌なんでしょうね。地元の人たちは酔っぱらうとすぐこれを歌うんですけど、泣きながら聴く人がいるくらい熱い曲なんですよ。
──なるほど。でも野崎さんはもちろんこの曲を知らなかったわけですよね。アレンジはどのように?
原曲は民謡だから、アカペラに尺八と三味線の音が少し乗ってる程度なんです。カバーの作り方はかなり迷ったんですが、この曲に限っては私が歌ったものを野崎さんに聴いてもらって、それに合わせて音を乗せてもらいました。両親や地元の人はどんな反応するのかなってすごく楽しみですね。早く聴いてほしいです。
──僕はこのアルバムを聴いて、親にCDを渡してみようかなって思ったんです。初めてですよ、自分から親に薦めてみようなんて思ったの。
あ、それはうれしいですね。多分私たちの両親の世代って、知っている曲がおしゃれにアレンジされているとイケてる気持ちになると思うんですよ(笑)。その曲をまた新鮮に楽しめるし、若い子たちの文化に溶け込めんだような気持ちになれる、世代を超えて会話ができるっていうのかな。このCDもたくさんの年代の方に聴いてほしいから、親やお子さんにオススメしてくれるのはすごくありがたいです。
その時々の感情の鮮度を生かして歌っていきたい
──島谷さんは、この「Sign Music」を誰に届けたいですか?
子供たちに童謡を歌ってほしいと思ったのがきっかけだったので、まずは小さなお子さんを持つ親御さんですね。でも今までで一番オールジャンルな作品ができたという意識もあって、本当に、全ての人に聴いてほしいです。特に、子供が産まれるときとか家族と離れるときとか、変化のタイミングで童謡は力を発揮すると思うので、そういう人に届くといいですね。
──では最後に、島谷さんが今後どんなシンガーになりたいか訊かせてください。
その時々の感情の鮮度を生かして歌っていきたいです。時間とともに年齢や経験を重ねるのは当たり前だけど、幸運にも私はそれを音楽で表現できる生活をさせていただいているから。デビューした20代の頃は背中を押されるように走り続けていて、ずっと何かに追われていたんです。でも今は、もう同じことを続けている段階ではない。女の人って30代で仕事もプライベートも大きく変わると思うし。私の思いを表に出して、意味を持って歌を届けたいですね。
島谷ひとみ(しまたにひとみ)
1980年生まれ、広島県出身の女性シンガー。1999年にシングル「大阪の女」で歌手デビュー。2001年にリリースしたシングル「papillon」や、2002年に発表したシングル「亜麻色の髪の乙女」などのヒットで幅広い支持を獲得する。2009年にはデビュー10周年を迎え、7月にベストアルバム「BEST & COVERS」をリリース。さらに故郷である広島・嚴島神社にてデビュー10周年を記念した世界遺産ライブを敢行した。また、2009年公開の映画「パラレル」の主演を務め、2011年にはロックミュージカル「ROCK OF AGES」のヒロイン役に抜擢されるなど、歌手活動のみならず舞台やミュージカルにも活躍の場を広げている。2012年2月、野崎良太(Jazztronik)と全面的にタッグを組んで、童謡カバーアルバム「Sign Music」を発表した。